第8話 ストリーマー登録って、思ったより面接だった
「えっと……ストリーマー登録の申請に来たんですけど……」
ギルド内のストリーマー受付窓口。
朝のうちに来たつもりだったのに、すでに行列ができていた。
レオンとのコラボ配信から一夜明けて、
“あの人の隣にいた子”としてほんのり認知されつつある今――
少しでも早く、正規の登録を済ませておきたかった。
(ここで登録通れば、配信収益の申請もできるし……!)
窓口のお姉さんに案内されて、私は奥のブースに通された。
魔導石を提出し、申請内容を確認。
そこまではよかったけど――
「はい、じゃあ面談ね。中に入って」
「……えっ、面談!?」
部屋の中には、白いデスクと椅子。
そして、机の奥に腰かけていたのは――
「申請者、リオナ・アメシスさん……ね。昨日、ちょっと話題になってたわね」
金髪ボブに、黒縁眼鏡。
ぱりっとした制服姿の女性が、書類に目を落としたまま口を開いた。
「ギルドストリーマー審査担当、フィーネ。よろしく」
「あ、はい! リオナです!よろしくお願いします!」
無表情……ではないけど、なんというか、感情の読みにくい人だ。
職務中って感じのテンションがある。
「履歴拝見したけど、フォロワー数は63人。
配信回数は2回、再生数合計は……」
「えっと、それ昨日のコラボで――」
「分かってる。レオンさんとのコラボ、ね」
ぴたっとこちらを見て、フィーネは言う。
「あなた、彼の推薦で登録は通りやすくなってるわ。
でも、今後ひとりでやっていくなら、実力も必要になる」
「……それは、もちろんです」
一瞬だけ、視線が刺さったような気がした。
プレッシャーじゃない。
どちらかと言えば――試されている。
「ギルドの新人紹介枠に掲載されたのは事実。
期待してる人も、いるでしょうね」
「……そんなに、期待されるようなことしてませんけど」
「謙遜か、自信のなさか。どっち?」
「う……」
たじろぐ私に、フィーネは少しだけ口元を緩めた。
「――まあ、いいわ。正規登録は通す。
魔導石にストリーマー識別キーを追加しておくから、次からは収益申請もできる」
「ほんとに!? ありがとうございます!」
魔導石が光り、ステータス表示に“Guild-Verified”のバッジが追加された。
「あと、次の配信。もう決めてる?」
「えっ、あ、いえ……まだですけど」
「レオン抜きの、最初の“ひとり配信”。大事よ。ちゃんと準備しておきなさい」
フィーネはそう言って、手元の書類にハンコを押した。
それが、この世界での“スタートライン”の証。
部屋を出て、私はしばらく立ち止まった。
「……ひとりか」
レオンがいない。
フォローも、会話の合いの手も、誰もいない。
でも、やるしかない。
魔導石を握りしめて、私はつぶやいた。
「……いっちょ、やってやろうじゃん」
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