第13話 自由をください
国王の執務室に併設された応接間に、この面子が揃うのは約10年ぶりになる。もっとも、ほぼ毎日登城しているディアナにとって、ミレーネ王妃以外は見飽きた感もあるのだが。
「ディアナよ、何やらステータスがとんでもない事になってるらしいな」
国王の開口一番がコレである。目を泳がせるディアナだが、当然スルーしてくれるハズもなく…
「ステータスを開示せよ!」
【名前】ディアナ・グラディウス
【種族】人間
【年齢】16歳
【性別】女性
【職業】魔法剣士Lv.80 ★☆*
【称号】勇者(仮)王太子妃候補 転生者
【体力】6560
【魔力】1743000
【攻撃力】78 /100
【防御力】82/100
【体術】Lv.52/100
【剣術】Lv.79/100
【魔術】Lv.90/100
【魔法】炎Lv.100 水Lv.98 氷Lv.99 雷Lv.83 風Lv.99
緑Lv.99 土Lv.100 闇Lv.72 聖Lv.100
時Lv.89 空間Lv.100 支援Lv.100
防御Lv.79 ✳+?✕
【スキル】鑑定 収納 錬金術 映像 複写
△◎▼●
一同目を見張り言葉もなく、しばらく沈黙が続いた。
「お前、本当に人間なのか?」
「人間ですよ!ほら、種族のとこに…」
「見えておる、見えておるんだが…何と言ってよいのか…」
「10年の間に、また凄い事になってますわねぇ」
ミレーネ王妃も、呆然としながらステータスボードを見ていた。
この十年の間、ディアナは毎日登城し『初代国王の書』を翻訳しつつ、行政に関して解りやすいようにフローチャートや図解を加えて書き記した。また、国王や執政官達を集めて説明会を開き、議論を行う会議にも出席した。
その結果、国王の下に国会が出来、官公庁が作り上げられた。領地を持つ貴族の本拠地をそれぞれの領都と定め、役所を置いた。役所は、官公庁を小規模にした地域密着型サービスのもので、徴税や土地の整備、住民の戸籍管理や学校運営なども行う。また、交通の要所に役所の支部を置くことで、仕事が一極集中しないようにした。現在は、この役所に冒険者ギルドと商業ギルドを組み込む為の調整に入っている。
ディアナがやっていたのはそれだけではない。王族に入る為の教育もほぼ毎日行われた。国家の歴史や、マナー、ダンスは勿論のこと、現存する各貴族の家ごとの歴史・家系図などありとあらゆる事を覚えさせられた。せめてもの救いは、「ディアナにだけ負担をかけたくない」と言って、ゼノンが参加してくれた事だろうか。
「学園に入学して約1年で、ここまでレベルアップ出来るものなのか?」
「いえ、それは…」
国王の質問に口ごもるディアナ。そこにグラディウス侯爵が助け舟を出した。
「10年前初めて娘のステータスを見て、このまま埋もらせてはもったいないと思い、冒険者を家庭教師として雇いました。」
本当は、ディアナがねだったのだ。最初、侯爵は反対した。「王太子妃になるのだから必要ない」と突っぱねた。だが、ディアナは全く諦める様子がなく、侯爵の前で毎日土下座で頼み込んだ。「どうせ、王都から出られないのだ。それ位の自由があってもいいじゃないか」と食い下がった。1か月程そのやりとりがあった末、侯爵が折れて家庭教師を雇うことになった。
以来10年間、ディアナは一度も休む事なく、国王の執務の手伝いと王族教育と訓練を続けてきたのである。
「10年間ほぼ毎日か…勇者(仮)という称号がついたのも、そのせいか?」
「いえ、それは私が婚約破棄を申し入れたせいで、周囲から『勇者だ』と、揶揄されまして」
「婚約破棄がお前の望むものなのか?」
ディアナは首を横に振った。
「それは、どうでもいい」
「では、何を?」
「自由を…しばらくの間だけでもいい、自由をください」




