大切な家族を傷付けない為に
side 凰姫
私の胸に突き刺さる刃。それを刺した張本人である弟は今にも泣きそうな顔をしていた。
ーー男だろう? そんな顔をするなよーー
そう思ったが口には出さず微笑むだけにした……
ある日……月食の日に家族でラーメンを食べに山道を車で走っていた。家族と駄弁り、とても楽しい気持ちだった。
そんな折、突如として猪に追突され崖に車が転がり落ちた。私は落ちる途中で車から投げ出され、地面に叩きつけられた。とても痛かった。だが奇跡的に生きていた。
家族の安否を確認する為、起き上がろうとしたが骨が折れているのだろうか? 痛くて動けなかった。
ふと、空を見上げると大きな眼が有った。それは金環日食が有った場所、つまり太陽が有る場所だ。そこが大きな赤い眼になっていたのだ
その眼と私の目が有った。眼は私を見据えて笑う様に細めた後、消えてなくなった。眼が消えると同時に暗かった辺りは、明るくなり辺りが見え始める。痛みと格闘しながら必死で起き上がると、何故か体の痛みが消えた
「……?」
不思議に思い、手に有った打ち傷を眺めると、それがみるみる治って行くのが分かった。
「……っ⁉︎」
何が起きたか、何が有ったか分からないが治ったのだ。恐ろしくなり、縋る為に共に落ちた家族を探した。
「おい! 弟! 妹! お母さん! お父さん! 生きてる⁉︎ 死んでたら返事して!」
「死んでたら、返事出来るか⁉︎ こんな事が有ったのに呑気か⁉︎」
「お、弟ー!」
私は心底安堵した。よかった生きていたっと
それから、妹を先に救出し、猪を発見し、母に怒られた。怒られている途中で皆んなの傷が治っていない事に気付く。治ったのは私だけ……自身が異常な事に気づいた
結局、家族に打ち明ける事が出来ず、しかし不安を悟られぬ様に努めて明るく振る舞った。そう、誰にも悟られぬ様に……
そして、ここが異世界である事を知った時はまた安堵した。これは異常ではなくなんらかの能力なのだろうと考えて悩む事を辞めた。しかし、空に有った眼の事が気になる為、能力の次はそちらで悩む事に。もしかしたら帰るヒントが有るかもと思い情報を集め始めたが、何も出てこない
軍に入る事が決まり、軍の学校にある資料室で本を読み漁り、眼の事について探った。しかし、ここでも何も出て来なかった
「日食の事ばかり調べて……何を見たんだい?」
ある日、いつもの様に本や資料を読み漁っていると、光の加減で何色にも見える珍しい髪を持った、綺麗なアルト声の女が現れた。
「何って……」
「空に眼でも浮かんでいたかい?」
「……⁉︎」
その子は眼の事を知っていた。問いただすと
「僕からは何も言えないな……ラルさんに聞いてみるといいよ」
「付いてきて」という彼女に従い着いて行く途中で、
「君、女の子だろう?」
そう言われた。私は更に驚いたが誤魔化す為、戯けて見せた。しかし
「舐めないでね。噂で聞いた時は同族かな? っと思ったけど、見てみると全然違う。流石に普段から【男の娘】やってる奴は騙せないよ」
衝撃の事実を知る。彼女ではなく彼だったのか!
衝撃から立ち直れず呆然としていた私を、彼は手を繋ぎ連行していく。
「着いたよ」
そこは、学校の応接室だった。中に入ると、ものごっついイケメンが2人居た。脳内のテンションがマックスまで上がって踊りかけたが、なんとか堪えた
「眼を見たんだね」
金色のイケメンに話しかけられたので素直に頷く。すると彼らは私に眼の正体を教えてくれた。それは
「あれは魔人王の【眼】だ。天眼と言い、偶にあれで世界を見ているんだ」
「その眼と目が合ってしまった者は呪われるんだ。決して消えない呪いだよ」
その呪いが全身に広がれば、魂は汚れ自身の意思で動く事が出来なくなり魔人王の意のままに動く傀儡と化すらしい。
「呪いを解く手伝いをしてやるし、情報もやる。だから、お前は俺に尽くせ。そうすれば、お前は助かる」
呪いから逃れる為、私はアルトゥールという男に尽くす事を決めた。いつか、この呪いが全身に広がり傀儡となり、大切な家族を傷付けない為に……




