02
カイトがとある地下室である一点を見つめている。
その視線の先には椅子に縛り付けられた女が睨みつけてくる。
祭りの後、上手く自分にのぼせている女を安宿に誘い込むことにした。
地下にあるこの部屋に女を誘導し手刀を一撃お見舞いして気絶させて
から約20分後の事だ。
目覚めると、「あんた、私にこんな真似して良いと思っているの?」
悔しさに唇が歪み目が怒りに燃えあがっている。
「ほぉー、どうなるのか教えてくれよ」
そういうとカイトは唇の端をゆがめて笑う。
その言葉が女にとって火に油を注いだように感情がむき出しとなり叫ぶ。
「ただじゃおかないよ!、その首をかっ切ってやるから覚悟しな」
「どうするんだよ、そんな無様に縛られながら」
酒を飲みながら笑っていると、後ろからヒヤリとした感触が首にあたる。
いつの間に?
女が手に小刀を持ち背後から忍び寄っていた。
今さっきまで縛られていたはずだ。
目を離した時間はわずか10秒にも満たないだろう。
まるで瞬間移動したかのようだ。
「おまえ、魔術師か?」
「言っただろう? この首かっ切ってやろうか?」
そういうと、女が首をカイトの目の前まで回してくる。
不気味に血走った眼がぎらついている。
瞬間的に酒を女の目にぶっかけると、盛大に頭突きをかまし距離を取る。
しばらくうずくまると、しゃがんでいる女の気配が変わり始める。
体から湯気のようにオレンジ色の煙のようなモノが上がってきた。
「このクソガキ、私をとうとう怒らせたね」
じりじりと妖気を放ちながら、顔に皺が寄りはじめ一気に年老いて
行く女の姿は不気味以外の何者でもない。
カイトは後ずさりしながら、思考を巡らしている。
魔術師だったとは想定外だ。
しかもかなりの年齢に達した部類だ、古典的な力を使うだろう。
古い魔術は単純なようでいて強力に作用するものだ。