『シズイ』行きまーす
「私、本物見るの初めてだ」
「いや、そうだろ。あんなのしょっちゅう観てたら怖いよ」
それは100メートルは有るであろう巨体、ワニの様に長い口に、鋭く生えた牙、長い尾。そう、俺達の居た世界でのモササウルスの巨大化バージョンみたいだ
「……これは倒せないだろう」
「だから倒せないから、追い返すの!」
だろうな……倒すにしても弱点らしい弱点なぞ無い。体には硬い皮膚がある。アレ、絶対に攻撃通さないだろう!!
「何、怯んでるのさ! ほら、早く!」
あんなの見て何故平気でいられるのか分からない。此処は水の中で自身の力が一切使えないのだ。そりゃ、不安にもなるだろう
「と、取り敢えず『シズイ』行きまーす」
ガ○ダムの発進する時の台詞みたいに言ってみたが恥ずかしくなったので以降はしないでおこう
海の中を悠々と泳ぐ【キュバリル・ウルティムス】。それに近づきビームで攻撃するが全く効いてる気がしない。
尻尾で叩き壊され、強靭な顎で潜水艦諸共噛み砕かれ、噛み砕く前に呑み込まれたりとキュバリル・ウルティムスの攻撃により味方は一機一機と散って行く
俺達が手をこまねいてる内にキュバリル・ウルティムスはドンドン街に近づいて行く。マズイ……
『はーい、元気? 今、大変な事になってるんだね? 聞いたよ!』
突然姉から通信が入る。
「大変な事になってるって……お前も居るだろう?」
『居ないよ! 今、地上だもの!』
「なんだと⁉︎」
お前、何してるんだ⁉︎ そんな小さな体で何が出来るのか……
『お使い頼まれててね。ちょっと出掛けてたら凄い事になってるらしく……私も見てみたかったけど、まだ掛かりそうだから帰れないし、仕方ないね』
「……おい、用が無いなら切るぞ」
少し離れた場所に居るとはいえ、此処も十分に攻撃範囲内だ。気が散ってて攻撃に気付きませんでしたは洒落にならない為、通信を切ろうとしたが
『あー!! 待ってよ!』
「何だ」
『言ってなかったと思って! 私、機会弄るの得意じゃん? で、エルが薬物作るの得意でね。その機体に何らかの薬物積んでおいたから使って』
「おい! 俺らの機体を弄ったのお前か⁉︎」
なんて事だ。姉がこの機体に付いてたミサイル外して、何かの薬剤の入った巨大注射器を取り付けていたらしい。なんて事してくれるんだ!
『その薬剤は、とあるモンスターの毒を参考に作った物でね。投与された者の血を[ゼリー状に固めてしまう]っという代物なんだ』
姉に変わりエマヌエルが説明に入った。というかお前も地上に居るのか
「なんて物、付けてくれてんの⁉︎」
さっきまで黙っていたアナトリーが口出してきた。そりゃそうだろう。なんて危ない薬物を勝手に積んでくれてるんだ
『それを奴の口の中に突き刺せば……』
『大勝利!! っとなる訳だよ!』
「口の中って……」
『取り敢えず、テストとして殺ってきてくれない?』
1回食われろっという事だろうか? ていうかテストにしては相手が可笑しい気がする。もし、この薬物が機能しなくて奴が死ななかったら俺らが死ぬぞ? 随分と簡単に言ってくれる
『おい、いつまで話してる! アンデット兵来てるぞ!』
『え? ギャー⁉︎ ゾンビ多すぎ!! 何これ走って来てるし! ゾンビって走るの⁉︎ ギャーーー!! [ブツ]』
通信が切れた……さっき一瞬ヌンツィオの声も聞こえて来たが、もしかしなくても皆んな一緒なのだろうか? 相変わらず何をしているのか分からない集団である
「……で、どうするのさ?」
「どうするも、こうするも……やるしかないだろう……」
姉とエマヌエルの言う通りに動くのは癪だが、致し方ない。
「ちょっ⁉︎ 本気? 口の中に入れって言ってたよ!」
「なら降りるか? 俺だけでもやるよ」
彼処には母や父、生まれてくる弟か妹が居るのだ。何としても近づかせる訳には行かない
「……まぁ、確かにそうだね。僕にも……私にも家族がいる。酷い兄と直ぐに癇癪を起こす母、唯一優しい父。どんなに酷い家族でも守らなきゃね」
以前に聞いた話だが、アナトリーの家は大分酷いらしい。借金を抱えて家族に当たり散らす兄と癇癪を起こして暴れる母、唯一優しくしてくれた義理の父……
兄に借金のカタに売られそうになり、男の格好をして過ごす様になったのだとか。複雑な家庭事情である
「なら、行くか」
俺はレバーを倒し全速力で奴の口元に近づく。そして
「あ……」
パクッ
喰われた……




