雁行陣②
俺たちが最初にプレイヤータウンを出てモンスターと戦った日から数週間。
ようやく、最初の伝説級ダンジョン「ポーン」の、ボス部屋へとつながる階段が発見された。
もうわかると思うが、MoKの伝説級エネミーの名前と戦い方はチェスの駒とその動き方からとられている。
そして、ボス攻略隊の募集が明後日までで、実際に挑むのが一週間後だ。
俺たちは今、攻略隊が貸し切った会議室にいる。
「えーと、皆集まったよな! じゃあ、会議始めるぞ!」
攻略隊は六人パーティが八個集まった部隊を、さらに二つ連結した二重部隊で構成されている。
つまりは九十六人。
「よくこんなに集めたよなー」
「指揮官のカリスマ性がすごいんじゃない? そうじゃなければ、この半分も集まっていないと思うけど」
「そういうサイは、どれくらい集められるのかしら?」
スプリングが挑発的な口調で問う。
すると、
「二倍」
と、短くとも恐ろしい答えが返ってきた。
「二倍ってーと、百九十二人か。 ・・・やばくね?」
「さっすがサイ」
こんな感じで駄弁っていると、
「エックスさん、これについてどう思う?」
と質問がきた。
おそっろし・・・
このタイミング、絶対俺たちが話聞いてないのわかってんだろ。
「えーと、まず、呼び捨てでいいっすよ、RINKさん。 で、『これ』ってどれ?」
と返すと、指揮官である「RINK」さんが、苦虫を嚙み潰したような顔になった。
あれ、まさか、気づいてなかった?
「伝説級エネミー『ポーン』の、オーバーアシストの予想について、エックスの意見を聞きたい」
ああ、そういう話か。
「多分前と変わってないと思いますよ。 「猪突猛進」のスピードや、攻撃力上昇率に大幅な上方修正がかかってると思いますけど、大体は変わってないと思います」
今回の討伐対象である「ポーン」は、オーバーアシストであるアビリティ「猪突猛進」を持っている。
その効果は、「前進時にAGIとSTRが大幅に上昇する」というものだ。
その後はどのプレイヤーがどの役割につくかを話し合った。
ちなみに俺は壁役に、スプリングとサイは魔法攻撃隊になった。