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白翼の人間 〜変わりゆくこの世界で〜  作者: 風花真葛
第一章 「倫理と信念と創造」
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第十六話「入国審査」


浮国から学都までの距離は遠いものだが、遠いの中では弱い方だ。昼前に翼を使って飛び続ければ、夜前には学都に着くことができる。といっても不眠不休で飛んだ場合であって、休憩を間に挟む場合はもっと遅くなってしまう。不眠不休で飛び続けることはかなりキツイもので、人間でいう足を絶え間なく動かしていることと同じようなものなのだ。普通の天使悪魔鳥人(ハーピー)は何時間も飛び続けることはほぼ出来ないだろうが、普段から翼や羽を鍛えている者なら多分可能だろう。


気付いている人がいるかもしれないが、休まず飛んでこの時間なのだ。飛ぶ手段を持たない者は陸路で目指すしかないのだが、陸路で目指す場合は徒歩、乗馬、馬車が現実的。この三つの中で一番早いと思われるのは乗馬だが、馬の速度よりも翼で飛んだ方が早い。勿論馬にも種類があるし、この世界だからこそ存在している雷を纏う神速の馬なんかもいるらしいが、貴族のような上流階級でも手にれるのは困難だという。それこそ王族クラスにでもないと。


サディアスは翼をあまり鍛えてはないので、ぶっ通しで飛び続けることは出来なかった。学都までの道のりでは町や村の近くは通らないことをしていたので、適当な森の中の湖や草原の岩の上で翼を休めながら学都へ向かった。


何故町や村を避けたかというと、天使は地上では殆ど見かけることはないので、下手に目撃されると何をされるか分からないためだ。


水分は水筒を持っていたし、途中の湖で補給して、食料は携帯していた保存食を食べて過ごした。リアルを追求したAltera Vitaではモンスターを倒しただけでは素材も食料も手に入らない。素材や食材を手に入れるにはその場で解体をするか、冒険者ギルド等で解体の請負をしてもらうしかないのだ。


このようにリアルを追求しているため、よくあるゲームのようにはいかないものは他にも多く存在している。例えば鍛冶。素材を集めたらボタン一つで完成なんてことは出来なく、本来の作業を踏んで武器や防具が完成されるのだ。そうすることで生産職、戦闘職を腐らせないようにしているのだとか。ただ全部がリアルと同じだと批判を食らうと思ったのかは分からないが、作業を可能な範囲で簡略化することは可能なのだ。


ご存じスキルによってだ。サディアスは解体のスキルを持っていないし、例えスキル無しに解体が出来たとしても料理が出来ない。まあ肉を適当に焼くくらいなら出来るだろうが。


モンスターは基本的に街の外なら生息しているので、解体や料理のスキルか、リアルでのスキルを持っいているなら食べ物には困らないだろう。


モンスターの強さや生息している種類はその場でまちまちだが、そこら辺の草原や森の浅い所なら簡単に倒せるモンスターがいるだろう。


閑話休題。サディアスが学都に着いたのはもう夜になってからだった。もう少し遅れていたら真っ暗になってしまって飛行が困難になってしまう所だったが、何とか今日中に学都に着くことが出来た。


学都からある程度離れた上空で学都を眺めてみる。夜中であるので都は街灯や建物から発生されている光で綺麗鮮やかだった。そして目を張る光景がそこにはあった。


「…本当に飛んでいる」


箒や絨毯が飛び交っている。これらの上には当たり前のように搭乗者がおり、本来飛ぶことのできない種族が自由に空を飛んでいるのだ。


学都は一つの都市だが、その分都市の大きさは凄い。まあまあ離れた位置からでは瞳に学都の全体像は収まりきらなかった。


今まで見たことない他国の姿に感激を受けながらも、今自分がしなければならないことを理解する。


他国に入る以上、入国の審査を受けて許可を貰わなければならないことだ。学都の審査は国々の中では簡単なものであるのだが、秘国のときは国賓のような立ち位置だったために審査をしてないので、初めての入国審査にサディアスは緊張していた。


