頂上決戦
『来たか』
俺の深呼吸が終わる前に堂々と扉を開けてしまったイノ坊。
「おう! 来ったで! 自分のおかげで儂は異世界から遥々、勇者として召喚されてもたんや! 自分を倒しておウチに帰る!」
扉を潜ると広い王の間だった。奥に有る玉座に悠々と座る魔人王。その魔人王に向かってイノ坊は吠える
『ふん。獣畜生に我が倒せるものか』
足を組み、肘を付いて俺達を見下ろす魔人王。かなり余裕と見た
「唯の獣や思たらアカンで! 喋れるし、踊れるし、歌える獣やで!」
「うん。それ、どれも要らない機能だな」
戦いに全く関係ない機能が備わっているようだ。本当に勝てるのか?
『ならば、見せてみよ。我を倒せる程の力があるかを!』
魔人王は立ち上がり、辺りに魔力を放出しだす。それは地震を起こし、風を吹かせ、空には雲が出て雷が鳴り始める。なんて力だ……
「前の比じゃない」
そう、前の魔人王の比ではない。やはり、あの魔人王は老いていたのか!
「……魔人王、聞きたい事が有る」
『……なんだ? 言ってみよ。興が乗ったら答えてやっても良いぞ』
この話し方は完璧に元連隊長のものではない。やはり元連隊長は乗っ取られたのか……
「アンタは連隊長……ラルトゥールさんではないよな? 体を乗っ取ったのか?」
俺の問いに魔人王は面白そうに笑い
『然り。コレの意識を殺して、体を奪ったのだ』
やはり、そうだったのか……ならば、アルトゥールさんは取り込まれたので間違いないだろう。
『コレの体は失敗かと思っておったが……人間に産ませるのも悪くはないな』
言い終わると魔人王は剣を取り出して俺達に向ける。前回の魔人王戦では剣など使って来なかったが、今回の体になって使う様だ。
『我を倒してみよ。勇者ならばな!』
剣を一振り振るだけで尋常ではない衝撃波が俺達を襲う。
「ぐっ⁉︎」
俺は、その衝撃波で真後ろに飛ばされて壁に激突したが、イノ坊はその巨体と体重で踏ん張っていたらしく飛ばされる事はなかった
「やっぱり凄いな。でも、儂も負けとらん!」
イノ坊からも凄まじい魔力を感じる。そして、みるみると形が変わって行き、かつて見た二階建てくらいの大きさの姿に変身した
「おぉー。全盛期の頃の姿じゃないか!」
あのアルトゥールさんやエマヌエルを瀕死に追いやった例の姿だ。これなら勝てるのではないか?
『面白い! 面白いぞ!』
目の前で魔人王vs巨大イノ坊の戦いが始まる。
「俺は応援という事で……」
俺が来た意味は?
「……⁉︎ それは……自分、狡いわ。それ、オウキのねーちゃんの力やんけ」
っとイノ坊が口にする。姉の力?
「マジか……傷が直ぐに治ってる」
イノ坊が付けた傷がみるみるうちに治る。それは姉の持っていた力の筈……
『奴を喰ったからな……可愛がってやったというとに、命令を無視して戦いおって』
そういえば、カティルが「もう、喰われた」っと言っていた気がする。そして、燐光を上げて消えて行ったのだ……姉もカティルとエマヌエルと同じく燐光を上げて消えて行ったのだから、既に喰われていたのだろう。
奴は喰った者の力が使えるのか?
「まぁ、強ち間違ってへんけども……コイツはねーちゃん達を取り込んだんや。せやから、ねーちゃんの力が使えるねんよ」
取り込んだのか……だから、姉達は魔人王従っていたのだろうか? 取り込まれた者を強制的に従わせる何かがあるとか……まぁ、取り込まれたんだから従うわな
「だったら、エマヌエルの毒を中和する能力も有るのか……」
ならば、俺の刀は通用しないな……今回、俺は役に立たないだろうから、イノ坊に頑張ってもらわねば
「おらーー!! 儂の根性なめるなよ!」
イノ坊が動く度に地面が揺れる。それをものともせずに魔人王はイノ坊に攻撃を仕掛ける。まさに頂上決戦だ
「何、ボサッとしとるねん!! しっかり働きや!」
魔人王と勇者(笑)の戦いを観戦していると、怒声が飛んで来たので参戦しようとしたが……
「入れないよ……」
イノ坊が、こうも暴れていては入るに入れないというものだ
「とったで!」
『甘い! この程度、直ぐに治るわ!』
何度も攻撃を仕掛けるイノ坊だったが、魔人王の傷の治りが予想以上に早い為、大分苦戦している様だ




