第一話 「Altera Vita」
「第五魔方陣展開!『豪炎球!』」
ローブを着た男が伸ばした右手の先から展開される五つの魔法陣。次の瞬間、一番奥の陣の中心から燃え滾るバスケットボールくらいの大きさの球が発射された。
その球は右手が向いていた方向、一人の青年に向かって進む。射出された球は高速で進んでいき、終に男に当たる、しかしその瞬間、球はあろうことか急に青年の右側をかすめるように曲がって軌道を変えたのだ。
ローブを着た男は自分の攻撃が外れたことに困惑する。自らは軌道を途中で変化させるように陣式に組み込んでいなかったからだ。
ローブの男は問題を解決するために思考してしまった。それは魔術師故の性か、それとも彼の性格ゆえか。しかしそれは悪手でしか無かった。彼は戦いに慣れていなかった。故に忘れてしまった。練習と本番をはき違えてしまったのだ。これは真剣勝負であるのだ。
すぐさまローブの男は戦いの最中であることを思い出し、対戦相手に視線を戻す…はずだった。
いない。いない。辺りを見渡しても何処にも青年が消えている。
本来であれば簡単に気が付けるはずだった。しかし彼は突き付けられた疑問と、焦りからそのことを忘れてしまっていた。
気が付いた時には遅かった。ローブの男は空を見上げる。そこにはいた、己の対戦相手が。槍を持ち、背中から純白の翼を生やした青年。青年は無表情で自分に向かって槍を突き刺そうとしていた。
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西暦2036年
ゲームは発展し、新たなるジャンルを開拓した。そのジャンルとはVRMMO(バーチャル・リアリティ・マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン)。VR空間に生成された自分のアバターに脳波信号等を使って操作する。どういうことかと言うと、ゲーム内の自分のアバターを現実世界の自らの身体のように好きなように動かせるのだ。更にはゲーム内のアバターが感じた五感は、現実世界の自分へも共有されるのだ。
VRMMOは仮想世界にフルダイブするという特性上、今までのゲームと違ってその場の臨場感が全身で味わえたり、山や海のような簡単には行くことの出来ない場所に簡単に行くことができる。
VRMMOをジャンルとしたゲームの競争は凄まじく、存在する全てのゲーム会社がVRMMOの分野に手を伸ばし、数多の作品を世に生み出した。
ただしある1社を除いてである。
その1社とはスモールグレイ。
VRMMOというジャンルが世に定着するまではゲーム業界最王手の会社であったのだが、VRMMOというジャンルが定着し、他社がVRMMOのジャンルのゲームをに排出する中で、スモールグレイ社だけはVRMMOのゲームを一切世に出さなかった。更には2010年を気に、新作ゲームの公表をしなくなったのだ。
何故元最王手だったスモールグレイ社が急に新作ゲームの開発を表立って行わなくなったのか。様々な憶測が飛び交ったが、本当の事は分からず仕舞いであった。
しかし2019年10月2日にスモールグレイ社が約10年越しに新作ゲームを公表した事により、スモールグレイ社空白の9年は、たった一つのゲーム『Altera Vita』を制作していたからであるということでその論争を終了させることになった。
発表された当時のネットの盛り上がり具合は凄まじいものだった。約10年一切世に情報を出さずに作り上げられていたAltera Vita に対する興奮は勿論、スモールグレイがついにVRMMOのゲームを制作したなどの驚きの声も多く上がった。
ずっと秘匿され続けて制作されたAltera Vitaは異世界を舞台にした自由形のVRMMOである。今までのVRMMOにも似たような作品は多くあったのだが、Altera Vitaには大きな特徴が3つあった。
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「画面の向こうのみき!あ、噛んじゃった…。君!今からAltera Vitaの凄い所を教えちゃうよー!」
画面に現れる一人の女の子。黒髪で15歳くらいに見えるが、現実の人間ではなかった。
「私は公式案内用自立型AIのあーちゃんですっ!名前の由来はAIの頭文字が『A』だかららしいです!」
そうだあーちゃんはAI。AI技術はここ数十年で大きく進化し、意思を持つAIが生まれるようになっているのだ。
「Altera Vitaにはすごーい所が三つあるんだよー!まず一つ目は…ゲーム内で自由なプレイスタイルが可能なこと!」
