歯がヤバイ……
大きく口を開けたキマリエルは俺を喰らわんとしている。俺は慌ててしゃがみ込み岩と岩の間に滑り込むと、追って来たキマリエルだったが流石に岩場の隙間に口が入らないのか、間一髪齧られる事は無かった。
「歯がヤバイ……」
俺の眼前には巨大な歯がある。
俺を狙うキマリエルは岩を退かそうと犬が穴を掘る様な仕草で岩をガリガリと削り岩場に口を突っ込んでくるので、俺は匍匐前進で岩と岩の間を突き進む。その途中で手を怪我して血が出て来たが構ってられない。俺は夢中で突き進んだ
岩場から脱出した先にはアンナさんがおり、俺が大勢を整えるまでの間、キマリエルを足止めしてくれていたが……
「グッ⁉︎」
「アンナさん!」
キマリエルの攻撃をモロに食らったアンナさんは遠くに吹き飛ばされて見えなくなってしまった。それを見たレイキとアナトリーが動かなくなってしまう。このままではマズイ……
横薙ぎに振り払われたキマリエルの手から2人を守る為、俺は2人の前に出たが、その俺の前にボルハが出てきた。そして俺を背中で押してキマリエルから距離を取らせる
もう、誰が誰を庇っているのか分からない
俺の前に出たボルハはキマリエルの攻撃を一瞬だけ止める事に成功するが……力が強かったのはキマリエルの方だったようで後方に吹っ飛ばされた
「ボルハ!! ……うぉ⁉︎」
声を上げた俺をキマリエルは引っ掴み上に持ち上げる。そしてキマリエルは俺を食らおうと口を大きく開ける。目の前には巨大な歯……
「……あぁ……」
ーーもうダメだっと思った、その時ーー
手が何かに当たった。それは出発前に母からもらったウエストバッグだ。確か……
〜〜〜〜〜〜
『困った時に使いなさい。良い? 本当に困った時によ! 最終兵器なんだから』
っとバスローブ着てワイングラスを片手に持ったリッチスタイルの母が渡して着たのだ。
『麗亀と翔麒はコレ。凰姫はコッチ」
『ありがとう! お母さん!』
『大事に使うよ』
『あの……母さん? 私のだけ何だかヌイグルミみたいに見えるんだけど……2人はウエストバッグなのに私だけヌイグルミなんだけど!アハハ、お母さんの間違いかな? おちょこちょいだな、もー!』
『それじゃ行ってらっしゃい』
『聞けーー!!!』
〜〜〜〜〜〜
っという事が有ったのだ。俺はウエストバッグをキチンと付けて着ていた筈だ! ウエストバッグを開けて中は……手榴弾が3つ。これ最終兵器? 倒せるの?
「えーい! ままよ!!」
俺は手榴弾のピンを抜き大口を開けているキマリエルの口に手榴弾を投げ入れる!
「おぉ⁉︎」
キマリエルの体内で手榴弾は爆発。流石に体内で爆発されればキツイらしく俺を投げ捨て、辺りをのたうち回る。投げ捨てられた俺は受け身を取る事が出来ないので、そのまま地面と『こんにちは』かと思いきや、誰かに受け止めてられた
「おぉ……ボルハ。無事だったのか」
「あぁ、大事ない」
「いや、大事だよ。お前、血だらけなんだけど!」
血だらけのボルハだった。俺はボルハの胸に顔からダイブしたらしく、フニュっとした感触が顔を襲う。
場違いだが俺は感動した。何故なら、ボルハに胸が有ったからだ。胸が有る! ちゃんと女だったんだ! 他は硬いけど……
変態みたいにだが、別に変な意味はないぞ。ただ、少し本当に女なのか疑っていたというか……
「お兄ちゃん!」
「おぉ! いも……弟よ! 大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
あぶね。一瞬、妹っと言いそうになった。因みに「弟よ!」は姉の真似である。
「それよりどうする?」
「どうするとは?」
妹に怪我が無いか確認している俺にボルハが問うて来る。
「アレ、こちらを見ているぞ」
「……え?」
のたうち回っていたキマリエルが起き上がり、こちらを怒りの篭った目で見て来る。コレは……
「お兄ちゃん! わ、僕の手榴弾も有る。何とか口の中に!」
「そうだな!」
俺の手榴弾は残り2つ、レイキは3つ、計5つ。大丈夫だろう
俺は深呼吸し3人に言う
「俺が囮になるから、お前ら手榴弾を口に投げてくれ」