花畑のウエディング
ところがどっこい。あたし達の期待とは裏腹に、交際わずか半年でユッコは彼ピッピ氏と婚約、そのまま入籍したのだ! これぞトントン拍子!!
ユッコと彼ピッピ……いや、旦那ッピの結婚式にあたし達は呼ばれてて、今日がその日。
あたしはドレスを入念に選択し、朝から美容院に行って髪を巻いてもらい、サロンに寄って、ネイルも完璧!
願わくば、素敵な男に見初められますように〜!!
ヨシエとカナとサナエと待ち合わせて、タクシーで式場へ向かう。そこは海の見える白いお城みたいな、一日一組限定の式場だった。
「ふうん、割と良いトコじゃない」
「海がキレイだねぇ〜」
「こんなトコあったんだね」
「風が気持ちいい!」
口々に言って、早速受付を済ませ中へ入る。まずは挙式。
館内に併設されたチャペルで、あたし達は大人しく新婦の入場を待った。
オルガンの音色が鳴り響き扉が開く。ユッコとユッコ父が一歩ずつ旦那ッピに向かって進んで来る。ウエディングドレスに身を包んだユッコは、悔しいけれどとても綺麗だった。
バージンロードを歩く彼女は緊張してるみたいだけど、途中あたしと目が合うとニッコリ笑った。彼ピ出来たヨ報告以降頻繁に見せつけられたドヤ顔じゃなくて、何のてらいも無い笑顔で。
はからずも目頭がジンとする。あたしとユッコは十年来の友人だから、先を越された悔しさはあっても、彼女にはやっぱり幸せになって欲しいのだ。
しかしそんな願いも、披露宴会場であっけなく砕け散ることとなる。
挙式が終わって、披露宴会場へ四人で入った。あたし達の席はもちろん四人一緒のテーブル。
「ちょっと! 何よこれ!!」
着席したカナがドスのきいた声を上げる。カナの手にはメッセージカードが強く握りしめられており、全身は怒りでワナワナと震えてさえいた。各席には新婦からのメッセージカードが置かれていたのだ。カナのカードにはこう書かれている。
『お先にゴールインしてゴメリンコ! カナも早く、運命の人見つけなよ! 結婚っていいもんだゾ〜〜♡』
「頭、沸いてる!」
「完全に上から目線じゃない!」
「結婚するのがそんなにえらいワケ?!」
ヨシエ達もキレているみたい。もちろんあたしも!
サナエ、ヨシエのカードには、それぞれ次のようなメッセージが記されていた。
『サナエ、この場所で未来のダンナ様に会えるといいね! 応援してるゾ!!』
『ひと足お先に失礼つかまつる! ヨシエの花嫁姿も、早く見たいなぁ〜♡』
あたしのカードには『リョウコも彼ピ作って結婚しなよ! 子どもを同級生にしたいから! 早くしないと間に合わなくなっちゃうよ!!』って書いてある! ムキーーーー! 余計なお世話じゃい!
「旦那、どこがジャニーズ系なのよ。ねちっこそうな顔! カッテージチーズ系の間違いじゃないの?!」
「てゆーか彼氏が出来たとたん、あの子の脳内には四季の花々が乱れ咲いてたよねぇ」
「何回お色直しするつもりかねー」
「料理がショボい分、衣装に金掛けてんでしょ!」
「向こうの友人席、ブサイクばっかじゃん! イケメンを用意しなさいよ!!」
披露宴の間中、あたし達は散々なことを言いまくった。
当のユッコは高砂からのんきに手を振ってる。全く彼女の脳内の花畑はいつまで満開なのかしら?