このまま外でくすぶっているわけにはいかないので、学都から離れた場所に降りて、持ち運び用の鞄の中に入れていた目立ちにくい全身を覆い隠せるほどのフードを取り出す。背中に背負った袋の上から着るとその部分が盛り上がって不自然なため、背負った何かを外して両翼を背中に這うように折り畳んで、頭だけ出るようにフードで全身を隠す。そして最後に袋を背中に背負って完成だ。


これは天使であることを知られないようにするためのものだ。白翼さえ見られなければ普通の人間と変わりはない。天使だから差別されるとはサディアスは聞いていないが、天使の珍しさから何らかのトラブルが発生するかもしれない。対策をするに越したことはないのだ。


気持ちを落ち着かせて学都の入国口に歩き出すサディアス。学都の入り口は一つしかないので迷うことはない。


あと二つくらい出入り口を増やしてくれれば待つ人が分散されていいのにと内心思うサディアス。八咫に聞いた話だが出入り口が一つしかないために、実際待ち時間がかなり掛かる場合も珍しくないという。


近づいていけばどれだけの者が並んでいるか分かるようになる。時間帯もあるのか、十人弱ほどしか並んでいなかった。馬車を引いた商人などの時間が多くかかりそうな者もいないので、一つ心の荷が下りた気分だ。


もう少しでサディアスも並ぶという所で大切なことを思い出した。すぐさま鞄から仮面を取り出して顔を隠す。フードと仮面が相まって完全に不審者だが、そうしなければならないのだ。


荒ぶった気持ちを落ち着かせ、今度こそは最後尾に並ぶ。待機列の人数もそうだが、入国審査にかかる時間もそう長くはないようで、少しすればサディアスの出番が来るだろう。


サディアスはどのように審査をするのか気になって観察をする。どうやら出番が来た者は審査を行うために、設けられた小屋に入っていき、問題がなければ反対側に存在している出口から学都に入国できる仕組みのようだ。


「…次ッ!」


鎧を身に纏った番兵が順番を知らせてくる。サディアスの姿を見ても困惑せず、普通に対応するあたり、サディアスのように変わった者も珍しくなのだろうか。


小屋の中に入る。中には人間が二人いて、一人が仮面とフード、そして所持している荷物を全て机の上に置くよう指示してくる。抵抗するわけにも行かないので、言われたように荷物を置き、仮面とフードを外す。


「ッ!」


二人の審査官はサディアスの顔と天使であることに驚くが、すぐさま顔を無表情に戻す。


(…やっぱりこういう人は直ぐに戻せるんだね)


サディアスは二人を凄いと思う。自分でこんなことは思いたくないが、驚かれるのは当たり前で、失礼だと思っていても驚きを隠せない人が殆どなのだ。審査をする上で様々な者を見たりすることになる特性上からかもしれないが、表面上だけでも隠してくれるのはサディアスからしたらとても喜ばしいものなのだ。


その後は一人がサディアスの荷物を確認して、もう一人は質疑応答を行ってくる。質疑応答の内容は、入国理由や出身国、犯罪歴などだった。質疑応答が終わると水晶のような物を渡される。


「これにマナを込めてください」


マナを込めるということはこの水晶は魔道具なのだろう。もしもこの水晶が全て魔導石なら、途轍もない値段になる高価な物だ。


意味の分からない行動に困惑しながらも、言われたようにマナを少し水晶に送る。すると水晶は光を発し始めて、透明から透き通った青に変化を遂げた。審査官は水晶の変化を見て頷き、サディアスに荷物を返却して言った。


「ようこそ学園都市国家エルフェンテインへ。貴方をこの国は歓迎するでしょう」


い「だんだん面倒くさくなってきた後書きのコーナー」


う「今まで通りの長さをずっと続かせるのは苦痛by作者」


い「因みに前回に引き続き一名は欠席となっております」


う(…この闇深い)


う「次回から遂に学都に舞台が移るって言ってたじゃん?」


い「そんなこと言ってましたね」


う「本編入ったは入ったけど、なんか出ばなを挫かれた気分」


い「まあまあ嘘はついてないですし、次話か次々話では「サードトス」が出てきますから(予定)」


う「省くところをちゃんと省かないとかなりの長さになっちゃうらしいよ」


い「上手く構成が出来ない作者の無能さですね」


う「否定しない」


い「この先垣間見えるだろう作者の無能さに乞うご期待ですね」


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