ヌンツィオ
攻撃を続けるイノ坊であったが、付けた傷も直ぐに治る魔人王に随分と苦戦している様だ。だいたい、ラスボスに回復能力が備わってる事、自体間違っている。こればっかりは姉を恨む
「何とか隙が出来ればな……」
目の前で繰り広げられる壮絶な戦いに割って入る事など出来やしない。しかし、何とかして隙を作り相手の意表を突いた攻撃をしなければイノ坊に勝ち目はないだろう
「この怪我も治るんか……」
イノ坊が魔人王の腹部を尻尾で貫いたが、魔人王は何処吹く風。直ぐに傷は治り、ダメージを与えられない
「前に姉が腹部に風穴開けられても、直ぐに立ち上がって歩いていた……やっぱり、あの程度の傷は直ぐに治るのか」
普通の人にとっては重傷でも、姉にとっては直ぐに治る傷でしかなかったわけだ。その姉の力を取り込んだ魔人王も、また然りだ。
「やっぱり倒すには心臓か首か頭かだな」
しかし、姉は自身の体を燃やせば幼い姿で復活を遂げていた筈だ。ならば、この魔人王も体を燃やせば復活するのでは?
「魔法封じの薬が要るな……」
しかし、アレは貴重なんだとか。
「この〜!!」
魔人王の傷は治っていくが、イノ坊に付けられた傷は治らない。お互い互角の様に見える戦いだが、イノ坊の方が不利なのは火を見るよりも明らかだ
「ぐっ! こんチクショ……」
イノ坊が吹き飛ばされた。
『ははっ。これで終わりか勇者よ。残念だよ』
魔人王は右手を掲げる。すると、ドス黒い球体が出来上がる。それは魔人が、よく使うエネルギー玉みたいなやつである。アレを喰らえば流石のイノ坊もヤバイだろう。それをイノ坊も分かっているのか起き上がり、態勢を立て直そうと頑張っている
しかし、俺はこの時を待っていた。何故なら、この技を使うのに大抵の魔人は集中が必要らしく隙が出来るから! そう、魔人王にだって隙が出来る……筈だ。出来るよね?
兎に角、俺は走った。我武者羅に走って……走って、そして……
ーー心臓に刃をーー
手には肉を絶った感触がして、『グシャ』っという音も聞こえた。しかし、俺が刺したのは……
「ヌンツィオ?」
ヌンツィオだった。俺が魔人王の背後から心臓部を刺そうと突っ込んだ瞬間に、俺と魔人王の間にヌンツィオが滑り込んで来たのだ。そして、俺の刃は魔人王に届かず、手前に滑り込んできたヌンツィオに突き刺さった
『ふん。余計な事を』
そう言った魔人王に態勢を立て直したイノ坊が襲いかかる。そして、また凄まじい攻防を始めた
俺はヌンツィオに刃が突き刺さったまま動けないでいる
「何で……」
ヌンツィオに問いかけると
「一応、家臣なんでな」
っと笑って答えてくれた。
「冗談だよ。今、殺られたら計画が台無しでな……後、少し待て。奴が全力を出せる様になれば……そこで殺せば奴は永久に消える。今殺したら別の体に逃げられる。力が馴染み出られなくなってから殺せ」
俺の耳元に寄って、ヌンツィオは言う。そして、俺に綺麗な短剣を渡して
「この宝剣で心臓を刺せ。そうすれば終わる。簡単な事ではないが、お前にしか頼めないんだ。ラルトゥールさんを解放してやってくれ。頼んだぞ」
それだけ言うとヌンツィオは燐光を上げて消えて行った。
「ヌンツィオ……」
姉の次はヌンツィオか……結局、全員逝ってしまった。カティル、エマヌエル、姉、ヌンツィオ、彼らは何を思い何の為に裏切り、戦ったのか最後まで教えてくれる事はなかった。
「ホント、自分勝手な奴ら」
何も言わずに消えて行くなんて、ホントに……
『さぁ、遊びは終わりだ人間共よ! そして勇者! 我の力は漸くこの体に馴染んだ。よって、真の力を見せてやろう』
人が感傷に浸っている時に、魔人王は容赦なく真の力とやらを見せてくれた。少しくらい、時間くれよ!
「な……なんや! これ!」
地面が揺れ、城の天井が崩れ始める。俺は慌てて防御魔法を使い瓦礫の下敷きにならない様にする
暫くして揺れが収まると、
『見よ、人間よ! これが我の力だーー!!』
魔人王の大声が聞こえてきた。俺は頑張って瓦礫から脱出すると……あら、不思議。かつて500メートルくらいあったイノ坊より少し大きいくらいの魔人が出現していた
『これでお前達人間を狩り尽くしてやろう』
その魔人の口から何らかの光線が発射され、俺達の砦付近、つまり総本部あたりが攻撃された




