裏切り
『 繰り返します。【ラルトゥール=ヴィンクラー】【アルトゥール= ヴィンクラー】【ヌンツィオ=ジニア】【カティル=レオタール】【エマヌエル = エリクション】【オウキ=シズイ】計6人が……裏切りました』
俺は頭の中が真っ白になった。裏切った? 姉達が?
通信では姉達が裏切り、被害が莫大になった。撤退するっと言う内容が流れている。本当に寝返ったのか? そして仲間を攻撃しているのか?
「嘘……でしょ? だって魔人に付いたって何も良い事ないし……魔人は人なんて下等種族だと思ってるのに、態々そっちに付かなくても……」
アナトリーが声を震わせながら信じられないのか否定の言葉を紡ぐが放送から聴こえてくる内容が、それを否定する。
『負傷者多数! 撤退の為、直ちに行動を取って下さい!』
その放送を聞き俺達は動かねばならなくなった。俺は急いで中に入り戦闘を続けている魔人達と交戦する
それは、やむ終えず撤退する時に使う戦法。俺達外に居た面々が中に入り、中に居る突入部隊が撤退出来るまでの時間を稼ぐ為だ
「お姉ちゃん……」
隣に居るレイキはかなり不安気で今にも泣き出しそうだ。俺も泣きそうだよ……
近くて大猪になり戦うイノ坊を見ると唐突に思った
「イノ坊……お前、姉がこうなるって知ってたな」
「……」
俺の問いにイノ坊は答えなかった。それが答えだ
「なんで……」
「あのネーちゃんの覚悟に水差す気無かっただけや」
それだけ言うとイノ坊は黙った。それを見た俺は湧いてくる怒りを抑え魔人と戦った。
戦って居る内に俺達は城の奥まで来てしまった。そこには何故か髪の伸びた連隊長と姉、エマヌエルにヌンツィオ、カティルが居た。アルトゥールさんは居ない様だ。
皆、一様に赤黒いオーラを身に纏い、肌には黒いタトゥーが入っている……コレは……
「魔人の印」
「何で姉にあるんだ」
「お姉ちゃん」
そう昨日見た黒いタトゥーは魔人の印だったのだ。
「何でだ? 姉……なんで、そんな事」
『つまらなかったから……』
それが姉の理由らしい。何でそんな理由で寝返ったりしたんだ!
『早く始末しろ』
『了解しました王よ』
姉達4人は躊躇する事無く斬り掛かって来た。本当に躊躇が無い。下手すれば殺させる。
「お姉ちゃん!」
縋る様な声で姉を呼ぶレイキ。しかし姉は不敵に微笑み、戸惑う事も躊躇する事も無く動揺で上手く動けていないレイキの胸部を……
ーー貫いたーー
「お……ねぇ、ちゃん?」
そう貫いたのだ。何の躊躇も見せずに姉は妹の胸部を刺し貫いた!
「レイキ?」
姉が刀を抜くとレイキは床に倒れ動かなくなった。その様子を見たアナトリーとボルハが動揺し、動きが鈍くなった隙に姉は2人も胸部を刺し貫く
崩れる2人を呆然と眺めるだけの俺だったが……アンナさんは切り替えてオウキと交戦し出した。しかし、オウキの方が強かったらしく直ぐにカタが付いてしまった。姉がアンナさんの右腹部から左肩まで斬り裂いて……
「何ボサッとしとるねん! 早、動かんか!」
ヌンツィオとエマヌエルと交戦中のイノ坊に叱咤され、漸く理解出来た。姉が俺の大切な者達を傷付けたのだと……
「ッッッ!! オウキィィイイイ!!!!」
俺は絶叫を上げて姉に斬り掛かる。否、もう姉なんなどではない。アレは凰姫だ
無我夢中で斬りかかり攻撃を続けるが怒りに身を任せて冷静さを無くした俺にオウキが倒せる訳もなく……数度打ち合った後、俺の腹部を貫き、そして胸辺りを斬り裂かれ崩れ落ちた。
「姉さん……」
血を大量に流し床に倒れた俺を冷たい目で見下ろすオウキ。優しい姉はそんな目で俺を見た事などない。俺は縋る様にオウキに手を伸ばしたが、その手はオウキに届く事はなかった。オウキは俺に興味を無くしたらしく他の場所に向かってしまう。その様子を薄れ行く意識の中見届ける
勝手に涙が溢れて来た……




