第103話 ランクアップ
10時間以上眠った翌朝の目覚めは、爽やかだった。元から膨大だった魔力を使い切ったおかげで魔力量も増え、250万を突破していた。
「ディアナ、起きてるか?」
侯爵がドアの向こうから声をかけてきた。
「今、起きました」
「支度を済ませたら、書斎まで来なさい」
(あ〜また説教されるのか…)
気が重いが、ディアナは身支度を整え書斎に急ぐ。
「空き地にあるアレは何だ?」
「あれはバスです。馬車の代替え品で、馬車よりもっと沢山の人や物を運ぶ事が出来ます」
ディアナは映像を呼び出し、大型のバスターミナルから人や物を運び走る姿を見せた。
「これを使えば、クリエの街からバーゼルの街まで乗り合い馬車で3日かかるところを、2〜3時間で移動出来ます」
「そんなに早いのか!?」
「はい。ただし、燃料を必要とします」
「燃料?」
「ガソリン。黒い燃える水の事です」
「あの、メディナで見つかった黒い水の事か?その事も聞きたかったのだ」
映像を切り替えながら、原油についての説明をした。原油は加熱処理することで、石油やガソリンまたは軽油などに精製され、さまざまな物を動かす動力源となる。その過程でプラスチック製品など手軽で便利な商品も生まれる。
「メディナからの輸入が必要になるな?」
「そうですね。でも、私はガソリンを使わずに魔石を使おうと考えてます」
「魔石を?」
「ええ。あの黒い水は化石燃料と呼ばれ、深い地層に堆積した動植物の死体が液状化したもの。吸い上げ続ければ、いつかは枯渇します。おまけに、空気を汚すのです」
映像に公害問題や大気汚染の場面を出す。
「幸いにして、この世界には魔法があり、エネルギー源となる魔石がある。それを活用して、安心安全を第一にと考えてます」
その為には、魔石で動かせるように改良しなければならない事、出来たら試運転をしてどの位の魔石を必要とするのかを調査したい事。上手く稼働出来るようだったら、グラディウス領内で試験的に稼働させたいと、ディアナは述べた。
「御者はどうするのだ?」
「中野ともうすぐやってくる山口と云う転移者がいます。彼らは向こうの世界で、バスの運転手をしていたのです」
グラディウス領内の乗り合い馬車は、グラディウス商会で運営されている。その乗り合い馬車の御者達に中野と山口から運転技術を学ばせ、運転手を増やせばグラディウス領内を網羅する事が可能だと説明した。
「わかった。時間はかかりそうだが、試す価値はありそうだ。クリエに広い土地を用意するから、そこでやってもらえるか?」
「ありがとうございます!」
ディアナは商会の空き地に置いたままのバスを回収し、屋敷に戻るとベアトリーチェが既に待機していた。
「GOGO!ローザリア!」
「はは!ヤル気満々だね?」
「そりゃ、もう悪漢を倒すヒーローの気分よ!」
「や、事を荒立てずに穏便にって言ったよね?」
「え?そうだったかしら?」
ディアナはベアトリーチェの両のほっぺたをつねる。
「あ、そうそう。ディアナにギルドから伝言を預かってたんだ。カウンターに来て欲しいって」
「何だろう?」
「ランクアップって言ってたよ」
二人で冒険者ギルドに行くと、すぐにギルマスの部屋に通された。
「お二人共、Cランクになりました」
「は?」
ベアトリーチェは、メディナへの護衛に加え、4つのダンジョンを発見した事でランクアップ。
ディアナは、50メートル超えのグリーンアナコンダの討伐に加え、盗賊団の壊滅でランクアップとなったらしい。
Cランクになるには、A級冒険者との戦闘試験があったはずなのだが…
「昇格試験は?」
「免除いたします」
「なんで?受けるよ昇格試験」
「貴女方に大事なA級冒険者をボロボロにされたく無いんですよ!わかって下さい!!」




