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最強の武器は、絶対に盾だろ!  作者: 青春詭弁
第三章 盾使い、屠る
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二話 VSアストレア



 俺とシロナがアストレアに向かって駆け出すと、背後で控えていたモンスターの軍勢が動き出す。しかし、それをアストレアが手で制した。


「妾がやる!」

「なっ……姫様一人では行かせられません! 私もお供致します!」

「……貴様だけ許す」


 アストレアの後ろにダレオムが続き、走る俺達に向かって手のひらを向ける。


「『ファイアーボール』!」


 ダンジョンで見た火球よりも、ずっと大きな火球が俺達に向かって放たれる。

 シロナに目配せすると、察したシロナが俺の背中に隠れる。俺は盾を前方に構えて火球を受け止める。カウンターで威力を相殺すると、火球が爆ぜて一帯が火の海と化す。


「ひ、姫様の『ファイアーボール』をいとも容易く……!」

「小癪な……!」


 アストレアが次の魔法を放とうと魔力を練り始める。その頃には、アストレアとの距離が縮まり――シロナであれば、一瞬で詰められる間合いになった。

 その瞬間、背中に隠れたシロナが飛び出し、アストレアに接近する。瞬きの間に肉迫してきたシロナに、アストレアが目を白黒とさせる。


「もらった!」


 シロナは絶好のチャンスを逃すことなく、剣を振るう。だが、刃はアストレアの肉を断つ前に、剣で割り込まれて止められた。

 ダレオムだ。ダレオムが横から剣を割り込ませ、シロナの剣を止めたのだ。


「そう簡単に……姫様に手を出させません」

「くっ……!?」


 ダレオムは片腕の腕力だけでシロナを吹き飛ばす。

 シロナは器用に空中で身を捩り、華麗に地面へ着地した。


「アストレアの隣にいる男……! 結構強い!」

「あいつダレオムって言うみたいだぞ」

「ダレオム強い!」


 シロナに追いついた俺は、隣に並んでダレオムの名前を教えてやる。


「姫様……私、人間に褒められて嬉しいのですが」

「クビにするぞ……ええい! 喰らえ! 『ライトニング』!」


 と、見たことのない魔法がアストレアから放たれる。

 アストレアは手のひらから電撃を放つ。電撃は俺に向けられ――咄嗟に、盾で受けた。

 すると、アストレアが驚愕の声を上げる。


「ば、バカな!? 電気だぞ!? 普通感電するはず! どうやって盾で防いだのだ!?」

「いや、電気を地面に逃がしただけだけど」


 正直に答えると、アストレアとダレオムが首を傾げた。それから、なにか察した様子で頷き出す。


「よーし……分かった。どうやら、貴様は常識で考えても仕方ない相手らしいな……!」

「ここは私にお任せを……あの盾使いは、この私が……!」


 ダレオムは何か策があるのか、前に出てくる。シロナのけんを仮にも止めているのだ。一筋縄では行かないだろう。

 俺が油断なく構えていると、ダレオムが口を開いた。


「確かに、その神業……見事と言うしかありません。しかし、これならあなたでも電撃を受けきれないでしょう! 『アースバイト』!」

「おっ……」


 俺の立っていルナ地面が盛り上がったかと思うと――気づいたら俺の体が宙を飛んでいた。下で、「グレイ!」というシロナの叫び声が聞こえる。


「はっはっはっ! 地面に足が付いていない状態ならば、電撃は受け流せない! 姫様今です!」

「よくやったダレオム! 『ライトニング』!」


 アストレアは宙で無防備になっている俺に向かって、先ほど放った電撃を放つ。

 なるほど、確かに空中では地面に電撃を逃すことはできない。俺は迫りくる電撃を前に――盾をぽいっと宙に放り出した。

 すると、電撃は盾に直撃。盾を放り投げた俺は無傷で地面に着地する。


「あ、あああ!? あの男……! 盾を盾に!? いや、あ、あれ……? 盾は盾だから、盾を盾にするのは間違って……ないな……よな?」

