3発目
よく考えたらほのぼのってなんだろう
なんだかんだ午前の授業が終わって、昼休み「智哉ー!早く行こーっ!」になった…うおっと「ぎゃっ!」モノローグくらい邪魔しないでほしいのだが。
「委員長ちょっとは落ち着けよ…。」
「委員長ってなんか距離感じるよ!梨沙って呼んで!」
「ほいほい。梨沙、ちょっとは落ち着こうな。」
梨沙は昼休みが来ると同時に、自身の席から俺の席に突っ込むようにやって来たのだが、近くに何故か落ちていた下敷きで滑りずっこけたのだった。
「智哉とお昼食べられると思ったら嬉しくて嬉しくて…えへへへ……。」
なんだこいつかわいいな。
「じゃあ行くか、梨沙、どこの教室か分からないから案内してくれよ。」
「うん!私について来て!」
そういうと梨沙は俺の右手をとって歩き出す。向かった先は…3階の空き教室。
梨沙が俺に空き教室に先に入るように促したので素直に従い中に入る。
「よくここ空いてるって知ってたな…。」
「えへへ。まあ私の情報網を使えばこれくらいはね!」
かちゃん
「ん?かちゃん?」
振り返ると、梨沙が内側の鍵を閉めているところだった。
「おい」
「ん?どうしたの?」
「何故鍵を閉めた」
「これから取り調べするんだから。当たり前でしょ?」
先程の明るい声はどこへやら。どこか冷たい声に聞こえる。
「取り調べってなんだよ……。」
「だって智哉、嘘ついてたじゃん。」
「嘘なんてついてねえよ!」
「いや!ついてた!今もまたついてるし!」
またこの流れか……誤魔化すのにも限界はあるし、梨沙は先程助けてくれた借りもあるし、もう隠す必要も無いか。
「はあ。分かったよ。嘘ついてた。」
「やっぱり彩ちゃんのこと、好きだったんだよね。」
つい先ほどまでとは一転して優しい声で梨沙が言う。
その声の中には少し寂しさも感じられた。
「ねえ、彩ちゃんじゃないと駄目なの?」
「ん?何を言ってるんだ。彩香が好きだったんだから少なくとも先週の金曜までは彩香じゃないと駄目だったかな。」
「じゃあ、今は…?」
どこか不安なような、期待を込めたような眼差しを向けられる。
「うーん。しばらく好きだ嫌いだみたいなのはいいかな。失恋していきなり他の誰かを好きになるみたいなのは出来そうにないし…。」
「そっか…。」
少し落胆を含んだような声。これは「そういうこと」だったのだろうか。
「ふぅ。そっかそっか。ごめんね。変なこと聞いて。お昼食べよっか。」
未だ少し声に寂しさを感じるものの、梨沙はほぼほぼいつも通りに戻っているようだった。
「ねえ。」
「ん、なんだ?」
「唐揚げ食べる?」
「おっ。良いのか?それじゃひとつ…『あーん』えっ?むごご…」
口にそのまま入れられた。
「だからあーんだよ。失恋を慰める美少女のあーんだよ?貴重だよ?今のは大特価だよ?智哉の弁当の卵焼きひとつでいいよ?」
有償なのか。押し売り大特価ってなんだ。
「分かった分かった。ほいよ。」
「私もあーんしてほしい!」
「はいはい。よっと。」
「あーんって言ってくれないと受け取らなむごごご」
「早く食べてくれ」
「……智哉に口に突っ込まれた…」
「なんか言い方不穏だな?」
昼休みはまだまだ終わらない。
唐揚げが飛んできて卵焼きが飛んでいきました。