7話「バイト」
【横浜律】
ある日の放課後、私はバイトをしていた。
いつもなら平穏にただ商品を陳列したり、レジを打ったりしているところだが、ここ最近はそうもいかない。あいつが来てしまったから。
「おーい船橋これどこ置けばいーのー」
店内に無駄にでかい声が響き渡る。
能代が来てからというもの、バイトが普段の倍以上疲れる。
私は少しイライラしながら言う。
「それは春限定の看板だから今は置かなくていいって昨日言ったでしょ!?」
能代は有り得ないくらい仕事ができない。一つ一つのことを5回は言わないと覚えないのだ。
「もーそんな怒んなよ、更年期かー?」
能代が嫌味な口調で言ってくる。
私は殺意が湧いた。
「能代?私が好きな漫画に『これは持論なんだが、躾に一番効くのは痛みだと思う。』っていうセリフがあるんだけど能代はどう思う?」
私が低い声で言う。
能代はすぐに
「ごめんなさい。二度と言いません。僕と家族の命だけは勘弁してください。それ以外ならなんでも捧げますからどうかお許しください。」
と早口で唱えた。
私は無視して作業に戻る。
私が陳列をしていると、後ろから高い声で
「律!」
と声をかけられた。
後ろを振り向くと彩芽がニコニコしながら立っていた。
ほんとに可愛いなぁこの子はと思いながら
「彩芽どうしたの?なんか買うの?」と聞くと
「シャー芯なくなったから買いに来たついでに律に会いに来た」とくしゃっとした笑顔で言う。
守りたいこの笑顔。税金使って保護するべき笑顔。全国民が彩芽に貢ぐべき。借金してでも貢ぐべき。と思いながら彩芽に「彩芽ってさ、可愛いよね」と言う。
彩芽はすぐに「よく言われる」と答えた。
そういう自信家なところまで全てが可愛い。
すると彩芽が言う「バイトどう?能代は真面目に働いてる?」
すぐに私の口から愚痴がこぼれる「あいつが来てからバイトが10倍疲れるしあいつが来てからストレスが20倍たまるしあいつがきてから時給30倍じゃないと割に合わないくらいの重労働してるけど全然大丈夫だよ」
彩芽が少し引きつった顔で「心中お察しします…」
と言ってくる。
すると後ろからでかい声で
「あ!彩芽じゃん!何話してんの?」と能代が声をかけてきた。
私は「店内ではお静かにしてくださーい」と言って作業に戻った。
彩芽は「真面目に働けよバイトー」と言ってレジに向かった。
能代は哀愁漂う顔をして立ち尽くしていた。
日常回!律と彩芽の絡みほど尊いものはないです…次回も近々更新するのでお楽しみに!次回もよろしくお願いします!




