大事な局面で大事な物を失くした
レイキの防御が有る今、奴の攻撃など怖くはない! なので正々堂々と正面から突っ込む。
目を見開く魔人王。それもその筈、今まで俺はずっと魔人王の背後から斬りかかり攻撃していたのに、急に真正面から堂々と攻撃してくるとは思わないだろう
「おらっ!」
なんども斬り合う俺と魔人王。レイキは後ろから魔法を撃ち、俺が攻撃を受けそうになったら結界を張り守ってくれている
味方がいるのって頼もしいな……
遠くでゴンゴンと音が聞こえてくる。イノ坊もまだ終わっていない様だ。流石、勇者(笑)
『少しはやるようだな……まぁ、少しだがな』
レイキの防御が張られるより先に魔人王の蹴りが腹部辺りに入る。そしてメリメリと嫌な音を立てる俺の肋骨。絶対、折れた
「だから何で毎回、肋なんだよ」
毎回、肋骨折ってばっかりだな……
「ごめんなさい! 間に合わなくて!」
「大丈夫だよ」
肋骨を折りすぎた所為か、肋骨の痛みには慣れているので問題ない。悲しい慣れだな……
俺は肋骨の痛みと戦いながら、目の前の魔人王と斬り合いを続ける。先程よりも、格段にスピードの落ちた俺だが、なんとか食らいついていける。
「そろそろ、決めさしてもらう!」
肋骨が痛くて早く終わらせたい。俺はそんな思いで早期決着を望む
『ならば、消えよ』
魔人王が、ものゴツい威力の光線を出して来た。それは俺の遥か後方まで抉る威力の光線だった
「あぶねー」
俺は間一髪で避けていたがレイキは諸に食らった。しかし、水の結界がレイキを守り無事だった。よかった……
「流石にアレはヤバイ」
視界の隅がチカッとした。そして脳が警鐘を鳴らす。俺はほぼ反射で次の光線を避けた
「連発出来るのかよ……」
魔人王は光線を連発して撃ってくる。俺は避けるのに忙しくて近づく事さえ出来ない。このままでは、いつかは俺の体力が尽きて、あの物凄い光線をくらう事になる。なんとかせねば……
不意に光線が止まった。驚いて魔人王を見れば……
『ぐっ』
レイキの水の結界に囚われていたのだ。
「やっと捕まえた!」
どうやら、レイキは魔人王が一箇所に留まってくれるのを待っていたらしい。
魔人王は光線を放つ為、ずっと同じ場所に立っていた。なので、レイキは魔人王を結界に閉じ込める事に成功した様だ
『小賢しわ!』
大声を上げ、結界を破ろうと力を込める魔人王だったが、レイキの結界を破る事が出来ず藻搔いていた。ここに来て、やっと魔人王の余裕の表情が剥がれた。いい気味である
「お兄ちゃん! お兄ちゃんが攻撃する場所だけ開けるから、トドメをさして!」
レイキの悲痛な声が聞こえてきた。レイキの方を見れば、かなり苦しい表情を浮かべるレイキが確認できた。やはり、レイキでも魔人王を捕らえ続ける事は困難な様だ
俺は1つ頷き、
「皆んなの仇だ」
姉から貰った刀を魔人王の胸部に突き刺す。
[この宝剣で心臓を刺せ。そうすれば終わる]
そして、ヌンツィオの言葉を思い出すが……あの短剣どこやったけ?
「お兄ちゃん?」
レイキの苦しげな声が聞こえてくる。
「レイキ……その辺に短剣というか、宝剣というか、そんな感じの短い剣が落ちてない?」
大事な局面で大事な物を失くした俺。これはヤバイ!
「ないよ……」
レイキを振り返れば汗だくで呼吸も浅い。これは、これ以上の結界の維持は困難であると推測出来る
「宝剣……」
どこやった? 思い出せ……そう、ヌンツィオに宝剣貰って、城が崩壊して……生き埋めになって……脱出した時、俺は手に短剣を持っていただろか?
「まさか、置いてきた?」
なんてこった! 俺は何処から這い出て来た? 何処らへんに置いて来た?
「ヤバイ……」
非常にヤバイ。レイキは、もう限界でこれ以上の維持は不可能。なのに大事な短剣は瓦礫の下だ。終わった……
「はぁ……最後まで締まらない奴だな……」
魔人王が話し掛けて来たが、それ所ではないのだ。急いで探さなくては!
「もう、いい。自分でやる」
「は?」
そう言い魔人王は突き刺さっていた俺の刀を深々と奥まで差し込んだ
『ぐふっ⁉︎ 貴様、生きていたのか! そんな馬鹿な』
「ふっ……俺を舐めるなよ。アンタは俺を殺したつもりだろうが、俺はキチンと生きてるっ!!」
『ぐおぉぉぉ……』
なんだか面白い光景が広がっている。魔人王が1人コントしているよ。コレはアレか。良い魔人王が悪い魔人王を「これ以上、罪のない人を殺すのは辞めて!」って止めてる感じかな?
「違うよ、お兄ちゃん! 連隊長だよ!」
「あ、成る程」
そういう事ね