あーちゃんが言うと背景に「自由なプレイスタイル」と大きく文字が表れる。
「ストーリーは無し、それにこれこれをやれっていうのも無し!この世界にはすごーい沢山の職業があって、好きにライフスタイルが決められるんだ。まさに自分自身で紡ぐストーリーってね!」
あーちゃんが言い終わると同時に激しい効果音が鳴る。どうやら最後の部分を強調しようとしていたみたいだが、結構シュールになってしまっていた。
そんなことは露知らず、あーちゃんは画面の中心から急に画面の端に移動をする。すると残りの余った画面部分にホワイトボードが表れる。そして単語が箇条書きに書かれていく。上から『農家』、『冒険者』、『魔法使い』等と書かれている。
「こんな王道な職業は勿論、あまり表立って言えないような職業まで…。別に職業だけじゃないんだよ!自分が現実で憧れていたことをしてね!犯罪だってできるよ。但し多少の制約は存在してます。例えばレイプ行為とか!それにこの世界にも法律があるから注意してね!」
又もや文末で効果音を合わせてきた。先程よりはマシだが、別になくてもよいのではと思われるようなクオリティには変わりなかった。
次の説明に行くためか、ホワイトボードが画面上から消える。あーちゃんは見計らって続きの説明を行おうとするが、横槍が入る。
「次にしゅ…。え、カンペ見ろって?……。はい!ここで急ですがNPCについての説明をしろと言われました!え?台本に書いてあったって?しかも自由なプレイスタイルより前に説明する手筈だった?…」
NPCとは(non player character)の略称で、プレイヤーの管理下にないキャラクターのことを指すものだ。何らかのゲームをしたことある人は分かると思うが、ゲームを円滑に進めるために、NPCは大きな役割を担っている。
「と、とりあえず!この世界のNPCは私みたいに意思を持っています!ただ自分たちが作られた存在だとか、自分たちの世界がゲームなのだとかは知りません!…もしかしたら、君たちが当たり前のように住んでいるこの世界もゲームだったりして…」
NPCの説明が終わり、中断された次の説明にあーちゃんは入ろうとする。が、又もや横槍が入る。
「では満を持して種族に」
「もういい私がやるからどいて」
急に画面に一人の少女が表れる。髪は茶色で、あーちゃんと似たような容姿をしていた。
「いーちゃん!?」
「時間がもったいないし、全然わかりにくい。この先は私がやるから」
「ちょっと!?急に何言って…体が消えていくぅぅぅぅ!?やめてぇぇぇぇぇ…」
あーちゃんは体がどんどん薄くなっていき、画面上から消えてしまう。
いーちゃんと呼ばれた少女は申し訳なさそうな顔をしてお辞儀をする。
「うちの姉が失礼いたしました。申し遅れました。私は自立型AIのいーちゃんと申します。名前の由来はAIの『I』かららしいです」
いーちゃんの自己紹介が終わると、何もなくなっていた背景に変化が起こる
「では二つ目の凄い所である種族についての説明をさせていただきます。皆さんの世界では人間だけが言語能力を所持しておりますが、この世界では様々な生き物が言語能力を保持しております。プレイヤーの皆さんには、キャラクター作成時に種族を選んでいただくことになります」
カメラがズームアウトし、いーちゃんが占める画面の量が減少する。
「まずは4種類紹介をさせていただきます」
するといーちぁんの左右に二体ずつ生き物が表れる。
「まずは皆さん自身の種族である人間。こちらは説明不要ですね」
画面から見て一番左の生き物が前に出てくる。いーちゃんの説明通りにそれは人間の容姿をしていた。
「次に耳長人。自然を愛する耳長人達は基本的に美形であり、人間の約4倍ほどの寿命を持ちます。特徴として、両耳が長い。そして性格は穏やかなもの達が多く、闘いに消極的である種族です」
いーちゃんの左隣の生き物が前に出てくる。確かに耳は長く、とても美形の容姿をしていた。
「次に獣人。狼や猫、狐に獅子などの獣の特徴を身体に宿した獣人達は、野生本能が強くて戦闘を好むものが多いです。獣人を選択した場合は、何の動物の特徴を入れるかの設定も行っていただきます」
いーちゃんの右隣の生き物が前に出てくる。その生き物は頭に猫の耳も持っていた。
「次が小人。人間よりも背丈が多少小さい小人達は、鍛冶を得意としています。顎に携えた逞しい顎髭は小人達の象徴です」
一番右の生き物が前に出てきた。背丈は他の三体と比べて小さく大きな髭を蓄えていた。
「これらの四体は亜人種と呼ばれ、ゲーム開始時に選択可能です。では次に6種類の紹介をさせていただきます。いちいち前に来るのも非効率な気がしてきましたので、紹介の後にその種族が皆様の画面に現れるように致します」
