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白翼の人間 〜変わりゆくこの世界で〜  作者: 風花真葛
第一章 「倫理と信念と創造」
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第十七話「宿探し」


魔法とはあまりにも大きな括り方をされている。原則としてマナを媒体として発現されるものは全て魔法の一種という基準があるのだが、この基準というのがあっても無いようなものなのだ。今のご時世においてマナが何かしら関係しており、行為的又は能動的によって発現されたモノ。若しくは起こる現象のことは魔法という言葉の一括りにされているからだ


結局何が言いたいのかというと、魔法という括りは大雑把なため、魔法の中にも様々なモノが存在しているということだ。例を挙げるとするならば、錬金術、死霊術、精霊術のように一見すると魔法に分類されるか怪しいものも、全部魔法の括りの中にある。


大半の魔法は『サードトス』に通えば何かしらの情報は得ることができ、身につけられる。マイナーな魔法分野でもそうだ。その魔法分野についての学部が存在していなくても、『サードトス』には博識な先生陣や本を駆使すれば新しい知識は手に入る。


『サードトス』では学部に沿って授業が展開されるが、『魔法科』共通で行われる授業がある。それは様々な魔法に共通して必要なことを学ぶ授業だ。その中にはある有名な授業が存在している。


飛行訓練。この授業は名前の通りに空を飛ぶための授業だ。サディアスが離れた場所から学都の中の様子を眺めた際に、箒や絨毯が街中で飛んでいたのを覚えているだろうか。これらの箒や絨毯は魔道具、つまり魔導石が使われているのだ。魔導石の中に込められている魔法は『空中浮遊(フライ)』という魔法で、文字通り対象にした物を空中に浮かせられる魔法だ。


こんな魔法があるならどんな種族でも空を自由に飛べるじゃないかと思うかもしれないが、この魔法には大きな欠点がある。それは対象にした物の操作がとても難しいことと、()()()()()()なことだ。


前者は操作をやってみないと理解が出来ないだろう。車や自転車の操作とは全く違う、別の自分を動かしている感覚を身体に感じるらしい。この感覚はとても気持ちが悪いらしいが、この上に操作が難しいと来た。


後者についてだが、まず『魔力場』についてだ。魔力場というのは簡単に言えば高濃度の魔力が満ちている空間のことを指す言葉だ。魔力は酸素のように空気中を漂っていて、濃い場所薄い場所がある。魔力が濃ければ、魔法を発動する際に必要なマナの量が減少したり、魔法の威力や効果の増加。更には生き物のマナの回復速度が速くなったりと魔法を使う者からしたらいい事ばかりなのだ。薄ければ逆だ。


空中浮遊(フライ)』は魔力場がなければまともに使えないほど、燃費が悪い魔法なのだ。


なら何故箒や絨毯に乗って飛んでいることができているのか。前者の操作については魔道具であることによって解消されている。詳しいことは作っている所が明らかにしていないため分からないが、操作は自転車や車のようにある程度感覚を掴めば自由に飛ぶことが出来る。


随分前に言ったが、魔導石に込められた魔法は少しのマナで発動することができる。後者の燃費の悪さはこれによって解決、されていない。正確にいうとこれだけじゃ足りないのだ。例え魔導石に込めたとしても中々発動できないほどの燃費の悪さ。それが『空中浮遊(フライ)』。


燃費の悪さを解消するもう一つの理由。それは学都の中に入れば誰でも理解されるあることにある。



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学園都市国家エルフェンテインは何回も言っているが、一つの都市しか存在していなく、一つの都市とその周辺の地域のみで構成されている超極小国家である。エルフェンテインのことは学都と略称されて呼ばれているが、学都の一つの都市を学都と呼ぶ場合もあるのだ。これは正式に都市のことを学都と決められている訳ではなく、世論が勝手に定着させたものだ。それ故学都と言われた際に、学園都市国家エルフェンテインを指しているのか、都市のことを指しているのか分かりづらいときがどうしても起こってしまう。本来なら都市に名前がついているのが普通だが、何故か今日日のアンティグルスには都市名が存在していない。


そのため学都に住んでいる住民たちは自分たちの都市を別の名前で呼んでいる。その名も『魔都(まと)』。魔は魔法の魔から取られたものだ。『サードトス』自体は魔法以外の学部もあることから分かる通り魔法専門ではないのだが、街中で見られる風景はどうしても魔法寄りになってしまう。その結果都市は通称である『魔都』と呼ばれるのが一般的になっている現状だ。


サディアスは全身を隠しながら、仮面から見える魔都の風景に圧巻されていた。外から見えていた風景は今サディアスの目の前にあった。制服らしきフードを着た少年少女たちは箒や絨毯に乗って空を飛んでいて、荷物運びのお兄さんが運んでいる荷物は宙を浮いてお兄さんに追尾をしている。急いでいるお姉さんは猫に変身し、建物を登って行き先を目指す。種族も様々で、サディアスが見たこともない種族も多数いた。


「…魔法…凄い」


秘国や浮国の風景も勿論すごいのだが、ジャンルが異なるし比べるものでもない。どの光景にしろ、現実世界では見ることの出来ない光景だ。


まだ真夜中というわけではないので、魔都は活気が落ちていない。忙しなく交わり変わる魔都の様子は、何時間も見ていられるほどサディアスの心を掴んでいた。


ただこれを実行してしまうのはいけない。魔都に来てまだ何もしていないからだ。最優先は宿を取ること。食事などは後からでも済ませられるが、宿をもし取りそびれてしまうものなら、野外で一晩を明かすことになるだろう。


