敵将討ち取ったりー!
「おぉー」
感嘆の声を上げる姉、怯えて俺にしがみ付く妹。姉よ! だからなんでお前はそんなに冷静なんだ! アレに襲われてたのお前だろう⁉︎
「【メンダシウム・ラビット】だね。アレは肉食で危ないんだ。何でも、可愛い見た目に惑わされ近づいて来た獲物をパクッというエグい生き物なんだよ」
「そうなんだね」
姉とエマヌエルは呑気に話しているが、敵はこちらに気付いたらしく一直線に突っ込んでくる。それを俺と妹、アナトリーは全力で避けて、姉とエマヌエル、ボルハとアンナさんは華麗に飛んで躱した。
近くに転がる俺、胸あたりを押さえて驚愕の表情を浮かべる妹、座り込んで口を開けているアナトリー、華麗に着地するエマヌエル、ボルハ、アンナ、そして着地に失敗してコケた姉。ベシャっという音が響いた
「取り敢えず、腕試しよ。アレは弱いから簡単に倒せるし……2人で1匹。ヨーイ、ドン!」
転がる俺達を放置しアンナさんは無情にもスタートを切ってしまった。2人で1匹、アレ倒せるのか⁉︎
気がつくと周りには他の隊の新人達であろう人達が同じ敵を狩っていた。皆、チュートリアルの途中らしい
「ライ○ーキック!!」
他の新人達を見ていると、謎の掛け声と共に姉がメンダシウム・ラビットに飛び蹴りを食らわせるのが横目で確認出来た。それは置いておき俺は目の前の敵に集中する事にする
「相手の動きをよく見て! 次の動作を予想しながら戦いなさい」
動きを見ても喰われるっという予想しか出来ない。
「動きを見ながら一瞬の隙を突いて!」
隙⁉︎ 隙なんてものないのだが……近くにいるレイキがジッとウサギを見つめている。何か分かったのだろうか?
「あのウサギ……攻撃してきたら、次に行動を移すまで時間が掛かるよ」
「成る程!」
俺とは違い妹はしっかりと敵を見ていたらしい。弱点なのか分からないが隙なのには違いない。そこを突こう。
「敵将討ち取ったりー!」
「オウキ。これ敵将なの?」
「良いの気分、気分」
っと遠くから聴こえて来たが無視する。姉は、もう倒したのか……
近くに居たアナトリーとボルハも終わっているらしい。後は俺達はだけだ。
妹を危ない目に合わせる訳にはいかない。なので俺が何とかしないといけないと思い、腰の剣をやっと抜く。そして敵が大きな口を開け、こちらに飛び掛かって来たのを寸前で避け、体勢を崩して動けていない敵に向かって剣を下ろす。妹も俺に続き、俺と反対から剣を叩き付けた。
呆気なくメンダシウム・ラビットは地面に倒れ動かなくなった。案外弱かったな……
「成る程ね……なかなか動けるじゃない!」
アンナさんに褒められた。初めてにしては動けているらしい。
「ボルハは問題なし……アナトリーはもう少し頑張って」
「はーい……」
何でもアナトリーは逃げるのにいっぱいで攻撃出来てなかったらしい。なので仕留めたのはボルハだそうだ。流石、ボルハ!
「オウキとエマヌエルは問題なしね。寧ろ良く動けてた。初陣なのに凄いわ」
「「うーい」」
アンナさんは姉とエマヌエルを絶賛する。その後、2人は手を合わせて謎の掛け声を言い合った。
「仲良いな……」
「そのようだな」
アンナとボルハが手を取り合う2人を見て感心していた
「やっぱり同族だから親近感でも湧くのか?」
「うーむ……」
「いや……親近感……どうだろう」
アンナとボルハが本気で悩んでいる横で呆れた目で姉達を見ていると若干声の硬いレイキに声をかけられた
「お兄ちゃん……」
「何だ?」
どうした? 怖くなったのか? お兄ちゃんに任せなさい!
「何か変だよ。辺りに霧が……」
「霧? あれ、本当だ」
さっきまで、この辺りに霧なんて出ていなかったのにも関わらず、近くに居た他の隊の新人達が見えなくなるくらいに濃い霧が出始めた。
それを見たアンナさんが無線で本部に現状連絡すると
『……ジ……ッ……ジ。聴こ……そ……ルが……』
無線が入ったが、ノイズが走り上手く聞こえない。再度アンナさんが呼びかける
「こちらドラゴネッティ! 何を言っているの⁉︎」
『……ジ……ッ……にげ……そこに【キマリエル】が!!』
「ぎゃぁぁあぁぁあああ!!!」
「「「……⁉︎」」」
無線の音が聞こえたと同時に近くで人の断末魔が響いた