子泣き爺の如く
魔人王は俺に手を伸ばしてくる。これは首を掴んで締め様としているのだろうか? あまりに近い為、走っても逃げられないだろう
俺は思わず、持っていた刃が砕けた刀を振り魔人王の手を振り払うつもりが……
『なっ……』
なんと魔人王の手が消えた。いや、消えたのではない、斬り落としたのだ。
「え……刀が戻ってる」
そう、砕かれた筈の刃が元に戻っていたのだ。いつの間に……
「……姉の力か」
確か姉が、この刀には自身の力と斬った者の力を奪う能力があると言っていた。姉の力があるという事は傷ついた箇所や砕けた箇所が自動的に治る仕組みだという事だろう
「なんて便利な……」
これなら刃こぼれしても問題ないな……
『彼奴め……面倒な物を残してくれたな……』
魔人王は俺から少し距離をとり、腕の回復に専念していた。流石、姉の力だ。もう腕の殆どが再生している
「よし!」
俺は再度、魔人王に仕掛ける。そして何度も撃ち合い、何度も押し合い、刃を交え続けるが、やはり魔人王。一筋縄ではいかない
「クソッ」
何か打開策はないものだろうか?
『ほら、どうした?』
魔人王は魔法を撃ち攻撃してくる。それを回避しつつ、何かないかと考えていると……
「なっ⁉︎」
『だいたい、お前の動きは読めた。残念だったな」
回避の為、逃げた先に魔人王が待ち伏せしていた。まさかの事態だ。
「……ぐっふ」
逃げ場を無くした俺に魔人王は容赦なく剣を振り下ろす。俺の左肩から右脇腹まで斬られた俺は血を吹き出し、その場に倒れた……斬られた傷が深すぎて、恐らくだが臓物とかも出てるかもしれない
『残念だったな』
魔人王が俺を見下ろし笑っている。やはり、勝てなかった……すまない皆んな
「あぁ……」
イノ坊が倒れるのが見えた。どうやらアチラは初代魔人王の体が勝ったらしい。こっちも惨敗だし、あっちも負けだし……勇者でも魔王は倒せないんだな……
『さらばだ童』
だから童じゃないって……
俺の喉元目掛けて剣の切っ先を振り下ろしす魔人王が視界に映る。負けたな……結局、俺も帰り損ねたよ。
俺は目を閉じて衝撃を待った
「お兄ちゃん!」
ガンっという音が俺に届いた。そして次に居る筈のないレイキの声が聞こえてくる。
「お兄ちゃん、しっかりして!」
レイキの泣きそうな声が聞こえてきて、俺は目を開ける。すると目の前にレイキが居て驚いた。
「な……んで?」
グッタリと倒れている俺にしがみ付く様に揺するレイキ。痛い、痛い。それ痛い
「もう! 何で1人で行ったのよ!」
イノ坊と一緒に来たので別に1人で来た訳ではないのだが、言うと怒られそうなので黙っておく。
「私だって戦える! もう、お兄ちゃんにだけ背負わせたりしないんだから!」
そう言いレイキは剣を持ち立ち上がる。そして、少し離れた所で面白そうにコチラを見ていた魔人王に切っ先を向けて
「ここからは私が相手です!」
っと言い出した。
ダメだ。レイキでは勝ち目はない。逃げろ!
そう言いたくても上手く声が出せず、何を言っているか分からない。そうこうしているうちにレイキは魔人王に向かって行ってしまった。
ーー俺にもっと力があればな……ーー
俺はもう限界らしく、視界が黒く染まっていく。せめて妹だけでも逃したい所だが……もう、ダメみたいだ
俺は目を閉じて死を受け入れたが
『情け無い。それでも男か? 足掻きなよ! 足掻いて、這い蹲ってでも生きて帰りなよ! じゃないと、化けて出てやるからね!! 夜な夜な枕元で子泣き爺いの如くエンエン泣いてやるから』
ハッと俺は目を開けた。
「姉?」
姉の声がしたのだ。というか、死んだら夜な夜な出てくるも何も無いんだが……この言い回しは、確実に姉だ
「……?」
関心していると体の傷が綺麗に無くなっている事に気がついた。それは、姉のあの力と同じ……やはり姉が治してくれたのか? でも、どうやって?
考えるのは後だ。今はレイキを助けなければ……いや、レイキと共闘して魔人王を倒さなければ!
「レイキ!」
「お兄ちゃん⁉︎」
『……』
俺はレイキに駆け寄る。レイキは結構ボロボロになっていたが、なんとか持ちこたえている様だ。
「何で?」
「分からない。でも、今はコッチに専念しよう。考えるのは後!」
俺とレイキは魔人王に武器を向ける。それを魔人王は愉快そうに眺めた後、
『人間とは学習せん生き物だな……何度やっても同じだというのに』
冷めた声で言ってきた。なので言ってやった
「分からないだろ? 俺1人では無理でも、誰かと一緒なら出来るかもしれないだろ?」




