第7話 あの人と一緒だった子
翌朝、街は相変わらずにぎやかだった。
露店からはパンの焼ける匂いが漂って、
通りを歩く冒険者たちが陽気に笑っている。
私は人混みに紛れて、ひとり、魔導石をいじりながら歩いていた。
(昨日のコラボ配信……ほんとに、やったんだな)
魔導石には視聴履歴とリアクションデータが残っていた。
フォロワー数が「1」から「63」になっていた。
小さな数字だけど、私にとってはとてつもない変化だ。
> 《昨日の新人、なんかクセになるな》
> 《耳フリちゃんまた出ないかな》
> 《レオンのとこにいた子か》
(……やっぱ、レオンと一緒だったからだよね)
あの人はこの街で知らない人がいないレベルの人気者らしい。
昨日も歩いてるだけで二度見されたり、話しかけられてたし。
そんな人と一緒に配信してたってだけで、**“隣にいた新人”として注目された**んだ。
(……ありがたい話ではあるけど、ちゃんとしなきゃな)
いつか、自分の名前だけで見てもらえるようになりたい。
そう思うのは、ちょっと贅沢だろうか。
広場を通り抜けて、ギルド前に来ると――
掲示板の横に小さな案内が出ていた。
《ストリーマー登録者向け:今週のピックアップ紹介枠はこちら》
《注目新人:リオナ・アメシス(NEW!)》
《紹介者:レオン(上位ランカー)》
(うわ、載ってる……!)
ピックアップというより“レオンの推薦”枠みたいな扱いだったけど、
それでも街のギルド掲示板に名前が出てるって、普通にすごい。
「あれ? 昨日のコラボの子じゃない?」
「耳フリフリしてた新人?」
「おー、やっぱり本人だー!」
すれ違った冒険者たちの声が耳に入る。
ちょっと恥ずかしくて、魔導石で顔を隠してしまった。
でも――
(……これが、届いてるってことだよね)
ちゃんと“誰かが見てた”。
その誰かが、こうやって反応してくれる。
それだけで、十分すぎるくらい嬉しかった。
私は深呼吸して、ギルドの扉を押し開けた。
少しだけ足取りが、軽くなった気がした。
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