ある昼休みの幼馴染と親友
飛んできません。この2人は結末を迷っている2人だったりします。
智哉と梨沙が空き教室で昼休みを過ごしている頃、幼馴染の彩香と親友の輝樹もまた、屋上で2人きりで過ごしていた。
「智哉くん……。今朝から避けられている気がします。」
「智哉のことだから、きっと僕たちに気を遣ってくれてるんだよ。僕たちの邪魔をしないようにさ。」
「そんな……。」
幼馴染×親友カップルにはそれぞれ誤算があった。
まずは彩香。
輝樹と付き合いだしたは良いが、それによって智哉との関わりが少なくなってしまったことを悲しく感じていた。
更に言ってしまえば、智哉のもとに友人の梨沙がやたら近づいていることも気になっていた。
「学級委員だから」と言われてしまえばそれまでなのだが、それにしたって距離が近い。SNSのDMを通じて輝樹と付き合いだしたことを伝えてからは益々それに拍車がかかっているように感じる。
それが正直、面白くなかった。
一方の輝樹にも誤算があった。
会話が思ったよりも弾まないのだ。
はっきり言ってしまえばこの2人、「智哉がいたことで」仲良くなり、「智哉が間にいることで」時間を共有し、「智哉を話題にすることで」智哉がいない間もなんとかやっていたのである。
「ところで〜」「そう言えば」の代わりに、もしくは後ろに「智哉 (くん)が〜」と言ってしまうくらいに。
だが、その事に気づいていない上に恋人という関係になった以上、「智哉の話」をすることは輝樹としては避けたかった。
結果、会話が弾まないことは当然のことであったが、輝樹としては彩香が彼女であるという事実だけでも嬉しいものがあった。
それに、今朝には智哉に恋人繋ぎを見せつけているし、智哉だって一応は祝福してくれた。
今の微妙な空気は時間が解決してくれる。
輝樹はそう思っていた。
「そういえば智哉くんがこの前…」
「彩香…今度からは智哉の話じゃなくて…」
「?」
「いや、なんでもないよ。続けて続けて。」
出来立てホヤホヤのはずのカップルの歯車は最初から狂っていたのかもしれない。
そうでなかったとしても「確実に」狂い始めていた。
飛んできませんでした。ありがとうございました。