初陣
俺のニヤけ顔を姉が素早く携帯を構えてパシャっと写真を撮ってきた。
「おい!」
「あ、エル! 一緒の隊で嬉しいよ!」
「やぁ、オウキ。僕もだよ」
「「うー!」」
「話を聞けーー!!」
怒鳴ったが姉はスルーして、今やって来た【エマヌエル = エリクション】っという一見、女に見える男の元に行く。姉は、その男と手を取り合い謎の掛け声を2人合わせて出す。
その男の見た目は、光の加減で何色にも見える長い髪に、女性の隊服、可愛い顔、綺麗なアルト声。完璧に男の娘である。しかし、高身長で俺より高い
同じ男の娘設定の為か、この2人は学校時代から何かと仲が良いのだ。よく一緒に居るのを見かけた
「あ、来てたんだ。僕達が最後か」
「そのようだな」
後、2人来た。1人は【アナトリー = ジリツォフ】。コイツも妹と一緒で男装女子。周りにバレバレだがバレてないと思っているらしい。一人称は僕だが、偶に私になる
そして、もう1人が【ボルハ=カステド】。女性の筈だが高身長で筋肉がムキムキの筋骨隆々。声も低く、顔がとても厳つく、全く女に見えない女だ。何処か「ユアッシャー」的な奴に出てきそうな風貌である。女の軍服を着ているが……うん。何も言わないでおく
この2人とは軍の学校で馴染めなかった俺とレイキと仲良くしてくれた良い奴だ。そんな奴らと一緒の隊なのはとても嬉しい。
しかし……皆、性別と違う格好をしている。そこが、とても気になる。いや……ボルハは問題なかった。
以上がこの隊の新入りである。軍の規律はそこまで厳しくないので性別と違う格好をしていても、とやかく言われる事はない
「揃った?」
皆んなでワイワイと話していると、とても綺麗なお姉さんがやってきたので俺達は姿勢を正し、敬礼を取る
「宜しい。私は【アンナ=マリア = ドラゴネッティ】。貴方達の教育係よ。基本、私の指示に従ってもらいます」
アンナさんが俺達の教育係らしい。教育係って何だか良い響きだ……
「これから貴方達は第7連隊に配属されます」
この軍隊は10個の連隊からなる組織で、その1つである第7連隊に俺達は配属された。
「これから、施設を案内するから付いてきて」
アンナさんが施設を隅々まで教えてくれた。施設内は結構充実しており、共同図書館や第7連隊の食堂、娯楽室などが有った。
アンナさんは最後に第7連隊のロビーに俺達を連れてきて
「此処で任務を受注します」
カウンターからの任務受注のやり方を教えてくれた。
この軍隊は基本は自分で任務を選ぶ事が出来るらしい。なので自分が受けたい時に受けたい任務を受ける事ができるのだ。
任務受注カウンターには受付嬢がおり、面倒な手続きをしてくれる全てしてくれる為、選ぶ以外はする事はない
「さぁて、腕試しよ。今から私と共に任務に出発しますよ!」
今回は始めてという事でアンナさん付きで簡単な任務に赴く事に。ゲームで言う始めのチュートリアルの様なモノだろうか。
「初陣だね、お兄ちゃん」
カウンターで任務を受注し終え、出陣ゲートまでの道すがら妹が話し掛けてきた。
「だなぁ。ちょっとドキドキするよ」
「ちょっとなんだ……私はちょっと所じゃないよ」
「大丈夫か?」
「うん。お兄ちゃんが付いてるし」
俺はハートを撃ち抜かれた。俺の妹はこんなに可愛い……聞いた? お兄ちゃんが付いてるだってさぁ!
……妹は可愛い。なのに何故、姉はあぁなのだろう
「緊張する?」
「するよー。もう、吐きそうなくらい!」
「コラコラ。吐きそうとか言っちゃダメだよ」
姉とエマヌエルの会話である。妹の様に可愛くしろとは言わないが、もう少し何とかならないだろうか? 吐きそうは無いだろう
他の2人は緊張からかだんまりだ
「此処が出陣ゲートよ。此処を超えたら敵地だから、皆、気を引き締めて行くわよ!」
出陣ゲートは各地にあるワープゾーンにワープ出来るらしい。なので、わざわざ潜水艦を使い陸に上がらなくても此処から各地、行きたい地区に飛べるという事だ。なんて便利なんだ!
ゲートをくぐると、何処かしらの建物の中に着いた。此処は何処だろうか?
「此処を覚えておいてね。此処はこの地区のゲートがある建物よ。此処以外で、この辺りに街まで帰れる場所はないから……忘れたら大変な事になるわよ!」
アンナさんが笑顔で脅してきた……
建物の外に出ると、そこは自然豊かな山の中だった。生い茂る緑の木々! 吹き抜ける風! 巨大なウサギの様なモノ!
ん? 巨大なウサギ?
「おいぃぃいぃぃい! いきなりトラウマ抉るやつきたーー!!」
アレは忘れもしません。そう、それはこの世界に始めてきた日に出会った奴だ。巨大なウサギモドキ……