ゴリラだ
俺達が任務に失敗した日の深夜から魔人との戦いが始まった。初めに仕掛けて来たのは、痺れを切らした魔人側の方で、それに応戦する様に人間側も動いた。
戦いは苛烈を増して、人間側も魔人側もどんどん犠牲者が増えて行った。魔人側は持ちうる限りのモンスターを導入し、人間側は兵器の数々を使用。均衡を保っている様に見えたが、人間側の消耗が大きく、このままでは押される事になるだろう
「攻めるわよ」
このままでは攻められかねないっと判断した上層部によりロザリーさん、俺、レイキ、アンナさん、イノ坊の4人と1匹で奇襲作戦を決行する様に御達しが来た。この前に失敗し連隊長が犠牲となった、あの通路を使えと上から指示が有った為、少数精鋭であそこを突破して魔人の防御を崩す作戦だ
「行けるんですか?」
アンナさんがロザリーに問うと
「行けるか、行けないかではなくて、行かないといけないのよ」
ロザリーさんは険しい顔で俺達を見据えて言う。
戦いは1週間続いており、魔人よりも体力も魔力も少ない人間では、そう長くは保たない。これ以上、戦い続けるのは厳しいと判断した為、早期決着を望まなければならない。なので俺達は行かないといけないのだ
「私達が要よ。私達が中から崩せば前線も大きく動く」
もし、失敗すればこれ以上の犠牲は出せない軍は撤退するだろう。そして、体制を立て直しもう一度挑もうとしても、魔人王が死に消耗していた魔人側も体制を立て直しているだろう。魔人達が万全の状態になってしまえば、コチラに勝つ術など無い
そして、人間側の負けが確定し、また魔人は地上に野放しだ
「行くわよ」
だから俺達は絶対に成功しなければならないのだ……
暗くて見通しの悪い道を只管進む俺達。一番前はロザリーさんで最後尾は俺だ。無言で警戒しなから先に進む俺達のすぐ近くで『グルルル』っという声が聞こえて来た
「近いわね」
ロザリーさんが立ち止まり、態勢を低くして辺りを警戒している。それに伴い俺達も歩みを止め、岩陰に隠れて様子を伺う
ロザリーさんが手招きしてくるので、そちらに行き、岩陰からロザリーさんに倣ってモンスターの様子を伺うと、1匹だけコチラに背を向ける形で立っていた
「気付いてない」
俺がそう言うと、ロザリーさんは首を縦に振り
「居るのは分かっているけど、正確な位置が分からないのでしょう。だから探してるのよ」
見た感じ1匹で周りには岩陰も無い為、他に隠れてはいないだろうと思い奇襲を仕掛ける事に。背後からロザリーさんが斬りかかり、振り返った所を俺とレイキが目を狙い魔法を撃つ。見事に両目を潰す事に成功した後、アンナさんとロザリーさんで足を切り落とす。なす術なく崩れるモンスターに、元の姿に戻ったイノ坊がトドメをさした。
「ふぅ……」
他にモンスターは居ないらしく、大きい音を立てたにやかかわらず近づいてくる気配はない
「もしかしたら、ここに居たモンスターは前衛に出されたのかもしれないわね」
ロザリーさんは辺りを見回しながら言った。そこに……
「そうそう。みんな外に行っちゃっててね。此処にはいないんだよ」
「エマヌエル……」
俺達の前にエマヌエルが降り立った。
「此処は本来モンスター用の通路なんだけど……見ての通り今は外で戦闘中だよ」
エマヌエルが言っている事が正しければ、これは好機だ。
「モンスターはいないけど代わりに僕が見張りをしていてね。入って来た敵は僕の自由にして良いって」
エマヌエルが怪しく笑う。この笑い方は新連隊長を殺った時と同じ笑い方だ。
「ひっ」
横に居たレイキが悲鳴をあげて俺にしがみつく。そして、ガタガタ震え出した
「可愛いね。オウキに、そんな態度取られたことないから新鮮だよ。アイツはいつも甚振って殺す俺を冷めた目で見ていただけだからね……」
レイキの態度を見たエマヌエルは更に笑みを深めて言う
「怯えて震える生き物を見ると……ボロボロにしたくなるよね」
その言葉を言い終わるとエマヌエルから強烈な殺気が飛んできた。カティルとえらい違いだ
「いつもはカティルに止められてセーブしていたけど……アイツはもう居ないし、俺の好きにしても誰も何も言わないよ!」
カティルが俺達に向かって突っ込んできた。それを俺は受け止めて、反撃しようとしたが予想以上に力が強く吹き飛ばされる事となった。
転がり慌てて起き上がるとレイキに剣を振り下ろす寸前だった。それをロザリーさんが割って入り、イノ坊が尻尾で攻撃。それをエマヌエルは軽々と避けて俺達と距離を取った
「ホント、力強っ……」
かつて姉がエマヌエルはゴリラだとか言っていたが間違ってない。本当にゴリラだった




