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素直に嬉しい

 

「捕まえた!」


 自らの腹部を突き刺し貫通している腕を、姉は掴み離さない。それに気が付いたレイキが例の結界で姉諸共に魔人を拘束。その隙間に俺は背後から首を落とそうと斬りかかったが、姉の腹部を貫いている手とは逆の手で止められる


『ぐっ……!』

「……ッヅ。動くなよ!」


 拘束から逃れようと暴れる魔人は姉の腹部を掻き回す。流石にそれは応えたらしく、姉は抑えている手の力を緩めてしまった


「お兄ちゃん⁉︎」


 姉の拘束から外れた魔人は剣を抑えていない方の手……つまり姉を貫いた方の手を俺に向けて来た。思わず身を捻り避けたが、避けきれず「ザッシュ」っという音と共に左脇腹が抉られた


『チッ』


 俺を仕留め損ねた魔人は舌打ちする。


 崩れ落ちる俺と姉。俺は脇腹を抑え地べたに這い蹲る。急所は外れたが……流石に痛みで暫く動けそうにない。今回は鎮痛剤も無いし……キツイ

 レイキは俺と姉がヤられた所為で動揺した為か、魔人の拘束を解いてしまった。拘束が解け自由になった魔人は、腹部を抑えて壁にもたれかかる姉を一見してからレイキに視線を向け、そちらに歩き出す。


『まぁ、1人で良いって言ったし……この子でいいか』


 レイキに手を伸ばす。


「舐めないで!」


 その手をレイキは斬り落とした。俺はかなり驚く。今まで角は折られたが怪我という怪我を負う事が無かった目の前の魔人がとうとう負ったのだ。それは1番非力だと思っていたレイキの手によって


『ぎぁぁあああ!!!!』


 悲鳴をあげる魔人。怒りのままにレイキを掴み地面に叩きつけ付ける。何度も何度もだ。それを見た俺はカッとなり脇腹の痛みを忘れ、剣を取り走り出す。そう今迄よりずっと早いスピードでーー

 魔人は俺に背を向けるかたちだったので気付くのが一瞬遅れた。しかし、この一瞬が命取りだった。

 気付いた魔人が振り返り攻撃してくるより先に……俺は魔人の首を取った!!


「取った!」


 首を落とした後、俺は地べたに戻る。もう動けない。それに先程のスピードは自分のリミットを超えた動きだったらしく、変に体が軋みだす。副作用か……


『まだだ! 終わらん』

「「「……⁉︎」」」


 魔人の首だけが宙に浮きだし話す。俺達は驚愕の表情を浮かべてヤツを見る事しか出来ない。 首だけで動けるなんて聞いてないぞ⁉︎

 もう動けるヤツは誰も居ない、万事休すだ


『お前達を喰らい、力を戻す! 先ずはお前からだ!』


 首だけの魔人は俺に向かって来たが、体が軋み脇腹の怪我も酷い俺は立つ所か動く事すら出来ない。視界の隅で姉が立ち上がり、踏み込んだが間に合わないだろう。というか、立てたんだな……


 元の世界での出来事が走馬灯の様に駆け巡る……俺は……


『あ……あぁ……何で?』


 目の前に迫っていた魔人の首が消えた。いや、消えたのではない。剣で串刺しにされ、壁に貼り付けてられたのだ


『可笑しいわ……だって……結界は魔人しか通れない……』

「ふんっ。随分とつまらないヤツと遊んでいたんだな。オウキ」

「連隊長」


 まさかの連隊長の登場に俺もレイキも姉も驚きだ


「まさか、貴方が来るとは……」

「……随分と無様だな?」


 連隊長は姉の元に行き腹部を触り、その所為で姉の血が付いた自分の手をひと舐めした後、アルトゥールさんを呼んだ


「お呼びかな?」

「コイツを連れて行け。俺は指示を出す」

「了解です。連隊長殿」


 姉は連隊長とアルトゥールさんを交互に見たが……やがて溜息を吐き「心得ました」とだけ言い、歩いて行った。それをアルトゥールさんが追う。

 というか、姉……普通に歩けているんだが……アイツが1番、重傷の筈なんだけど……何? サイボーグ?


「時期に人が来る。それまで我慢出来るか?」


 連隊長は俺の脇腹に回復魔法(クーラー)をかけながら聞いてくる。何気に連隊長とファーストコンタクトだ


「はい……」


 俺に回復魔法(クーラー)を掛けながら、妹の容体をみる連隊長。なかなか器用である


『あぁ……成る程ね。貴方は……私達の……』

「五月蝿い」


 まだ生きていたらしい魔人に連隊長は留めを指す。そして、俺を見た後


「良くやった」


 褒めて貰えた。連隊長に褒められるなんて素直に嬉しい。感動に浸っていると、何処からかドタバタと足音が聞こえて来た。援軍だ


「レイキの方は大した事はないがショウキの方は重傷だ。緊急搬送しろ」

「了解です」


 手早く俺を手当てし、担架に乗せて運ぶ人を見ながら思うのが、やはり連隊長は姉に少なからず気があるのではない? っという疑問だった。だって一介のチアナイトのピンチに連隊長自ら出陣するだろうか? 無いだろう。だって前回、俺達が魔人と遭遇した時は居なかったし……

 今回、姉が居たから……姉が応援を頼んだから連隊長が出てきてくれたのだろう。お陰で俺も助かった


 廃墟の外に出て森の中を運ばれている時、ふと視線を感じ横を向くと……


「……イノシシ?」


 例の猪がチラリと見えたが直ぐに見えなくなった。あの巨体の癖に隠れるの上手いとか何だよ……


 青い空に視線を向けた後、俺は目を閉じ意識を手放した

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