ここにいるよ
掲載日:2026/05/08
姉にとってはとっくに死んだぼく、
周りからしたら生き返ったぼく、
姉には見えない、
けどここにいるよ。
「お母さん、今日は母の日でしょ?」
夕食後、姉さんはお母さんに微笑んで言った。
そして、それから何も言わず、黙り、小走りで、自分の部屋へ向かう。
「姉さんが母の日にお祝いかー」
笑顔で弟のぼくは言う。
「本当。あなたが事故に遭った日から別人みたい」
1年前、13歳のあの日から。
「前は母の日なんて頭になかったのにね、あの子」
姉さんは小走りのままで戻ってくる。
手には造花。けど思いはこもっている、ちがいない。
「はい、母の日のお祝い」
「わあ! 嬉しい!
見て!」
笑顔でぼくに見せてくる。
「だから… だからね?」
一瞬切なさそうに、でもすぐに小さな笑みに戻り、
「私1人でも頑張れるから。
もう、死んだアイツのことは忘れていいから」
ぼくの胸がズキリ、とする。
「? ここにいるよ?」
「そう…だね」
辛そうにしてうなずく。
『君は生き返ることができる。だけど、君の姉には見えないんだ』
ぼくは、お母さんを祝わない。
姉さんがもっと辛くなるから。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!




