03
「大人しく私に生気を吸い取られていれば、極上の体験をしながら昇天出来たものを……バカな男だ」
「それはどうかな、醜い崩れた面をよく見てから判断しろよ」
「憎まれ口は健在だね、そろそろ覚悟しな」
そういうと、両掌を合わせて赤い球状の閃光を作っている
「赤だ!」そう呟くと天井の照明へと飛び上がる。
カイトは知っていた。
この赤い閃光に囚われると光の中に閉じ込められだんだん酸により
溶かされてゆく魔術だと。
頭の中で高速で魔導書の本のページが繰られてゆくようだ。
対抗手段をいくつかはじき出す。
ひとつは、魔術師自身をこの球体の中に入れる事。
土の元素を呼び出し盾にして応戦するか。
酸を火で燃え上がらせ魔術師ごと焼くかだ。
すかさず距離を開けながら、カイトは意識を集中して盾を呼び出すことに
決める。
元素を集中して呼びだし集め固め作るのだ。
黄色の閃光を集め土を形作る粒子が舞いながらだんだん盾の形へと形成されてゆく。
土と金属の破片を混ぜ込んだ重厚な作りのくすんだ辛し色をしたものだが
身を挺して守ってくれるだろう。
「貴様、そんな技を隠し持っていたとは」
魔女は醜悪に表情が歪み唾を吐きかける。
「やるのかい、覚悟しな」
そういうと魔女は一気に赤い閃光を高速でカイトめがけて飛ばしてくる。
凄まじい衝撃が腕に走る、盾が一瞬にして半分が溶け出す。
攻撃を受けている盾から手を放し飛び上がり、空中を大股でかけてゆくと、
刀で女の首を一気に跳ね飛ばす。
首は跳ね飛ばされた衝撃で壁に打ち付けられる。
「意外とあっけなかったな」
そう呟くと、女の持っていた袋をあさる。
この女の雇い主の手がかりを探さなくては、巫女が狙われている。
金貨が見つかる、これはどこの金貨だ?
少し黄金が黒ずみがかり、鋳造されている男の鷲鼻がくっきりと映えているがこの元首に心当たりがない。
もちろん、この金貨の発行国にも。
この帝国を将来脅かす可能性の芽は早く詰んでおかなければ。
この犯人を捜しに行く命令が女王より下るだろう。
拝謁するために、時計楼に住まう女王へとテレパスを送る。
「女王、至急お目にかかる手筈を」
瞬時に女王からの念が返る。
「どうしたのです?、良いでしょう。
では、今夜22時に謁見室にて会いましょう」
短い返事だが的確に対処をしてくる。
しばらく時間がある。
肉と酒を食べるため上の階のパブへと向かう。