魔都についてあまり知らないサディアスは、宿が何処に集中しているのか分からず、大通りを道なりに進むことにする。


「…あ、あの!宿ってどこにありますか?」


しかし見た感じ宿らしきものは見つけられなかったので、通行人に聞くことにした。選んだ相手は、優男風の若い人間だ。


「宿か。運がいいかもね。知り合いに宿屋がいるんだ。確か宿はまだ空いているって言ってた気がするよ」

「あ、ありがとうございます!あの…不躾ながら宿まで案内してもらえませんか?」

「そんな畏まらなくていいよ。ここからそんな離れていないから、ほら行こう」


どうやら運がいいようだ。釣りならば一分もしないうちに魚が掛かったようなものだ。


お互いに自己紹介をする。彼の名前はハッカと言うそうだ。サディアスは言われたとおりにハッカの後を付いて行く。


「この時期に宿を探しているってことは学都祭に来られたのかい?」

「あ、そんなところです」


学都祭は勿論だが、手紙に書かれいた事件のこともあるため、曖昧な返事をしてしまう。


「この時期は色んな所から人が集まるからね。宿を取るのは中々厳しいはずだよ」


大通りの途中の道を曲がり進んで行く。少年のように街を見渡し観察するサディアスを見て、ハッカは見守る親のように微笑む。


「仮面で素顔は見えないけれど、既に魔都を楽しんでもらえているみたいだね」

「あ…」

「別に隠すことを責めている訳じゃないよ?身体を隠す人はそう珍しくないしね。入国審査通れているんだから疑いもないし」


優しさが身に染みる。ハッカが言ったように街中を見ていると変わった容姿をしている者は見受けられた。自分と同じような境遇なのか気になるが、本人に聞くなんて行動力はサディアスにない。


ハッカの方から話を振ってもらっている現状に、申し訳なさが募ったサディアスは、自分からも何か話題を出してみることにする。


「あの…ハッカさんは何の職をしているのですか?」

「『サードトス』で錬金術の先生をしているよ。あー…、サードトスって分かるかな?学都祭目当てなら流石に知っているか」


素直に驚いた。サードトスが何処にあるのかすら分からないサディアスからしたら、質問するいい機会になる。


「あ!知ってます。あの…自分は『サードトス』に在学中の友人に会いに来たんですけど、どうすれば会えるんですか…?」

「成程ね。生徒の名前はなんていうの?」

「和蘭って名前です」


名前を聞き、自分の記憶の中にその生徒の情報はあるか探すハッカ。少し悩んだのち何か思い出したのか

、気持ちよさそうな顔を浮かべた。


「何処かで名前を聞いたことがあるかと思ったら、天使の子か。私との関りはないけれど、彼女は『辰星会(しんせいかい)』の一員だから存在を知っていたよ」


辰星会と言われても何か分からないサディアスに、ハッカは補足をしてくれる。


「辰星会は簡単にいうと生徒会みたいに、学園を良くしていくことを目標とした集まりだよ。学園としては存在を認めていないけれど、先生の中には辰星会と関係を作っている者もいるね」

「なんで非認可なんですか?」

「単純に考え方の不一致だよ。辰星会は学園を良くするために規則を作ろうとしている。しかしサードトスは元々自由を大前提としているから、辰星会を認めるわけにはいかないんだよ」


お互い曲げられない根本の軸が衝突した形だ。


もっと話を聞こうと思っていたサディアスだったが、急にハッカは足を止めた。何事かと思い前を見ると、そこには宿があった。外装は木を使った高級感溢れるもので、旅館のような雰囲気だ。


「着いたよ」


取り敢えずサディアスは感謝をハッカに伝える。


「いいよ別に。で、サードトスに入りたいんだよね?」

「あ、はい」


厳密にいうと和蘭に会うのが目的なため違うが、生徒は皆寮生活なので、どっちにしろサードトスに入らなければいけないことに変わりはない。


「じゃあ明日迎えに来てあげるよ。そうだな…、午前8時くらいになるけど大丈夫かな?」


こちらの時間と現実の時間は違う。現実の方での時間と照らし合わせて問題がないか確認をする。


「…大丈夫です。……色んなことをしてもらってありがとうございます…」


顔が上がらない。サディアスは学都に来て早々、いい人に出会えてよかったと思った。そして同時にあの時声を掛けた自分にも賞賛の念を送る。


「別にいいよ。…聞くの忘れてたけど、ここの宿まあまあ高いけど大丈夫?」


心配をしてくれるハッカに、サディアスは仮面の内側で笑みを浮かべて言った。


「はい。お節介な人にお金は持たされているので」


あ「おやっハロー!」


あ「出演回数の調整の為、今日は私一人の登場だよ!」


あ「早速本編の感想を言うね!」


あ「…ハッカさん怪しくない?(小声)」←BAN対策


あ「因みにハッカの名前の由来は薄荷水だよ!」


あ「あと最近にしては文字数が多いよね。これは四日ぶりの投稿だからです!」


あ「本当はエイプリルフールネタでもやろうかと思ったけど、時間が足りないのと、いいネタを思いつきませんでした!」


あ「ではまた今度!」


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