凰姫
エマヌエルを倒し俺達は先に進む。暫く進むとエレガントな雰囲気の広場らしき場所に出た。
「来たのはやっぱりエルじゃなかったか……」
そこには姉が佇んでいた。エマヌエルの言った通りだ
「エマは消えたんだね」
「あぁ……」
「そっか」
姉は目を伏せたが直ぐに目を開けて俺達を見据えて言う
「ならば私が相手をします。エマヌエル亡き今、ここを守れるのは私のみ。王からは側に居るようにと言われていますが、その命令に背き全力で貴方がたのお相手をします」
姉が刀を2本構える。姉はカッコつけたのか二刀流だ
「いや、俺だけで相手をする。レイキには悪いけど引いてもらう」
「お兄ちゃん……」
心配気に見守るレイキ。大丈夫だ、お前には姉殺しは背負わせないよ。意を汲み取ってくれたのか他のメンバーは頷くだけで口出しはしてこなかった。
「ショウキ……いいでしょう。来なさい!」
その言葉を聞き終わると同時に姉は俺に向かって攻撃を仕掛けてきた。俺はそれに応戦する。姉には砦勤務時に鍛えられていたので、どういう動きをするのかは大体分かっている。しかし、やはり姉は強い。
「ぐっ!」
俺は腹に蹴りをくらい唸るが、動きを止める事なく応戦し続ける。姉はきっと迷い無く俺に攻撃してくる。レイキにだってそうだ。だから、倒さねばならない
「【絶望の……っ⁉︎ 何を!」
姉が炎系魔法の【絶望の炎】を放つ寸前で俺は持っていた薬を姉に投げつける。薬の入った容器は先が尖っており、体に刺さる仕組みになっている。なので刺されば自動的に体内に薬が流れていくのだ
「……魔法が……エル? 今はそんな薬渡せない筈。そうか、エマヌエルめ。あの時、ヌイグルミに仕込んだな!」
あの時が、どの時かは分からないが、やはりエマヌエルは姉の許可なくヌイグルミに薬を仕込んでいたらしい。
「可笑しいと思ったんだ。あの時、ちょっと目を離したらヌイグルミの縫い目が可笑しくなってたし! 問いただしても『何もしてない』の一点張りだし! 何もしてなくないじゃん! してたじゃん!」
エマヌエルにブチ切れる姉。姉の怒った顔を始めてみたよ
「仕方ない……魔法抜きで行こう」
姉は気を取り直したのか、もう一度仕掛けて来た。俺はそれに必死で応戦する。
姉が俺の攻撃を避けた拍子に少し刀が姉の右手に掠った。
「……⁉︎」
掠った場所から徐々に黒く壊死していく右手に姉は驚き、慌てて自らの腕を切り落として俺から距離を取った。
「これは?」
直ぐに元に戻る姉の右腕。流石の能力である
「ウリノーム・ペルグランデの毒。お前が唯一効くやつだろ?」
「まさか……」
姉は驚愕の表情を浮かべた後、目を閉じて肩を竦める。直ぐに目を開け、俺を見据えて姉は言う
「感心したよ。まさか、あの毒をまた食らう事になるなんて……」
そして姉は刀の正体を教えてくれた。この刀は姉の力と斬ったモノの力を奪い取る力があるらしい。なのでウリノーム・ペルグランデの毒腺を貫いたから毒の力を奪い取ったのだろう。毒を奪い取ったあの蛇は大丈夫なのだろうか?
「私の力も入ってる。だから壊れても治る」
「マジか!」
この刀凄かったのか! だから姉は俺に渡すのを渋ったのか……
「まぁ、食らわなければ良いし。続きと行きましょうか!」
俺達は只管斬り合う。刃を交えながら姉の顔を伺うが何を考えているのか、まったく分からない。
いつもそうだ。妹であるレイキの考えている事は大体分かったが姉の考える事は分からなかった。しかし、姉はそんな俺の事などはお見通しだったのだろう。嫌な事が有り、1人で居たい時には1人にしてくれたし、誰かに居てほしい時は何かの理由を付けて一緒に居てくれた。
「なんで、裏切ったんだ?」
俺は刃を交えた状態で、喉から絞り出す様に声を出し姉に問う。その問いに姉は微笑むだけで答えてなどくれない。
いつもそうだ。肝心な事は何も教えてくれないのだ
「帰るんじゃなかったのか! どうして俺達を傷付けた!」
今度は大声で姉に怒鳴った。しかし、姉は微笑むだけで答えてはくれない
本当に何も答えてはくれない……
「うおぉぉぉおおお!!」
何も答えてくれない姉に怒りが湧く。怒りのままに刀を弾くと姉の刀は遥か遠くに飛んで行った
驚いた表情を浮かべる姉に……無防備になった姉に最大のスピードで突っ込んだ。
「……」
俺の刃は姉の胸に深々と突き刺さった。これで毒は姉の体内に入り、きっと助からない。
「オウキ……」
喉から泣きそうな声が出てきた。それを聞いた姉は、やはり優しく微笑むだけで何も言ってはくれなかった……




