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第12話 養女にしてください

 大公及び公爵とは、現王に連なる王族で構成される爵位で、一代限りの爵位である。大公亡き後は、在位時の功績などを考慮した上で、侯爵家か伯爵家のどちらかに降格する。降格と言っても、在位時に領地を入手していたり、商いを始めたり、投資によって得られる配当で生活は守られているようだ。だが、過去にはその地位にあることに胡座をかき、何の手も打たずに堕ちた者もいたと言う。



 その時オクタヴィア大公は、城内の執務室にいた。王国内で徴収された税は、立てられた予算に沿って各機関に分配される。そして、そのお金が適切に使われているか監査する財務監査が大公の仕事だ。


 「大公、陛下がお呼びです」


宰相クレイトスが直に顔を出したことから、一大事だと感じた。


 「何があった?」

 「大公様には悪いお話では無いと存じます。まず、陛下からお話をお聞き下さい。」


 通された国王の執務室には、ミレーネ王妃、グラディウス侯爵、ディアナがいた。国王は、机で何がしかの書類を作成していた。


 「陛下、お呼びでしょうか?」

 「あぁ、ちょっと待ってくれ。クレイトス、これでいいか?」


 作成中の書類を宰相に渡し、不備がないかチェックしてもらう。


 「あとは、連名でサインをもらうだけ…大丈夫です。」


 うん、と頷くと国王は大公に事の経緯を説明した。


 「私は、ディアナの提案に乗ろうと思う。ただし、半年間の幽閉は犯した罪に対する罰として務めてもらうが…まぁ、ディアナのおかげで、地下でも快適な生活が出来ているようだしな…?」


 ちくりと嫌味を言ってきたが、ステータスがバレてしまっている今では、痛くも痒くもないディアナは「てへっ?」と笑ってごまかした。


 宰相から養子縁組申請書を受け取り、地下牢へと向かう三人。途中、何度もオクタヴィア大公がディアナに「ありがとう」と礼を言った。「ベアトリーチェを救ってくれて、ありがとう」と…。


 おそらく、ベアトリーチェは公爵家に行くことを選ぶだろう。それでいいのだ、それが正解なのだとグラディウス侯爵は思う。少しディアナの考えを理解できたような気がして嬉しかった。だが、当のディアナは自由を失った。今後、この娘はどう成長していくのだろう?と思うと心配になる。何しろ、国王を殴ろうとするような娘なのだから。


 地下牢に辿り着くやいなや、ディアナの転移魔法で鉄格子の内側に入った三人。「うわっ」と驚きの声をあげるも、ディアナはニコニコと笑っているだけである。子供用に作られたテーブルと椅子は、大人にはやや小さい。大公が座り、侯爵は立ったままの形になったが、それもいたしかたがない。


 「ベアトリーチェ、グラディウス侯爵家かオクタヴィア公爵家のどちらかの養女にならないか?」


 国王も王妃も「廃嫡せねばならない事態」に心を痛めていること、それにより話が離婚話に発展してしまった事なども説明する。


 「『廃嫡』ではなく『養子』に出すとか、そんな姑息なワザを思いついたのは、ディアナね?」

 「うん、正解。てか、姑息言うな!」

 「でも、それと引き換えにディアナの自由が奪われるなんて、私は嫌だわ」


 ベアトリーチェは眉間にシワを寄せた。…風に見えた。ぷっくりした子供の眉間にシワなんて寄るはずもない。


 「いや、それは別件」

 「そうなの?」

 「陛下は、私に執務の手伝いをさせたいらしい」

 「!?」


 侯爵は一部始終を大公とベアトリーチェに話して聞かせた。

すると、ベアトリーチェが立ち上がり拳を握りしめ叫んだ。


 「あの狸親父!やることが回りくどい!」


 侯爵は、我慢できずに吹き出した。「そうか、この二人は似た者同士なのか」すぐに仲良くなった事に合点がいった。


 「叔父様、私をオクタヴィア家の養女にしてください」

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