03
今年の夏、祭りが盛大に広場で執り行われた。
この日ばかりは、三重に分けられた人々も皆区別無く集まる。
この国の祭りの伝統衣装に身をかためた男女が交互にまざりあい並ぶ。
カーニバルに相応しい金管が最初の始まりを告げ響き渡った。
次々に金管が続き、太鼓が腹に振動し、地面を鳴らす。
弦楽器が陽気に旋律を歌い上げる。
女性は、海の色をおもわせた裾を丸く膨らませたベルルカというワンピースを着ている。
すこしとがった靴の先には金と銀の丸い飾りビジューがあり海に沈む太陽と月を連想させる。
また、男性は黒のズボンに白いシャツ、石灰色の薄い絹布を肩から纏っている。
男女は礼儀正しく礼をし、手を絡ませステップを踏み出す。
そして、まわる。
曲のテンポが早まると、つられて動きもあらくなり、足のステップがドンドン、カツコツと器用に踵と爪先で音を変え、鳴り響き打楽器と混じりあう。
投げるように女性を回したと思うと、次の男性が受け止めまた、繰り返される。
投げられた瞬間にふわりと宙に浮く反動で顔か緩み、笑顔を作りやすくなる。
それがまた相互に気安くなる。
傭兵の一人、すらりと伸びた立派な体躯をしたやや野性的な鋭い眼差しとは裏腹に紳士的なお辞儀をするカイト。
今日だけはいつも後ろに背負った大きな剣は、懐の小刀に変えてある。
この帝国の女は海に囲まれているせいか楽しく陽気だ、またほれっぽい。
「お兄さんと踊れて嬉しいわ」
と良く日に焼けた肌の女は足を絡み付ける。
「俺もだ、情熱的な女が好物でね」
と足をからみかえし背を後ろにそらせると、喉元に口づける。
たっぷりと見つめあい挑発しながら、ステップを交わしスカートを翻す。
この女を抱き寄せ、胸元に顔を埋める。
女はハッと顔色をかえるが、すでに胸元から細長く光る凶器を咥えられていた。
「色ボケしてるからだな」
カイトがニヤケ咥えた針のようなものを吹きとばす。
「巫女を狙ってるのか?」
女はきっと睨み付けた。
「どこからその情報を?」