ごっさ強い
俺は走る、ひたすらに走り続ける。後ろには大口を開けて迫ってくるキマリエルが居る。振り返らずに走るんだ俺!! 心なしか何時もより速く走れている気がする
後ろで爆発音がした後にキマリエルの絶叫が轟く。そこでやっと俺は後ろを振り返るが、
「何で追って来てんの⁉︎」
キマリエルは止まる事なく俺を追って来ていた。少しくらい止まってくれても……俺はまたも走る。そしてもう一度爆発音がすると後ろで終始鳴っていた足音が途絶えた
「イッセーノーで!」
俺は掛け声と共に振り返ると……口から血を大量に吐き出すキマリエルの姿が確認で出来た
「やった!」
「流石に、これだけ食らえば……」
キマリエルは、なおも立ち上がろうと藻搔いたが結局立ち上がる事は叶わず地面に伏せた。そして……目から生気が無くなり、ピクリとも動かなくなった
「……俺達の勝利だ!」
ありがとう母さん! 貴女のお陰だよ。異世界に来たのに全く魔法要素使わなかったけど勝ったよ!
手榴弾はとても高価なものである為、基本持って居る人は少ない。母は事業が成功し経済的チート状態になったので、俺達の手榴弾くらい渡せたのだ。
今度帰ったらお礼を言おうっと、シャンパン片手に巨大なガラス窓から街を見下ろす母を思い浮かべる。思えば異世界で一番エンジョイしてるの母だよなぁ
「お兄ちゃん……」
「ショウキ……」
「後ろだ」
「……ん?」
俺は油断していた。キマリエルは1匹ではないのだ。そう群で行動するのだ
俺はゆっくりと後ろを振り返る。そこには、先程倒したモノもり更に大きい個体が……
「大丈夫?」
死を覚悟した瞬間、目の前のキマリエルが真っ二つに裂けた。何が起きた?
「君たち凄いね、1匹仕留めたんだね。今年の新人は良い子が入ったな」
そこには金髪のイケメンが立っていた。ニコニコしており、優しそうな感じだ
「君達は第7連隊か」
何故分かったかと言うと、各連隊ごとにバッチが違うからだ。俺が付けているバッチと金髪のイケメンのバッチは一緒。つまり……
「僕の所だね」
という事だ。この人は恐らく第7連隊のルネナイトだろう。ごっさ強い
「さっきの女の子2人も強かったけど……あの子達は仕留られなかったからね。君たちの方が上なのかな」
姉はキマリエルを倒せなかったらしい。これは姉に誇れるのでは? というか、あの2人をナチュラルに女の子扱い。仕方ないわな……初見で男だとは思えないし。いや、姉は男じゃない、女だった
「アル、早くしろ」
「あ、ラル。分かったよ」
金髪のイケメンに良く似ているが、どこか冷たい印象の銀髪のイケメンがやって来た。この2人は、もしかして双子なのだろうか?
「じゃあね」
それだけ言うと、銀髪イケメンと金髪イケメンは去っていった。何者なのだろうか?
「さっきの銀髪の方が第7連隊の連隊長【ラルトゥール=ヴィンクラー】で金髪の方が双子の弟【アルトゥール=ヴィンクラー】よ」
「マジで⁉︎」
いつの間にか復活していたアンナさんが教えてくれた。この世界はエマヌエル然り、さっきの隊長然り、めちゃくちゃ言い難い名前多いな……
「あ、霧が晴れて来た。これで帰れるね」
レイキの言う通り霧が晴れ、辺りの景色がキマリエル出現前に戻った。これで帰れる
「さぁ、帰りましょう」
「「「「はい」」」」
アンナさんの言葉に俺達は揃えて答えた。
ゲート前に着くとシーツを掛けられた人が横たわっていた。これは……
「今回、新人が何人か亡くなったのよ……」
亡くなった人を見て認識させられる。コレは現実で遊びではない事を……異世界へ来て少し浮かれていたのかもしれない。此処は現実で何が起こるか分からない。そんな世界なのだ。気を引き締めていかなければ自分に待っているのは死なのだ
傷口が急に痛んだ。そうだ、痛いんだ。そう、自分は生きているーー
無事に軍の本部に帰って来た俺達は、アンナさんにこれから住む寮に案内された。
「此処が貴方達の部屋よ」
「おぉーー!」
部屋の扉は自動ドアらしい。シュンっという音がして扉が開き俺達は中に入る。内装は、入って正面にテレビが有りソファがある。入って直ぐの所には簡易キッチンとお風呂とトイレか。そして……
「部屋はどれが良い?」
部屋の中に部屋(?)があった。二段ベッドの様な形の部屋が左右に1つずつ。計4部屋。
俺は左手側の扉を開けて中を確認すると、ベッドとパソコン、少しのスペースが有った。
「じゃあ、わ……僕はココ」
少しテンションの上がったアナトリーが入って右手に有る1階の小部屋に入り、その上の階にボルハ。左手に有る1階の小部屋はレイキが入ってからハッと思った
「俺も、この部屋なんですか?」
「……? えぇ。そうよ」
え? 俺以外、全員女性なんですが……
「全員男なんでしょ? 大丈夫よ」
確かにレイキとアナトリーは男装中だが……ボルハは男装してないぞ?
「それより、何か忘れてるっと思ってたんだけど……今、思い出した」
アンナさんが急に話を変えて来た。
「エマヌエルとオウキ忘れて来たわ」
……えっ⁉︎