「おいダレオム! くだらないことを言っていないでそこから逃げるのだ!」

「え? 姫さ――」


 次の瞬間、ダレオムの頭上に電撃を帯びた盾が落ちた。それにより、「あばばばばば!?」と感電したダレオムは、黒焦げになって地面に伏す。


「なっ……だ、ダレオム!」


 俺は盾を回収し、ダレオムの生存を確認する。

 いや、さすが魔族だな……。気絶しているだけで、まだ生きていた。

 さて、残るはアストレアのみ。ここで癇癪を起こして、モンスター達を動かされると面倒だが――プライドの高いアストレアは、歯噛みするだけでその素ぶりはない。


「くっ……よくもダレオムを!」

「あとはあんただけよ! アストレア!」


 シロナは剣先をアストレアに向ける。

 アストレアは下唇を噛んだ。


「ふんっ……! もとより妾が貴様らの相手をする予定だったのだ! ここからが……本番だ! いくぞ! 人間!」


 アストレアは、手のひらを俺達に向け、火球を連発。俺は盾で防ぎ、シロナは剣で両断する。

 これでは牽制にもならないと悟ったか、アストレアは魔法を打ち止め、爪を伸ばして接近戦を挑み掛かる。

 それにいち早く反応したシロナが飛び出し、アストレアと肉迫する。


「はああ!」

「せやああ!」


 それぞれ爪と剣を振るう。お互いの武器が衝突し、衝撃波が一帯を駆ける。そのまま鍔迫り合いとなるが、魔族と人間では身体能力に差がある。時間が経つにつれて、シロナが押され始める。


「くっ……!」

「ふはは!」


 アストレアは強引にシロナを押す。シロナの上体が仰け反り、体勢が大きく崩れる。そこに空かさず、アストレアの爪が襲いかかるが――勿論、俺がそれをさせるはずがない。

 二人の間に颯爽と割って入り、アストレアの攻撃を盾で受けようとするが、超速反応を示したアストレアが寸前で爪を止めて飛び退いた。


「カウンターを警戒したか……」

「ふんっ……厄介な奴め! だが、やはり攻撃をしなければ貴様は何もできないようだな!」

「そいつはどうかね」

「なに……?」


 俺の言葉にアストレアが怪訝な表情を浮かべる。


「へえ……なにか秘密兵器があるのね?」

「まあな」

「なら……今回はあんたに譲ってあげるから、さっさとやっつけちゃいなさい!」

「また上から目線だなあ……まあ、いいけど」


 シロナからもお許しが出たので、俺はそろそろ決着を付けてやろうとアストレアの前に立つ。

 アストレアは警戒した様子で、


「ふん……こちらから攻撃をしなければいいだけのこと……! 盾で妾を倒せるとでも?」

「お前はなにもわかっちゃいねえ。盾は、この世界で最強の武器だ。相手の攻撃を防げる上に、攻撃にも使える」

「攻撃……? 盾で攻撃だと?」

「ああ、リーチは短いし威力もないが……だが、俺なら威力をカバーできる。それこそが……俺が編み出した超必殺奥義――『シールドタックル』だ!」

「なっ……」


 俺は盾を前方に構え、アストレアに向かって突進した……!


「そんな見え見えの突進当たるわけ――って、速い!?」


 俺が予想以上に素早く迫ったからか、アストレアは驚愕の声を上げる。俺はその隙にアストレアにタックルをかます。

 盾がアストレアに衝突すると同時に、衝撃がそこに発生。瞬時に、体の中に衝撃を循環させてアストレアにぶつける。

 すると、アストレアの体が後方に大きく吹っ飛んだ。


「ぐはっ!?」


 アストレアは地面を数回バウンドしながら転がり、しばらくして滑りながら停止する。様子を確認すると、白目を剥いて気絶していた。

 それを知ったモンスターの軍勢は、大将がやられたからか尻尾を巻いて逃げて行き、冒険者達は唖然とした後――。


「お、おおおお!!」

「あいつやったぞ!」

「す、すげえぞ!」

「魔王軍の幹部をやりやがった!」


 こうして、王都に襲いかかった脅威は去ったのだった――!

 





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