タダで死ぬのは癪なので貴方を道連れにします
「騒がしいと思えば……何だ? 軍の連中が来てたのか?」
玉座に悠々と座るパーバートゥ。こちらに気付いても構える気がないらしい。随分と舐められている
「あまり興味が無いのかしら?」
「まぁな。どうせ死ぬしな!」
パーバートゥは言い終わった直後に尋常じゃないスピードで距離を詰めてきた。俺はそのスピードに付いて行けず……俺の眼前に迫るパーバートゥを見ているだけしか出来ない。
そして……『グチャ』っと肉が抉れる音が辺りに響いた。そして頬にかかる生暖かい何か……
「あ……」
「ぐふっ⁉︎ 流石に……コ、レはキツイ……わ……」
動けなかった俺の前に姉が滑り込みパーバートゥの攻撃から俺を庇った。
パーバートゥの手が姉の胸部を貫通している……
パーバートゥが徐に手を抜き、付いた血を舐める。それを見て我に返ったロザリーさん、アンナさん、エマヌエル、ヌンツィオ、カティルが動いてパーバートゥ目掛けて剣を下ろすが悠々と避けられ、距離を取られる
「……? 凄いなぁ。心臓やったのに生きてるのか」
ボソッとパーバートゥが呟く。彼の呟き通り、姉の心臓部は大きく穴が空き、向こう側が見えるくらいの大怪我だ。いや、大怪我では済まされない。死しか無い筈。姉は不死ではないと言っていた。流石にコレはマズイのでは?
「オウキ! 大丈夫? 治るかい?」
エマヌエルが駆け寄り、姉を支える。他はパーバートゥを警戒し、視線こそ寄越さないが心配気な気配は伝わってくる
「心臓は……無いな……無理だ。どうやら、私は此処でリタイアらしい」
「おい⁉︎」
姉はエマヌエルに凭れかかっていた体を起こし、冷静な声で言った
「レイキ……今直ぐに全員を囲え」
「え?」
「いいから……囲って。私は死体は晒したくないものでね」
姉はユックリと歩き出しパーバートゥに近づく。
「おい!」
ヌンツィオが止めようとしたが、それより早くレイキの結界が張られた為、手を伸ばしても届かなかった
「随分タフだな……」
「いいえ、もう死にます。でも、タダで死ぬのは癪なので貴方を道連れにします」
「やってみなぁ!!」
パーバートゥは豪快に笑い姉を舐めきっている。それを見た姉は顔を天井に向け体を逸らし両手を広げ出す。そして……
『あぁぁあああっ!!』
「オウキ⁉︎」
体から火が噴き出す。それは瞬く間に燃え広がり、有り得ない高熱を伴い辺りに襲い掛かる。その炎はこの部屋だけに留まらず、他の部屋にも到達する。
炎が静まり、辺りが静寂に包まれた頃にレイキは結界を解く。そこに姉の姿は無く、灰だけが有った。
そう、姉は自らを燃やしたのだ
「……」
あまりの事に言葉が出なかったが、ベテラン勢は一瞬で我に返りパーバートゥの様子を見たり、状況の確認をする
「パーバートゥが逃げた」
部屋の奥に隠し通路が有った様でそこに逃げ込んだ様だ。通路内に血が付着している為、先程の炎で深手を負ったと推測出来る
「かなりの手負いだ! 直ぐに仕留める」
俺達は通路に入り、急いでパーバートゥを追う。姉の仇を討つ! 悲しむのは、それからだ
「見つけたぞ」
通路の奥には潜水艦が1つ有り、パーバートゥはそれに乗り何時でも逃げる準備が出来ていた。そのエンジン部分をヌンツィオは壊し、機能を停止させる
「はぁ……シツコイ奴らだ……」
潜水艦から出てきた奴はかなり大怪我を負っていた。
「拘束したいのだけれど……大人しくしてくださる?」
「そりゃ、無理な相談だ」
「なら、結構。殺すまで!!」
ロザリーさんの言葉に俺とレイキ以外が一斉に襲い掛かるが深手を負っていても流石はハーフ魔人。全員と渡りあっている。
「くっ⁉︎」
それどころか押している。ロザリーさん達は通常の魔人とは1人でも対等に戦えると聞いていたのだが、それが束になっても押されるなんて……やはりハーフって強いの?
「ボサッとしない!」
「あ、はい!」
俺とレイキも参戦。エマヌエルの姿が無い事に気付くが、取り敢えず放置しよう
「一撃重っ!」
剣で相手の拳を防ぐが、その重さに後方に吹っ飛ぶ俺。やはり強い
俺は左手の甲で口元を拭い、パーバートゥを見据える。もう一度斬りかかる為、剣に力を入れて……左手の甲を見ると赤い線が出来ていた。これ何?
「あ、口紅か」
俺は口元を拭った時に口紅も拭っていたらしい。多分俺の顔は口紅が横に伸び悲惨な事になっている事だろう。そして、思い出した
「俺、女装のまんまだ」
女装したまま戦ってたのか……忘れてた




