勇者(笑)
勝てる! そう確信した瞬間に猪は大きな羽を広げて羽ばたき出した。
「逃げる気か⁉︎」
皆は慌てて羽を撃ち、飛び立つのを阻止しようとしたが、羽は何で出来てるのか攻撃を一切受け付けなかった。そして猪は空に浮かび上がり、逃げる事なく……
「うおーーー!!」
第2砦の頭上から落下して来た。それにより第2砦の2/3は押し潰され、再起不能に陥った。
「あぶねー」
猪が落ちてくる前に姉を抱えて、その場から逃げた俺は無事だったが、少し離れた場所に居たレイキは崩れた瓦礫の下敷きだ。
レイキには魔人王ですら傷付ける事が叶わなかった水の結界が有る。なので、無事だと思うが…… いや、流石にあの質量が上から落ちて来たら、どうなるのだろう……
「レ、レイキ!」
慌てて叫ぶと「大丈夫!」と声が聞こえて来たので良かった。レイキが無事だという事は、他の逃げ遅れた人も無事なのだろう。
猪め……本当になんて力技で来るんだ!
猪は第2砦に突っ込んでいる状態なので、他の砦は同士討ちを避ける為、攻撃が出来ないでいる。下手すれば俺達に当たるからね。
そんな猪はゆっくりと身を起こし、俺を見つけると
『大きくなり過ぎて飛べない……』
項垂れながら言った。知るかーー!! さっきのは攻撃ではなくて飛ぶのに失敗して落ちたのか⁉︎
「ご利用は計画的にだろ! 何でココまで大きくなったんだ! それの所為だろ!」
『いや……大きい方が強いと思って……』
この猪、案外マヌケである。確かに大きいと強そうに見えるが、弊害出まくりだろう!
「やれやれ、おお騒がせな猪だね……小さくなれないの? こう、風船の空気を抜くみたいに」
『加減がな……』
「やってみなよ!」
姉が猪に小さくなる様に助言している。なに敵に助言してるの⁉︎
『こ、こうか?』
プシューっと音を立てて空気が抜けていく様に縮んで行く猪。マジで縮めたんだ……
「おい、小さくなられたら倒せないだろ⁉︎ アルトゥールさんやエマヌエルがどうな目にあったのか忘れたのか!」
「あ、」
「あーもう!」
そうこう言ってる内に小さくなっていく猪。どんどん、どんどん、どんどん、どんどん……
「……あれ?」
掌サイズにまで小さくなりました……
「いや……すまん、すまん! 加減をミスって小さくなり過ぎてしもた!」
場所は変わって連隊長室。
あの後、掌サイズになってしまった猪を摘んで連隊長に突き出すと溜息を吐き、全員に撤収を命じた。そして、砦等々の片付けもそこそこに、一足先に俺とレイキ、姉は連隊長室に来るように命令を受けたので猪連れて連隊長室に来たのだ。そして、上記の発言である
「儂は勇者やねん! 選ばれた勇者な! 魔人王を撃ち倒す為に召喚された勇者なんです!」
空気が抜けて掌サイズになった猪はデフォルメされた猪の様で可愛い。しかし、鋭利な尻尾と羽は現在である
「勇者って……」
「はぁ……後はお前達の好きにしろ」
連隊長に追い出され、俺とレイキと姉と猪は一先ず俺の部屋で話す事に
「お前、勇者なんだろ?」
「おん、そうやで!」
この猪、何故か関西弁なのだが……
「じゃあ、俺らは?」
「儂の手違いで連れて来てもた」
え? 俺達は手違いなのか? これ手違い系だったのか?
「ねぇ、【勇者(笑)】」
「何やそれ!儂の名前か⁉︎ イヤやそんなん!」
「……我儘だな。んじゃ、【イノ坊】で!」
姉が瓜坊と猪を混ぜた名前を勝手に付けた。
「イノ坊か……いいなぁ」
猪は気に入ったのかコレからはイノ坊になった。良いのか? こんな適当な名前で
「イノ坊さん。魔人王はもう倒したよ?」
「……」
今まで黙っていたレイキが魔人王の事をイノ坊に教えた。その言葉を聞いたイノ坊は動きを止め、プルプルと震えだし
「何ーー⁉︎ そんな筈あらへん! 儂の感覚はまだ魔人王は生きとる言うてる! この辺りに居るねん!」
絶叫した。
「いや……この前、攻めて来られて倒したよ」
俺の言葉に絶句した表情を浮かべるイノ坊。
「なんでや……そんな筈は……」
っとブツブツと言っているイノ坊に姉が衝撃の事実を告げる
「魔人王は死んでないよ」
「ホンマか!」
「「えっ?」」
マジで?




