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最強の武器は、絶対に盾だろ!  作者: 青春詭弁
第一章 盾使い、冒険者になる
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二話 盾使い、剣士と組む



 冒険者カードを手に入れ、ついに冒険者――最強の盾使いへの第一歩を踏み出した俺は、意気揚々とクエストボードを眺めていた。


「さてさて、早速クエストを〜」


 山賊から巻き上げた金は、登録料と手数料で飛んでいった。残りは宿代くらいしか残っていない。

 時間的に、遠出はできないが王都付近のクエストならば夕方までに帰れるだろう。

 クエストボードに張り出されている依頼で、Fランク冒険者の俺が受けられるのは……うへえ、しけたクエストしかないぞ!

 俺は受付カウンターのヴィオラに声をかける。


「おい、ヴィオラ。しけたクエストしかねえんだけど」

「え? ああ……Fランク冒険者のクエストですからね。ゲオルグさんを倒しちゃうような人なら、どれも微妙に見えるのは仕方ないと思います……」


 しかし、ヴィオラが言うにはFランクのクエストは、冒険者がなんたるかを知るには必要なクエストが揃っているそう。

 俺はとしては、こう凶悪なモンスターとの熱いバトルがしたかったのだが……。ヴィオラが言う通り、冒険者の基礎を知らないわけにも行かないだろう。

 大人しくFランクのクエストをこなして、冒険者というものを学ぶことにした。


「じゃあ、ヴィオラが俺に見合うクエストを見繕ってくれよ。探すの面倒臭え」

「ええ……斡旋する私の方が面倒なんですけど……。まあ、分かりました……。ちなみ、どんなクエストがいいですか? 採取系とか、討伐系とか……って言っても、Fランクだとこれくらいしかありませんね」

「あーそうだなあ……」


 討伐系のクエストがいいが、どうせ弱いモンスターの討伐だろう。あまり受けるメリットを感じない。採取系の簡単なクエストでも受けて、早く帰ろうかね。

 俺がどちらにしようか悩んでいると、


「ねえ、ひょっとしてあんた……今日冒険者になったばっかだったりするのかしら?」

「ん?」


 声をかけられて振り返ると、美女が目の前に立っていた。

 白銀の長い髪を揺らし、細身の体ながら出るところがしっかりと出ている――素晴らしいプロポーションの女だった。

 女は「あら、ごめんなさい」と口を開く。


「あたしはシロナ。実は、あたしも今日、冒険者になったばかりなのよ」

「へえ、そいつは奇遇だな。シロナの言う通り、俺も今日冒険者になったばっかりでな。おっと名乗るのが遅れたな。俺はグレイってんだ」

「グレイね。同期ってことは、あたし達ライバルってことね?」

「ん? まあ、そうなるか? 俺はなんでもいいんだが」


 そう答えると、シロナが美しい宝石が如き青い瞳をつまらなさそうに細めた。


「なによ、張り合いないわねー」

「そりゃあ、俺に張り合える相手なら張り合ってもいいんだが?」

「あら、それは喧嘩売ってるのかしら?」


 シロナは腰に携えている剣に、白い手を置いた。

 俺は肩を竦める。


「いや、あんたのこと知らねえから。馬鹿にしたみたいで悪かったな」

「以外に素直ね……まあ、確かにグレイの言う通りね。あたしもグレイのこと知らないし」

「それなら、お二人でクエストでも行かれたらどうですか?」


 俺とシロナの会話を傍らで聞いていたヴィオラが、そんなことを提案した。


「彼と? んー……どうしようかしら」

「俺は大歓迎だぜ? こんな美人と二人っきりでクエストなんざ、そうそう機会がないだろうからな!」

「うわあ……早速、身の危険を感じるわ!」

「万が一、手を出したらグレイさんの冒険者登録を消して警察に突き出しますよ?」

「マジ勘弁」


 ヴィオラに脅されたせいで、冗談でもシロナを襲えなくなった。

 ヴィオラは苦笑し、シロナは身の心配をしなくてもいいからか、安堵の息を漏らす。


「まあ、でも……あたしくらい美しいと我慢できなくて襲いたくなるかもしれないわね?」

「それな」

「ねえ、やっぱり身の危険を感じるわ!」

「グ・レ・イさん?」

「マジ勘弁」


 俺は平謝りしつつ、


「そんでどうするよ。クエスト行くか? 俺はどのみち行くつもりだけど」

「あーそうね……。王都近くの日帰りできるクエストならいいわよ。じゃないと、寝込みを襲われるかもしれないから」

「信用ねえなあ」

「信用される言動を取ってからいいなさいよね?」


 俺は肩を竦めた。


「ええっと……それじゃあ、クエストを斡旋するので少しお待ちください!」


 数分後。

 依頼書を手にしたヴィオラが小走りで戻ってきた。


「お待たせしましたー」

「全然待ってなんかないわよ。早かったわね」

「はい、お二人にぴったりなクエストがすぐに見つかりまして……」


 内容を聞くと、王都を出てすぐのところにある湖の水質調査だった。


「なんでも、ここ最近で水質汚染が進んでいるらしく……異常がないか調べてきていただきたいのです」

「水質汚染か……なあ、そういうのって専門家に行かせたりしねえのか?」

「馬鹿ね。専門家を向かわせるようなら、Fランクに回されないわよ。そういうレベルの高い汚染じゃないってことよね?」

「そうですね……本当に少し気になる程度なので。いずれは、専門家に調査させることになるでしょうけど」

「ふーん……」


 俺は納得して、口を開いた。


「んじゃまあ、早速行くか」

「そうね。じゃあ、行ってくるわ! ヴィオラ!」

「はい! お二人共…………シロナさんお気をつけて!」

「おい、なんだ今の悪意ある言い方は」


 だが、俺の抗議は虚しく宙に消えた。







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