画面上に移っていた四体は消え、いーちゃんだけになる。
「まずは天使。背中に純白翼を携えた天使達は温厚的な者が多いです。しかしその対象は同族や友人に向けてのものです。天使は悪魔を本能的に嫌っています」
いーちぁんのだけの画面が切り替わり、背中から純白の翼をもった生き物が表れる。
「次に悪魔。背中に悪魔羽を携えた悪魔達は好戦的ですが、何より好奇心と探究心を強く持ちます。仲間と行動することはあまりせず、個々が自らの欲求のままに行動することが多いです。悪魔も本能的に天使を嫌っています」
悪魔羽を生やした生き物が画面に表れる。
「次に堕天使。地に落ちた堕天使達の翼は穢され漆黒に染まっています。堕天使は天使を心から憎んでいます」
漆黒の翼を生やした生き物が画面に表れる。
「次に妖精。背中に羽を生やした妖精達の身体は基本的にドワーフよりも小さいです。神秘的な場所に住居している妖精達は、自分達の場所を捨ててまで何かを求めることは少ないと思われます」
今までの中で一番小柄で、背中から羽を生やした生き物が表れる。
「次は人魚。人魚達の足は尾鰭です。水中の動きはとても素やく、人魚達の声は聴いたものを魅了させると言われています」
足が尾鰭になっている生き物が出てくる。
「そして竜人。龍のように鱗がある逞しい翼や、頭から生えた二本の角などの龍族の部位を持った竜人達は俗世には姿を見せません。この種族になられた場合、これから話す内容である、国システムにおいて、国の選択が不能になります」
とても大きく逞しい翼をもっていて、鱗が身体に存在しており、二本の角を頭に持っている生き物が表れた。
「これらの6種は神魔種と呼ばれています。そして最後の七種類の説明を致します。まずは鳥人。腕から羽が生えている鳥人達は最も同族意識が高いです。群れで行動するのが基本で、単体で行動することはほぼありません」
鳥人が表れる。腕の先から羽が生えている姿は、今までの種族の中でも異様だった。
「次に半魚人。身体に魚の鱗等の魚に共通する部位を持つ半魚人達は、好戦的ではないが高い戦闘能力を持っている」
魚人が表れる。人魚のように足が尾鰭ではないため、身体に表れている鱗がより強調されていた。
「次にゴブリン。身体全身が緑色であり、身体の大きさはドワーフと同じくらいのゴブリンは、温厚な個体と好戦的な両面を持ち合わせています。基本の個体はドワーフくらいの大きさだが、突然変異をすることがあり、その場合は身体が大きく変化します」
表れるゴブリンは説明通り体の色が緑色だった。
「スライム。不定液状の生命体であるスライムは、身体を自由に変形することが可能です。初期個体の色は青色で、育った環境に影響されて色が変わります。他の生命体とは違って心臓が存在しなく、核というものが心臓のような役割を果たしています」
ぷよぷよした生き物が表れた。
「虫人。昆虫の特徴を持った虫人達は、人間と同じように二足歩行の者が居れば、六足歩行の者もいます。獣人と同じように、この種族になった場合は昆虫の選択も行うことになります」
表れた虫人は蝶のように美しい羽をもっていた。
「オーク。巨大な身体を持つオークは、鱗があり、牙と豚のような鼻を持っていて、剛毛が生えています。その見た目から他種族からも忌み嫌われやすいが、温厚な者が殆どで、争いをできるだけ避けようとします。但し手を出されたらその巨体は容赦しないはずです」
今までで一番の巨体であるオークが表れる。
「最後にケンタウロス。半身半獣の身体を持つケンタウロスは、下半身が馬の容姿をしています。
好色で酒好きの暴れ者だが、彼らは野蛮な種族ではありません。ケンタウロスたちはとても器用です。…はあ…。疲れた…」
最後に表ることになったケンタウロス。下半身が完全に馬なので、好き嫌いが分かれそうだ。
「最後の7種類は異形種って呼ばれてます。この中から選べるのかなって思った大間違いなので注意してください。亜人種は言ったとおりに選べるのですが、神魔種と異形種は選べないのです。理由の説明を致しますね。この世界において、神魔種と異形種の生体数は、亜人種を含めて全体見たときに占める割合の二割ほどしかしないのです。その為神魔種と異形種を自由に選択できるような形にした場合、生体数の比が大きく変化してしまう恐れがあるのです…あと少し…」
いーちゃんはお疲れのようで、体裁を気にせず疲れを前面に見せてくる。わざと見せている訳ではないのだろうが、余りにも包み隠さないのでかなりわざとらしく見えた。
