エピローグ
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魔王軍の幹部アストレアを倒した俺とシロナのそれからというと――。
魔王軍の幹部を倒した功績で、ランクが一つだけ繰り上げられてDランクになった。この辺になると、今までよりも仕事が内容が複雑化して、ようやく冒険者らしくなってきた。
ちなみに、アストレアは王都の牢屋に放り込まれ、今は尋問でも受けているかもしれない。少なくても、吸血鬼である彼女は不死身であり、殺すことはできないそう……。
「アストレアのことだから、虎視眈々と脱走を企ててそうよね」
と、シロナが苦笑まじりに言った翌日。案の定、アストレアは牢屋から脱走して姿を眩ませた。
これに俺とシロナは乾いた笑みしか浮かべられない。
「さて、今日も仕事すっかな……」
「今日はダンジョンに行ってランクを上げるわよ!」
「お、そいつは悪かねえな……なあ、ヴィオラ」
「あの……いい加減、本当に自分達でやってくれませんか?」
いつもの如くヴィオラにお願いしようとすると、眉をピクピクとさせて怒りを露わにする。
俺は肩を竦めて、
いや、もうなんか……ヴィオラにやってもらうのが手っ取り早いんだよな」
「そうなのよね……。というか、控え目に言って、面倒なのよねー。自分で選ぶの」
「私の仕事が増えるのでやめてくれません!?」
そんな一悶着がありつつ……俺とシロナは変わらずSランク冒険者になるために、日々のクエストに精を出している。
今回の魔王軍幹部捕獲がきっかけとなり、俺とシロナの知名度はぐっと上がった。王都では言わすがな、別の街からやってきた冒険者にも知れ渡っている。
シロナはその綺麗な銀髪がシンボルとなり、俺は盾を背負っていることがシンボルに――お互い街中で勝負をふっかけられることが増えた。
「お前達が魔王軍幹部を倒したらしいな! 本当かどうか確かめさせてもらうぜ!」
たまに、そこそこ手強い相手もくるがリーチ大抵は弱く、肩慣らしにもならない。
最終的に欲求不満になったシロナが、俺に勝負をふっかけることは日常茶飯事で、王都ではすっかり馴染み深い光景になってしまっているそう……。
そんなこんなで、俺の……この盾が最強の武器であるという証明は、着々と進められている。順調でなによりだった。
「さあ、グレイ! 今日はDランクダンジョンよ!」
「魔王軍の幹部がいないといいな」
「なーに弱気なこと言ってんのよ! 魔王軍の幹部なんかちょちょいのちょいよ! あんたとあたしのコンビならね!」
「…………」
いつものシロナなら、「あたしなら余裕!」というところだが――コンビときた。
少しだけ嬉しいことを言ってくれる。
俺は鼻頭を掻きながら、
「だな……んじゃまあ、行くか」
「ええ!」
俺達は今日も冒険に出る。
始めは、ただ盾という武器を広めるために始めた冒険者だったけど――今では、冒険が楽しいと思ってやっている節がある。
それはきっと、シロナが俺の隣にいるからだろう。
そんなことを考えながら、俺はシロナの隣に並んで今日も冒険に出かけた。
本命のプロットが終わったので、こちらは駆け足ながらも締めようと思います。
少しでもお楽しみいただけたなら、幸いです。