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白翼の人間 〜変わりゆくこの世界で〜  作者: 風花真葛
第一章 「倫理と信念と創造」
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第十二話「摸擬戦闘」

当分は現実の内容には触れません。そして二、三話もしない内に場面をさっさと学都に移すつもりです。じゃないとどんどん沼に…

『ジョシュミ』。それは秘国の上空に存在している浮島で、天使悪魔鳥人(ハーピー)が共に手を取り合って生活している、浮遊国家パーシィー・ディビィストの本拠地だ。島には多くの自然が存在していて、独自の生態系が形成されている。


天空宮の裏手には開けた場所が存在していて、何か特別なこと以外なら、誰でも自由に使うことができるスペースになっている。昼寝をしてもいいし、何ならバーベキューをしてもかまわない。とは言っても大部分の使われ方は、訓練や実験だ。広さもかなりあるので、複数の事柄を同時に行うことだってできる。


予めこの場所の管理者に申し入れをすれば、決められた時間内なら、独占をすることができるルールが存在している。が、特別な場合以外は基本的には申請は通らない。


そんなフリースペースは今、二人の天使が独占している。ということは申請が通ったということだ。何故申請が通ったのか。それはこの二人が行っていることを見ればわかるだろう。


カンッ、ガンッ!金属と金属が()つかり合う音が不定期に鳴り響く。ある天使が槍を、ある天使が大太刀を、互いに向かって突き、薙ぎ、振り下ろす。勿論それを身に食らう訳にはなかないため、回避をしたり、持っている武器で払う。そしてこれらの動作は刹那に行われていた。一般人が見ても何が起こっているのか理解は出来ないだろう。


槍を使っている天使『サディアス』は、背中に付いた二翼の翼を器用に使い、あらゆる角度から大太刀を使っている天使『ディータ』に攻撃を行う。真剣な表情で必死に攻撃をしているサディアスに対し、ディータは顔色一つ変えることなくその場に不動のまま攻撃を躱し、尚且つ的確に大太刀を薙ぎ、振り下ろす。サディアス何とか食らいついていくが、激しく動いていたこともあり、粗が出始めたのはサディアスの方だった。サディアスはここままだと何れ攻撃を食らうのは自分だと思い、今までとは違う動きをする。


サディアスは空中からディータに急接近をし、もう少しで接触をする辺りで、槍を片手で横に薙ぎながら背を向ける。戦闘中に背を向けるのは明らかな自殺行為だが、サディアスは人間と違って背中に翼が生えている。空中に浮くために使っていた翼を使って、ディータの視界を塞いだのだ。ディータほどではないにしろ、サディアスの翼は大きい。視界を塞ぎながら槍を振っているので、ディータは大太刀で槍を受けざるを得ない。翼は浮くための役割を無くされたため、サディアスは必然的にディータを目前に急降下する。サディアスは地に足を付けると、身体を捻りながら手首を捩じりながら槍から手を放し、逆の手で掴んだ槍をディータに向けて突く。


ディータは地面を蹴って後ろに下がる。これによりサディアスの攻撃は外れたが、ディータをその場から動かすことに成功出来た。


ディータは自分が動かされたことに笑みを浮かべる。


「いいね」


ディータは一言を言うと、大太刀の刃を空に向けるように構える。そして足と翼を使って一瞬で間合いを詰めてくる。その速さは今までのサディアスの猛攻よりも素早く、鋭いものだった。間合いを詰める一瞬の内に大太刀を、彗星が流れるように右上から左下に一線を引く。


彗閃(すいせん)


簡素故に流麗な一太刀は、確実にサディアスの身体をなぞる。刃はサディアスの身体を切り裂き、血が飛び散る、はずだった。


サディアスの姿はいつの間にか三メートルほど後ろに移動していたのだ。


ディータはその光景を見て、怒りをあらわにする。怒りといっても激怒というわけではなく、軽くしかる程度のものだ。


「スキル使っちゃ駄目じゃないか」


ディータが怒っているのを目にし、サディアスは呆れて戦闘態勢を崩してしまう。


「先にアクティブスキルを使用したのはディータさんの方じゃないですか。まともに食らってたら大変なことになってましたよ」


アクティブスキル。それは任意に発動するスキルのことだ。ディータが右上から左下までを切った行為、一見するとただの振り下ろしと変わらないように見えるが、これは『彗閃』というスキルを発動した上での振り下ろしだったのだ。


『彗閃』。それは上から下への振り下ろしの際に使える太刀専用技だ。一見するとただの振り下ろしと同じようにしか見えない簡素な攻撃だが、技の本質は見た目ではなく速度にある。今までのディータの攻撃のように避けたり槍で受けようとしたものなら、何も理解出来ぬまま身体を切り裂かれるであろう。


任意発動の魔法もアクティブスキルに分類される。ここで憶えの良い人なら気が付くかもしれないが、帝国の都市『ルーウェル』において、八咫が魔法の攻撃を受けた際、発動者は皆スキル名を口に出していた。それに対してディータは『彗閃』を口に出さずとも発動していた。勿論のことだが、これには理由が存在している。


