第八話「四翼の天使」
色々あり投稿が遅れました。今後の投稿は約四日ごとに更新になると思います。急いで仕上げたため、誤字脱字や、内容がおかしいところがあるかと思いますので、コメントの方でぜひお知らせいただけますと幸いです。
「……ディータさん…」
そこには白い肌に軽鎧を身に纏った銀髪で凛々しい美人の顔立ちをしている、四翼の純白の大翼を背中から生やした女性天使が不満げな表情を浮かべてこちらを見ていた。
「あ、、いらしてたんですね!」
明らかに不機嫌さを感じられたので、サディアスは何とか取り繕おうと笑顔を作って話しかける。
「…………」
ディータと呼ばれた天使は無言のまま態度を変えず、不満げな表情でサディアスを見続ける。その様子を見てサディアスは取り敢えず機嫌を直してもらおうと言い訳を考える。何故なら機嫌を直さない限り、彼女が態度を変えないことを知っていたからだ。
「…すいません。久しぶりに皆さんに会えたので天使宮に行くのを後回しにしてました…」
適当な言い訳が思いつかなかったので、素直に謝ることにした。
その言葉を聞いて最初は反応を示さなかったが、10秒ほどして溜息を一つ吐く。そして未だ手に持ち続けていた脇差を帯刀し直し、口を開く。
「…挨拶」
最低限サディアスに聞こえる程度の小さな声量でサディアスに向かって言った。
サディアス以外の周りの民たちの中で彼女の言葉を聞いた者は何故挨拶と言ったのか理解出来なかったが、サディアスにはしっかりと意味が伝わった。しかし何故この言葉を態態し選んだ真意は理解しきれなかった。
サディアスは姿勢を正し、しっかりとディータの目を見つめる。
「…階級第七翼、天使長ディース・サディアス只今帰還いたしました。天使長統括殿」
『シェイラ・スローンズ・ディータ』。現浮国天使長統括にして階級第貳翼と天使長主席、そして『大天使長』の役職を持っている浮国の中でもトップクラスの著名な天使で、人気がある女性天使。そしてサディアスの上司にあたる天使だ。
さっきから出てくる『第七翼』や『第貳翼』とは、浮国内における天使の序列を表しているもので、通称翼番と呼ばれている。何を指しているのかというと、簡単に言ってしまえば『第貳翼』は浮国内の天使の中で二番目に偉いということを指している。この翼番というのは浮国内の全天使に与えられている者ではなく、職業が天使長以上の天使にのみ与えられている。現在の浮国内に存在している翼番は『第壹翼から第七翼』まで。サディアスは翼番の所持者のなかで最下番号だ。
注意だが、あくまで天使に与えられているものであって、浮国全体で見ればサディアスより偉い悪魔や鳥人は存在している。
秘国で礼式があったように、浮国にも礼式自体は存在している。今この場でディータに対して行った礼式は軍隊礼式のようなものだ。ただお辞儀や手を動かしたりせずにきをつけ気をつけの態勢であったことから分かるように、一般礼式も軍隊礼式近しいものも簡単なのしか存在していない。
周りの浮国民たちは突然始まった礼式に戸惑いながらも、この二人の邪魔はしない方がいいと感じ、黙って成り行きを見ている。
ディータは部下の期間報告を聞き不満げな表情を少しだけ緩める。
「…ご苦労様でした。そろそろ完全に日が沈む。天使宮に向かいましょう」
緩めてもやはり不機嫌さは目に見えて理解出来てしまう。隠す気がないのか、隠しているつもりなのか分からないが、言葉の文面は兎も角、発声の仕方で機嫌の悪さを簡単に感じ取れる。
ディータは言うとすぐに四翼の白翼を広げ、飛翔する。
「あ!、ちょっと!…皆さんまた今度話の続きを!」
サディアスは自分も後ろに続いて行かないといけないので、周りの天使悪魔鳥人達に声をかけてすぐさま飛翔する。
ディータは上空で待っていてくれたようで、サディアスが近づいてくるのを確認し、この場所から少し離れた場所に存在している天使の本拠地『天使宮』に向かって進み始める。
かなり速度を出しているので、サディアスは一旦声を掛けるのを諦めて、追いかけることに専念することにする。
サディアスは追いついていくことに専念するが、それでも追いついていくのにギリギリな辺り、サディアスとディータの差が分かる。
「くぅぅぅぅ…」
風がサディアスを切る。痛さに耐えかねて苦悶の声を上げてしまう。
Altera Vitaには感度というものが存在する。あたかもこのゲームの特異性の様に言っているが、FPS(First Person shooter)や他のVRMMOの殆どにも存在している機能だ。とはいってもVRMMOとFPSが指している感度は異なるものだ。