「じゃあどうやったら神魔種、異形種になれるのか。それは第五の選択肢であるランダムを選ぶと、確率でなることができます。ソシャゲのガチャのようなものですね。ランダムを選択すると自動で抽選が始まり、17種類のいずれかが当たり、その当たった種族になることができます。提供割合は内緒です」
「…説明はもうだるいから…残りは妹に…おーい!うーちゃん!説明よろしくね!」
いーちゃんは大声を上げ、どこからともなく取り出したリモコンを取りだす。そしてリモコンについていたボタンを二つ押した。
するといーちゃんはあーちゃんのときの様に姿が消えていく。遂には完全に姿がなくなったが、その代わりに一人の女の子が表れた。見た目はあーちゃんやいーちゃんと類似しているが、二人より背が小さい。
その女の子は周りをキョロキョロとしだし、自分が今どのような状況下に置かれているのかを察しようとする。
「なに?ゲームやってたんだけど…。え?説明しろだって?…はあ。めんど…。あい。私は自立型AIのうーちゃんです…。名前の由来は姉の名前が『あ』と『い』だかららしいです…。ちょっと台本くれないと何言えばいいのか分からないんだけど…」
いーちゃんのときとは違い、最初からだるさを包み隠さないうーちゃん。うーちゃんの要望の答えるように何処からともなく台本がうーちゃんの手元に落ちてくる。
「えーっと………。あい。最後のすごーい所の国システムについての説明をする…ます。あーもう敬語面倒だがらパス。勝手に脳内で変換しとけ」
急に辛辣になるうーちゃん。
「キャラクター作成時に我々運営が公式に国として認められている国の中から一つ選択して」
ようは適当にでっち上げられた国は認めないよってことである。
「ゲーム開始時から存在している国は全部で12国。説明は書かれている文章を丸読みするからご了承よろ。これから国を説明してるとき、その国の一部が画面に映し出されるからそれでもみとけ」
そういうと画面が切り替わり、『国システム』という文字が堂々と出てきた。
「第1ノ国、ヴェンダルディ王国。通称は王国。亜人種で構成されている国。そのうち八割程度は人間。現実世界の中世ヨーロッパを彷彿とさせるような外観や風習が存在している。貴族制度や奴隷制度が存在しており、貴族・平民・奴隷の溝は大きい。更には現国王が率いる亜人種間での共存を掲げる「共存派」と、現国王の分家で、王国最大の貴族であるゲッペル大公が率いる、王国から人間以外の亜人種の排斥を目標とする「排斥派」が、その溝を深くしており、内乱の雰囲気が漂っている」
中世ヨーロッパをモチーフとした街並みが表れる。様々な種族が共存している姿も相まって、グリム童話の世界が体現されているようだ。
「第2ノ国、神聖国家セイクリード。通称は神聖国。人間で構成されている国。人間が最高にして最上位の種族であると謳っている宗教国家。その為人間以外に対する差別意識が他国と比べて群を抜いて高い。宗教国家の名の通り、国教として『イフリム教』という宗教を信仰していることと、第三親等までに人間以外の血が混ざっていない純人間であることが国民になるための条件である」
街並みは王国に宗教の要素を足したような感じだった。教会が映し出され、人間たちが像に向かって礼拝している様子は、見る人にとっては理解しにくいものであろう。
「第3ノ国、夏花及び八刀連合国。通称連合。人間と小人で構成されている国。日本の和風文化をモチーフとした、八つの家がそれぞれ治めている八刀、中華文化をモチーフとした夏花の2国からなる連合国家。両国間での関係は良好であり、連合国になってからかなりの年月を有している」
木造を中心とした街並みだ。ヨーロッパ調とはまた違う魅力を醸し出している。日本人には比較的なじみやすい文化だろう。とはいっても和風であるというところから分かるように、現代の日本の面影はない。
「第4ノ国、学園都市国家エルフェンテイン。通称学都。様々な種族から構成されている国。11国の国の中で最も国土が小さい国。その国土は学園都市エルフェンテインと、その周辺約2キロ圏内だけであり、食糧や日用品は他国からの輸入に頼っている。八賢者という8人の者達が治めている。学園都市の名の通り、都市の中心に世界最大の学園「オーバム」が存在している。様々な種族が共存している為、種族間での差別はほぼ存在しない」
とても大きな学園が映し出される。色んな生き物が制服を身に纏い、魔法や剣術などを学んでいるようだ。魔法を学びたい人はここが一番適しているのだろう。
「第5ノ国、ヴァロンデイン帝国。通称帝国。様々な種族から構成されている国。国土は属国を含めて一位。他種族感の差別は殆どなく、完全なる能力主義。その為能力を持たない、または著しく低い者を差別したりする者もいる。属国の1つに機械工業が最も発達した国「マキナス」という国があり、12国の中で最も機械技術が発達して浸透している」
