第68話 そして次は、静かな暴露系
「ふむ……まっすぐでいい配信だったと思います」
配信終了後、審査員控えの魔導ビジョン前。
セレスティア=ルナイアは、そっと手元の採点用プレートに印をつけながら、落ち着いた声で呟いた。
「言葉のテンポも、視線の使い方も自然だった。あれは、持って生まれたものかもしれませんね」
「……勢いで押し切った感じだが、悪くない」
カーティス=グラッドは腕を組んだまま、小さく頷く。
言葉数こそ少ないが、その表情にはほんのわずかに満足げな色が浮かんでいた。
◆◇◆
一方その頃、出場者控室。
魔導スクリーンに映っていたエリザの配信が終わり、室内にやや静かな空気が流れる。
「すげぇな、エリザのヤツ……テンポも間も、全部“持ってく”感じで決めてきたな」
隣にいたザンが腕を組みながらつぶやき、リオナは思わず大きく頷いた。
「うん……エリザさん、すごく自然なのに、全部が計算されてるみたいで……」
「これが、トップクラスの雑談配信かぁ……」
自分の胸の内に、じんわりとプレッシャーが広がる。
普段の配信では、もっと気楽に話していたはずなのに、今は言葉すら出てこない。
>(喋るだけ、って簡単そうで一番難しいんだよね……)
>(しかも、審査されてるって思うと余計に……)
そんな中、ふわっとソファに座っていたパールが、無言で頷いて画面を見ていた。
相変わらず静かだけれど、彼女なりに何かを感じ取っているようだ。
「ま、オレはオレのリズムでいくけどな!」
ザンは軽く肩を回しながら笑い、リオナの肩をぽんと叩いた。
「アメシスちゃんも、いつも通りでいけばいいって!」
「は、はいっ……ありがとうございます!」
その言葉だけで、少しだけ心が軽くなる。
それでも――緊張は、消えてくれなかった。
◆◇◆
「それじゃあ、続いては――」
控室の天井に設置された魔導スピーカーから、レオンの声が響く。
画面が切り替わり、観客と視聴者へ向けたアナウンスが始まった。
「ラウンド1、2人目の挑戦者!」
「リオス王国代表――カリナ=クラウス!」
静かに、魔導ビジョンに新しい配信枠のカウントダウンが表示される。
「さて、次はどんな“雑談”が飛び出すか。皆さん、お楽しみに!」
3、2、1――
次なる配信が、今始まろうとしていた。
チャンネル登録と高評価と感想で応援よろしくお願いします!次回配信も読みに来てください!