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人魔戦争

 

 ロザリーさんと別れた後、俺は自室に戻る。そして、ベットに横になり天井を見上げて姉の事を考える。


 姉は裏切った。戻って来るように説得しても、姉は人を殺しすぎている為、どの道【死罪】は免れないだろう。だから、戻って来る筈がない


「カティルは消えた……後、4人」


 アルトゥールさんは既に居ないらしいので、残りは前連隊長のラルトゥールさんと姉、エマヌエル、ヌンツィオの4名。どの人も強く一筋縄では行かないだろう。


「本当、なんで裏切るかな……」


 元の世界に帰るんじゃなかったのかよ……


 俺は視界に映ったヌイグルミを抱き上げて顔の前に持ってくる。そして、それを暫く眺める


 姉はこのヌイグルミを渡した時点で裏切る気満々だったのだろう。だから、俺に託したのか? 遣る瀬無くなった俺はヌイグルミを壁に向かって投げつけた。こんな物!!


「……?」


 ヌイグルミが壁に打つかると『ガンッ』という音を立てた。普通、柔らかいヌイグルミを壁にぶつけても、そんな音はしない筈……何か入ってるのか?

 俺はヌイグルミを拾い上げ、隅から隅まで調べると背中の縫い目の部分がちょっと荒い事に気が付いた。


「1回開けたのか?」


 気になった俺はハサミを取り出し、背中の縫い目の部分の糸を切っていく。全て切り終え中を覗くと……


「なんだコレ?」


 中から頑丈そうな小瓶が出てきた。中には何らかの液体が入っている。更にヌイグルミを漁ると紙が出てきた。そこには……


『コレは魔法封じの薬さ。大事に使いなよ byエマヌエル』


 っと書いてあった。エマヌエルから? 姉のヌイグルミの中からエマヌエルの贈り物が出てきた。謎である


「コレで誰の魔法を封じるのさ……」


 連隊長か? それとも姉?


「あぁ……姉か……」


 姉は自身を燃やせば幼い姿で蘇るのだった。なら、この魔法封じの薬で魔法を封じて燃やせなくすれば、蘇れない。ほぼ不死の姉を殺す方法をエマヌエルは俺に託したのだろう。


「複雑……」


 そのエマヌエルも裏切ってるんだが……取り敢えず、薬の信憑性を確かめるべく科学者の元にでも行こうか





 結果は本物だった。科学者の人には珍しい物らしく譲ってくれと言われたが姉を唯一倒せる物だ。簡単に手放せないので拒否して自室に戻った。


「えらい複雑な顔しとるな。どないしたん?」


 自室に戻った俺をイノ坊が出迎えてくれた。トコトコと歩いてくる様は可愛らしいが、本性を知っている俺は騙されない。コイツは100キロを超える巨体の持ち主なのだ!


「いや……姉を倒す方法が見つかって……」

「ほか。なら、迷いなや」


 そう言い、イノは俺の肩に飛び乗った。


「分かってるよ」


 そう、分かってる。姉が決して戻って来ない事も、もう2度と姉が元の世界に戻れない事も、姉が消える事も……何故だか知らないが、俺は分かっているのだ


「だから、覚悟は決めてるよ」


俺は姉が置いていったペンダントを首から下げて、それを撫でた。






 それから日は経ち、魔人の討伐戦線が展開される事となった。魔人達もコレに気付き構えている事だろう。なので戦争となる事が予想されている


「人魔戦争」


 かつては一方的に蹂躙されて終わった人間側も、ここ数十年で大分力を付け戦える様になった。同じ過ちは繰り返さない。そう誰かが言っていた


「何故、儂が出なければならんのだ! これも、あの憎きラルトゥールの所為だ! だから、初めから儂にしとけば良かったのだ! おい、お前達。全力で儂を守れよ!」


 新連隊長が俺たちに当たり散らす。この第7連隊は前連隊長の尻拭いの為、最前線に駆り出された。なので新連隊長も最前線へ。

 自分だけ安全な場所で待機しようとしていたらしいが、上から現場に居なければ指揮が下がると言われて渋々出てきたらしい。


「正直、邪魔よね」


 アナトリーが俺に耳打ちしてきたので、俺は黙って肩を竦めるだけにしておいた。


「おい! ショウキ! 儂の私兵なら全力で守れ!」


 俺はいつの間に私兵になっていたのだろうか? 頷いた覚えはないのかだが……


「いつの間に?」


 俺は近くのアンナさんに小声で尋ねると、


「あの人の中では、そうなってるんでしょ? 人は皆、儂の下僕だ! って感じで」


 っと小声で返してくれた。儂の下僕って……


「聞いているのか⁉︎」

「はぁ……」


 もう、どうにでもなれ……

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