帝国は属国などの特性上、様々な文化が混在している。そのため映し出される街並みはヨーロッパ風のものから、機械仕掛けの町など、多文化社会が協調されていた。
「第6ノ国、ルイン森国。通称森国。エルフから構成されている国。国土の殆どが森である。国の中心には「世界樹」が存在しており、世界樹は森国に様々な恵の恩恵を与えている為、エルフと妖精は世界樹を神格化させている。しかし自然が国土のほぼ全ての為、王国や帝国のような国と比べて工業やサービス業が発展していない。種族間での差別は平均的。
映し出される映像は自然ばかりで、町も自然を壊さないように最小限しか発達していないようだ。先程までの国々とはまた違った雰囲気を醸し出していた。
「第7ノ国、ミルトー獣国。通称獣国。獣人で構成された国。獣王を最高権力者とし、その下に十の部族の族長からなる『獣十傑』が国を治めている。森国の様に国土の殆どが自然状態である為、王国や帝国のような国と比べて発展という面ではかなり出遅れている。森国と違うのは、森国は森が国土の自然のほとんどを占めているが、獣国は森を含め、草原、サバンナ、砂漠、ツンドラなどと、いくつかのバイオームが存在している」
説明文と同じように日本では見られないバイオームの風景も流れる。町単位で生活をしているよりは、部落で固まっているようだ。
「第8ノ国、海洋国家ミズチ。通称海国。魚人と人魚を中心とした異形種で構成された国。海上に作られた2つの街と、水中に存在する1つの都市を中心としている。海洋資源がとても盛んで、アンティグルスの海洋資源の多くはミズチからの交易によって渡った商品である」
映し出された都はまさに水の都と言わんばかりに、水と建物が協和されていた。
「第9ノ国神秘国家ヒミストリー。通称秘国。妖精とで構成されている国。森国や獣国を自然の国と呼ぶなら、神秘は浮世離れ。現実世界では《・》対に有り得ない|風景や万象が、当たり前のように存在している」
今までの国の中で最も現実離れしていた。植物も生き物もみな幻想的で、国全体が一つのブランドのようだった。
「第10ノ国、浮遊国家パーシィー・ディビィスト。通称浮国。天使、悪魔、鳥人で構成されている国。何故浮遊国家と呼ばれているのかというと、国土の全てが上空を浮遊している島のみであるからだ。所謂浮島である。上空に存在する為、空を飛べない種族は浮島に入ることは出来ないであろう」
この国も現実ではありえない。ゲームだから成立している浮島の存在感は頭一つ抜けていた。
「第11ノ国、地底国家ダクス。通称地国。悪?、???、???、スケルトン、?で?成?れ???国。地?に存??る??の国?あり、?上??一?の国土を????いない。しかし??家の?で最??れた??文明が??しており、代表??物は、?下で生活する為にダグ?の??当?か??まで?在し?ける『????』?ど??げ?れる。これ文章通り読んでいるからこうなってるだけで、私がバグっているとかじゃないから」
今までの国の様に国の様子が映す出されない。その代わりにうーちゃんが表れてくれる。
「最後、第12ノ国、混合国家デインロウリー。通称混国。名前の通りに、様々な種族が混合している国。国内での種族の間の差別、侮蔑を一切禁じている。国民は全て平等であるのだが、他国民への差別がとても酷い。その為11からなる国々の中でもその在り方は特に変わっている。基本的に他国との交流は無く、入国も出来ないため、国の中がどうなっているかは分からない」
うーちゃんの続投は続いた。混国も国の特性上映し出せないのか、うーちゃんを眺めるタイムになっていた。
「はーい。ここで注意点。神聖国家セイクリード、地底国家ダクス、混合国家デインロウリーはとても国の在り方が特殊だから選ぶときは気をつけて。本当に公開しないようにだけね」
いままで真面目にやってなかったうーちゃんに少し真面目さが帯びる。
「必ずどれかには所属してもらうことになる。けど種族によっては所属出来ない国があるから。例えば神聖国は人間の場合しか所属出来ない。国の説明であるように人間以外を差別しているのに、人間以外の種族のプレイヤーがいるのはおかしくなっちゃうでしょ。だから種族によっては選択肢が全然ないかもね」
スマホを閉じる。先程まで流れていた映像は消え、映し出されるのは黒い画面であった。
「…ああもうこんな時間。早くログインしないと待ち合わせに遅れる…」
いきなりの情報量の多さで申し訳ございません。私の心が折れてしまい、所々粗があると思います。
二話から本編に入ります。
もしよろしければブクマや感想のほどよろしくお願いします。