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蚕
彼女は出会った時からひたすら優しかった。
真綿の様に柔らかな彼女の存在は俺の乾いた心を優しく包み、確実に潤いを与えていった。
そして彼女は特別になっていった。
同時に俺にとって彼女がそうであるように、彼女にとって俺は特別である、と思った。
―いや、思い込んでいたんだ。
彼女にとって俺は特別でもなかった。
俺じゃない他にも注がれる慈愛。
ソレを目の当たりにした瞬間、嫌悪感で吐きそうになった。
どうすれば俺は彼女の特別になれる?
どうすれば彼女は俺を特別に見てくれる?
優しく美しい彼女を独占できないなら、ドロドロと汚い彼女を独り占めすればいいのだ。
なぁ。
美しい繭の中に隠しているおぞましいお前を俺だけに見せてくれよ