FPSにおいての感度は、視点の移動速度の事であって、感度が高いと視点の移動速度が速くなる。逆に低いと視点の移動速度が遅くなる。
VRMMOにおいては、触覚や痛覚のことを指すことが多い。触覚の場合は、感度が高いと物を触ったりした際に感じる皮膚感覚が感じやすくなる。低くすれば皮膚感覚が感じにくくなる。
痛覚の場合は、もし何者かによって殴られた場合、感度が高いと痛みを感じやすくなる。低くすれば痛みをあまり感じずに済むのだ。
Altera Vitaの感度機能は痛覚のことを指している。触覚に関しては全プレイヤーが固定されていて、一般人が現実世界で物を触ったときに感じる感覚とほぼ同じ感覚に設定されているからだ。あるてらびーたにおいて感度は1から100までの数値で表されていて、二回目だが、100に近づくほど痛みを感じやすい。
最高値である100は、現実で一般人が感じる痛覚と同じに設定されている。だったら100でいいやと思う人がいるかもしれないが、この世界には武器や魔法があり、戦闘があるのだ。敵に腕を切られたりなんかしたら、現実で腕を切られたときに発生する痛覚を感じることになってしまうのだ。そのため多くのプレイヤーは20から50の間にしている。
感度を1にすればいい。痛みを感じない方がいいじゃないかと思われるだろう。実際最低値である1に設定されているプレイヤーはある程度存在してはいる。が、そのプレイヤーのほぼ全ては生産職や、戦闘をほとんどしない非戦闘職だ。
戦闘職に感度を1にする者、いや感度1で出来る者は第六感か、何かしらのスキルを持っていたりしないとほぼ不可能だ。何故ならこのゲームでダメージを受けた時に、痛覚以外で攻撃を受けたことがわからないのだ。正確に言えばこのゲームにおいて無くなると死亡判定になる『生命力』というものがあり、攻撃を受けたりすれば生命力は減少するので攻撃を受けたことを確認出来はする。但し自分の生命力をプレイヤーは確認することが出来ない。そして他人の生命力についてだが、これに関してはスキルがあれば確認することが可能だ。だが態態他人に生命力が減少していると言われる前に、自分で把握することが一番なのだ。
そのため戦闘職は攻撃を食らったのが分かるように最低限の感度を設定しているから、20から50が多いのだ。
ここで補足だが、一定以上の痛みをプレイヤーが感じなければいけない時は、自動的に一定以上の痛みを超えないように調整される。そうでもしなければ痛みのせいでショックを起こしてしまうかもしれないなどの、健康面の問題が存在しているからだ。
閑話休題。サディアスは感度を少し高めの65にしている。この数値はサディアスが色々試行錯誤した中で決めた値だ。65もあればある程度軽減されるとはいえ、痛みを感じることになる。サディアスが「くぅぅぅぅ…」と声を上げたのも身体にかかる風による痛みからだ。
サディアスは痛みと戦いながらも何とかディータに食らいついていった。「ジョシュミ」は決して面積自体は大きいものではない。無我夢中で飛んでいれば天空宮が近づいてくるのも当たり前だった。
妖精宮殿よりは見栄えは劣るかもしれない。そもそも比べること自体が不毛なのだろう。その宮殿は雲のような白いふわふわとしたものに包まれるように、真っ白な大理石のようなものによって作られていた。妖精宮殿のように門や柵は存在しておらず、中に入る入り口に扉もない。ただ番兵は存在している。
ディータは天空宮のすぐそばの地面で待っていてくれた。サディアスはディータを目視したのち、ディータのすぐそばに降りる。
すでに日は落ちていたため、天空宮の外と中に置かれている明かりが美しく見える。
「さっきは本当にすいませんでした」
降りてすぐに頭を下げてもう一度謝る。三秒ほどして顔を上げてディータの顔を見る。するとディータは溜息を一つついて、笑顔を宿した。
「そのようなことはもう忘れたよ。そんな話より、私は一つ過ちを犯してしまったよ」
先程までと違って砕けた口調で話すディータ。これが彼女の素の喋り方だとサディアスは知っている。そのためサディアスは口調が素になってくれたことと、笑顔になってくれたことに喜びながらも、過ちとは何か不思議に思う。
不思議そうな顔を隠さないサディアスを見て、ディータは笑顔をより強める。そしてこう言うのだった。
「お帰りなさい。サディ」
あと三話以内で序章終わるかな…。ちなみに一章のヒントは既に出しています。コメントは返信が必要なものだけ返信させていただく形になります。コメントは全て目を通させてもらいますのでご了承ください。