エマヌエル
「エル、良い加減になさい! 幼気な子を傷つけて何が楽しの! 貴方、そんな子じゃなかったでしょ! 自分を取り戻しなさい」
ロザリーがエマヌエルを注意したが
「貴方は僕達とあまり行動しなかったから分からなかっただろうけど、僕は本来こういう性格だよ?」
聞く耳持たない。姉が『エマは酷い性格してる』っと言っていた意味が最近になって分かったよ……
「そんな事……」
「連隊長達は知ってたよ? だからカティル達に止められてたけど……もう居ないし俺の自由だよ。それに王様は好きにしても良いって言ってたしね」
カティルと戦った時にも思った事だが、エマヌエルも魔人王と元連隊長を分けて話している。そういえばロザリーさんが『連隊長は何かに取り憑かれたみたいに……』って言っていた気がする。まさか、元連隊長は魔人王に取り憑かれた? ならば何故、姉達は魔人王に付き従っているのか?
「さぁ、遊びは終わり。此処からは本気で来ないと死んじゃうよ?」
そう言いエマヌエルはまた突っ込んでくる。それを俺とロザリーさんで防ぎながら、反撃の機会を伺う。
イノ坊とアンナさん、レイキが攻撃を仕掛け、そちらにエマヌエルの気が向いた瞬間に俺は彼に一太刀入れた
「よっし!!」
俺の刃には毒が有る。なので一撃でも喰らってくれれば、命を奪えるのだ。しかし、エマヌエルは動きを止める事なく俺達を攻撃し続けた。どうなってる?
確かめる事も出来ず、俺達は必死にエマヌエルと戦うしかなかった
エマヌエルはカティルの様に手加減などしてくれない。なのでコチラは押されて気味だ。1対5なのにもかかわらず、押されるってどういう事だよ
「あかん。あの子、魔人になって強なっとる」
勇者(笑)であるイノ坊も苦戦を強いられるくらい強いエマヌエル。確か、エマヌエルよりカティルの方が強いと姉が言っていたが……カティルが、どれだけ手加減してくれたか分かる。本気なら勝てなかった相手だろう
「お兄ちゃん……」
「これ、マズイわよね」
レイキとアンナさんは息が上がり、ロザリーさんは自慢のモヒカンがヘタっている。まともに動けるのは俺とイノ坊しか残っていない
「毒効かないとか……」
俺がボソッと呟くとエマヌエルは笑顔でこう言った
「僕、薬の調合得意だから、解毒剤は作れるし。魔人になったら体の中で勝手にそれが出来る様になってね。体が勝手に解毒剤を作っちゃった」
なん……だと……。そんな性能を持っているのか。
「ほなら、肉弾戦で勝つ他ないな」
「そうだね。けど……君たちに倒せるかな?」
「倒せるさ!」
こんどはコチラから仕掛ける事に、イノ坊と俺が応戦し、レイキとアンナさんには魔法で遠距離から攻撃してもらう事に。しかし、細かな傷は負わせらるるが大きな傷にはならず、コチラが消耗していくだけだった
「……ちょっと飽きてきたから、もう良いや」
そう言ったエマヌエルは、いつぞやの魔人が放っていた様なドス黒く大きな球体を作り出す。
「アレは喰ろたらアカンで! 一気に全滅や!」
「レイキ!」
俺はレイキに頼み結界を張ってもらう。そしてエマヌエルは大きな黒い球体を俺達目掛けて投げた。
辺りに轟音が響き、岩々は崩れ、大きなクレーターが出来ていたが、やはりレイキの結界は絶対防御らしくヒビ1つ入る事はなかった。
辺りを土煙が舞い、俺は完全にエマヌエルを見失っていた。慌てて探したが見つからない。
「クソッ!」
目の前の土煙が不規則に動いたっと思った瞬間、エマヌエルが飛び出して来た。俺の胸部目掛けて剣を構えて突っ込んで来たが、背後からイノ坊の尻尾に腹部を貫かれ動きを止めた。呆然としていた俺の真横からロザリーさんが出てきてエマヌエルの胸部を刃が貫く。
ハッとした俺も自らの刀でエマヌエルの心臓部付近を刺した。
「ぐふ……1対5は流石に無理かな」
エマヌエルはそう言い、剣を落とした。そして地面に膝を付くと、俺に微笑む。それは今までの恐ろしい笑顔ではなく俺がよく見た綺麗な笑顔であった
「おめでとう。君の勝ちだ」
エマヌエルの体から淡い燐光が出始める。それは彼の消滅を意味するものだ
「この先にオウキが居るよ。逢いに行くと言い。オウキは王様から力を貰ってないから人間だった頃のままの強さだ。だから君1人でも勝てるだろう」
エマヌエルは奥を指差して俺に告げる。
「オウキは君の持つ毒が唯一効くものだ。それと、あの薬さえあれば勝てるだろう。どうか解放してやって。もう見てられないんだ」
「待ってくれ! もっと聞きたいことが!」
「やだ。僕からは、これでお終い。後は、ヌンツィオかオウキに聞いてよ
彼は綺麗に微笑むと立ち上がり、先程指差した場所を見つめて……
「悪いけど2番抜けだ。怒らないでね」
そう言うとエマヌエルは消えてしまった。辺りには燐光が残ったが、それも直ぐに消えてしまう
カティルに続きエマヌエルまで消えた……だが、悲しむのは後だ。今は進まなければならない