「…。サディの成長のあまりに、無意識のうちに『彗閃』を発動してたよ。ハハハハハ」


二人が行っていた摸擬戦は、事前にスキルを発動しないというルールを決めたうえでの摸擬戦であった。その為サディアスからしたら迷惑極まりないことであった。この摸擬戦においてサディアスが使っていた槍は練習用の槍で、本来使っている槍とは比べ物にならないくらいナマクラであったのだが、却ってディータは普段から使っているバリバリの業物の大太刀であった。業物による『彗閃』をまともに食らえば、良くて瀕死、良くなければ即死である。


ディータは自分の失態で部下を殺してしまうところだったという事になる。これはサディアスが奇策を使ってきた成長への喜びからの行為であることに間違いはないのだが、そんなものは言い訳にすぎない。本当に危機一髪だった。


「ハハハハハ…。いやすまなかった」

「…まあ咄嗟の判断の練習になったからいいですよ」


不慮の事故になる寸前であったとしても、サディアス側に少なからずのメリットがあったことは確かだった。憂いあれば喜びありといったところだろうか。


「優しいなサディは。他の天使長共とは違って…」


心の底からの悩みなのか、ディータは今までに見たことないくらいの落ち込みを見せる。サディアスも天使長である以上、他の天使長との面識があるため、ディータの悩みが分からなくもない。ただ()()()があるだけで、ここまで悩むことなのかとサディアスは思う。


ディータは何かを思いついたのか、一瞬のうちに表情を変え、サディアスに言葉を投げかける。


「サディ、遂に『回避』のスキルを無発動できるようになったんだ」


先程アクティブスキルについて話しをした際、スキル名を口に出す場合と出さなくても発動する場合があることについて説明をしたが、これら違いについての理由を説明をしよう。ディータが言っていたように、スキル名を言わなくても発動できるスキルは、スキルを無発動するという言い方をされる。アクションスキルは全て無発動が可能だ。しかし無発動をするには条件が存在している。一部例外はあるが、決められた回数そのスキルを発動できれば無発動が可能になる。要するに沢山同じスキルを使っていればいいということだ。


『回避』。このスキルは名前の通り、発動すると意識した方向に瞬間移動するスキルだ。先程の『彗閃』のように、攻撃を避けたり武器で受けたりすることが間に合わない場合、『回避』を使用すれば避けられることができる。実際サディアスはこの用途の使い方をした。このスキルは瞬間移動できるという性質上、回避行動以外にも使われる汎用性が高いスキルになっている。


「サディがこうもすくすくと成長してくれて…ぐすっ」


勝手に感極まって涙ぐみ始めたディータを無視しながらも、自分が成長している実感を得れて、少し優越感に浸るサディアス。しかしここで思いもよらない発言をされる。


「ぐすっ…。今日のサディは何か変だと思っていたが、勘違いだったか」


サディアスの背筋が凍る。ディータはポンコツだが優秀であることに間違いはない。昨日の出来事を悟られないように行動をしていたサディアスだったが、ディータは何かあったのかと薄々感ずいていたのだ。ただサディアスに問い詰めるような真似をしてこなかったのは、サディアスからしたら有難いものだった。その上ディータは勘違いだったと勘違いしてくれる二段編成だ。


「…」


何といえばいいか分からずサディアスは黙ってしまう。折角勘違いをしてくれたのに、ここで黙ってしまうのは悪手になってしまうが、昨日の出来事は本当に触れられたくはないものなのだ。


「?サディどうかし」

「訓練ですか?」


急に黙ったサディアスを不審がり声を掛けたが、ここで第三者が表れた。ディータもサディアスもこの声の主を知っていたため、即座に声のする方向に顔を身体を向ける。


そこにいたのはアルフィム、そしてアルフィムと同じくらい年老いて見える悪魔と|、人間でいう90歳くらいの見た目をしたご老体の鳥人ハーピーがいた。

あーちゃん:あ


いーちゃん:い


うーちゃん:う



あ「一話だけで出番は終わりませんよ!」


い「作者の気まぐれと言った方がいいと思いますが」


う「作者曰く本編の補足とかの役割と、単純にこういうことに憧れがあったらしい」


い「私は面倒と思ったら離脱しますので」


あ「まあまあそんなこと言わずに!では本編の補足を行ってくね!」


い「アクションスキルの無発動を可能にするための条件補足を致します」


う「本編で回数を重ねればいいって言ってたけど、ただ回数を重ねるだけじゃダメ」


あ「例を挙げるね!じゃあ炎を前方に飛ばす魔法があったとする。その魔法を湖にずっと打ち続けたとしても無発動が可能にはならないんだ!」


う「どんなに回数を重ねても無理」


い「重要なのは何に対してその魔法を使っているかです。この魔法は攻撃魔法。そのため生き物に対して魔法を打ち続けなければならないんです」


あ「サディアスさんが無発動を可能にした『回避』。このスキルは名前の通りに本来の用途は攻撃を回避するためのものなので、『回避』の場合は攻撃をタイミングよくこの『回避』を発動して避けれれば回数のカウントがされるの!」


う「無発動を可能にするのって、思ってるよりも大変だから。まあ死ぬ気で頑張ればかなりの短期間でも無発動を可能に出来るかも」


あ「今日の補足はここまで!楽しんでくれたかな!?」


い「この程度の長さなら退避しなくても大丈夫そうですね」


う「…また今度。バイバイ…。あとブクマしとくのを忘れないように」

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