恋愛占い師ルミナスの館ー変態相談者達の恋愛模様に脳が拒否反応を示している件ー
『恋愛占い師ルミナスの館〜転生したらトランスしたからといって男装女子と百合カプになるなんて想定外です〜』
ここはルミナスの館。愛を占う恋人達のパワースポット。
今日ここに訪れたのはーーー聖なる力を持った選ばれし少女。
彼女はオレンジ色の瞳を伏せてこう言った。
「お……いや、私、実は前世の記憶があるんです」
「なるほど、転生者ですか。何人か見たことがあります」
「ほ、本当ですか!?」
彼女はガタリと音を立てて椅子から立ち上がる。
「えぇ。私は占い師ルミナス。必ずやあなたを導いてみせましょう」
転生者とは数奇な運命を持つことが多いものだ。恋愛に関しての相談を受けたのも、一度や二度ではない。
「じゃ、じゃあ……前世が男である俺が、女の子と結ばれる方法もわかりますか!?」
ごめん、そのパターンは初めてだわ。
「俺は元々イケメンを見るのが好きなんですけど、この世界皆顔が良くて……! 俺このままじゃホモになりそうなんです! 助けてくださいルミナス様!」
落ち着け、今の君は女だから絵面上はホモにはならない。精神上は知らないけど。
ていうかなんでこんな斜め上方向からやってくるの?? 左右の安全確認してから道渡ったら隕石落ちてきた感覚なんだが??
「……わかりました、占いましょう」
それでも、これが私の仕事だ。
眉間に皺がよる感触を覚えながら、水晶に魔力を込める。
「ルミナス様……!」
ぱぁっと顔を綻ばせる彼(?)。見た目だけは可憐な美少女なんだけどな……。
「出ました。運命の人は近くにいる、見えているものを疑え、水が汝を救う」
「水……?」
彼はこてんと首を傾げる。確かに、最初の二つはともかく、水だけは異質だ。
多分あれだろう、運命の人とプールでイベントが起こるとか、そういう青春系のやつ。あるあるだよね。……このパターンにそれが適用されるかは知らないけど。
「とりあえず、近くの人をよく観察するところから始めます! ありがとうございます、ルミナス様!」
彼はオレンジ色の髪を揺らし、淑女らしからぬ大股で去ってていく。
私は天才占い師ルミナス。本当に天才を名乗っていいのか、最近少し迷っている。
ーー1週間後ーー
「お、俺……彼女ができました!」
顔を真っ赤にしてそう叫ぶ転生者。
まさか本当に彼女を作ってしまうとは。まあ、世の中には様々な趣向の人がいる。そう珍しい話ではない。
「水に濡れた友達が、着替えに行ったんです。俺、着替えとタオルをもってこうとして……そ、そこで、見えちゃって」
顔を真っ赤に染める彼。その手はわずかに震えていた。
おー、お約束の展開。でも、何でそこから交際に繋がるんだろう?
「『俺が女だってこと、バラしちゃダメだよ?』って、至近距離で言われて。俺、そのまま思わず『好き……』って告白しちゃったんです……!」
『俺が女だってバラしちゃダメだよ?????』
え、待って男装女子ってこと??
「なんか、彼女自身は性自認が男らしいんですけど、俺もうそれでもいいかなって思って」
つまり精神的にはBLで肉体的にはGLで対外的にはNLってこと???
ダメだ脳がオーバーヒートしそう。
「ルミナス様のおかげです! 俺、彼女と幸せになろうと思います!」
彼は豪快に歯を見せて笑う。白く光る歯が、眩しかった。
私は天才占い師ルミナス。百戦錬磨の恋愛相談マスター。
しかし世の中には、私も知らないほど色々な愛の形があるらしい。
お読みいただきありがとうございます。
ルミナスシリーズ3作目です!
いつか長編で作品置き場になります。リアクション&ブクマいただけると励みになります。