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竜の子


 アインが帰宅すると、彼女の相棒である銀竜は庭先で翼を折畳んで丸くなっていた。彼女の帰りを待っている間に眠ってしまったのだろう、すやすやと寝息をたてている。夕日に照らされた銀の鱗が紅玉石の輝きを放っていた。「ただいま、ドライ」とアインが優しげに呼びかけ、その瞼にキスをする。銀竜はぴくっと耳を振るわせると、起き上って猫のように伸びをした。


 ダグがどれだけ没落貴族と卑下しようとも、ルビウス家は世界に名立たる名門貴族だ。アイン達が生活の拠点としているのも、家と言うよりは館と呼ぶべき豪奢で壮観な建築物である。もっとも館の一部や広大な敷地のほとんどが、飛行場や航空関連の設備に様変わりしてしまっているが。


「お帰りなさいませ、お嬢様」と姿勢正しく一礼してくる執事の御爺さんは数少ない使用人の一人だ。上品に微笑み返すと、アインは銀竜の背に腰かけた。


「おや、お嬢様。また“上”からですかな?」


「すみませんジョセフさん」


「構いませんよ、着付けのメイドには直接お部屋に伺うよう伝えておきますので」


「ありがとうございます」


 執事が距離を取ったのを見てから、銀竜はゆるやかに翼を羽ばたかせた。気を付けないとせっかく手入れしていただいている綺麗な庭を荒らしてしまうからだ。


 館の尖塔よりも高く舞い上がる。夕焼けが雲に幾重もの赤い帯を描いていて、まるでさざ波のようだった。敷地内の滑走路が誘導灯でぼんやりと彩られている。銀竜は運動し足りないようで真っ直ぐに目的地へと向かうつもりはないようだった。彼女はそれを咎めることもなく、ゆったりと竜の背に身を任せていた。


 銀竜は軽く空の散歩を楽しむと、旋回して館のバルコニーの一つへと降り立った。アインの自室へと繋がっている場所だ。


 銀竜と共に自室へと入ったアインは、ジャケットを寝台に脱ぎ捨てると、一直線に部屋の奥へと向かった。そこには彼女の身の丈ほどもある大鎌が、長方形の透明なケースの中、宝物のように飾られていた。アインがケースの鍵を開けて取り出すと、大鎌は全ての部品が竜の爪や鱗を用いて作られているようで、竜特有のひんやりと心地よい手触りを備えていた。彼女はそれを大切に優しく抱き締めると、愛おしそうに呟いた。


「母様」と

 

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