第64話 みんなクセ強すぎてすごいんですけど!
(やっと、全員分見終わった……)
(想像の五倍は濃かった……というか、濃すぎた)
ストリーマーカップ——
大会の告知として、出場者たちが順に“自己紹介配信”を公開していく中。
私、リオナ=アメシスは、その全員分をリアタイで視聴していた。
正直、どの人もクセが強くて、インパクトありすぎて、頭が追いついていない。
◆◇◆
まずは同じノルディア代表、ザン=サラウィア。
配信の冒頭、突然魔導スピーカーから爆音ビートが流れ、ザンがリズムに乗って登場。
「Yo! ノルディアから来たぜ、ザン=サラウィア!」
「オレの配信は戦いと音楽の融合! 魂で殴るぜ!」
「テンポ乱したら終わりだ、ガチで踊れッ!」
もう、喋ってるというよりラップだった。
途中から視聴者コメントもハイになってて、全体的にライブ会場みたいなノリ。
> 《テンション上げすぎて魔導スピーカー飛んだ》
> 《この人ほんとに槍使うんだよね?w》
> 《音で戦うってどういうことなの》
(いやもう、勢いすごすぎて何も頭に入らなかった……)
(でも、勢いだけじゃなくて“場を乗せる力”はほんとすごいかも……)
次は、リオス王国代表のひとり、エスティア=グランツ。
貴族的な衣装で優雅に登場したかと思えば、最初の台詞がこれだった。
「まあ……こうして姿を晒すのも、久しぶりかしら?」
「ふふっ、逃げずに最後まで見なさいな?」
そのあとは高笑い混じりに毒舌を連発。
でも、どこか芝居がかっていて、“魅せる毒舌”だった。
> 《高貴で毒舌で演技派って強くない?》
> 《セリフ回しが演劇っぽい》
> 《ドレス姿で煽ってくるの新しいw》
(こ、怖い……でもなんかクセになる……)
続いて公開されたのは、同じリオス代表のカリナ=アークライト。
彼女の配信は、穏やかなティータイム風の映像から始まった。
「はじめまして。カリナ=アークライトと申します」
そこまでは上品だったのに、途中で急に暴露系の情報が飛び出す。
「ちなみに、ある方が裏でこんな話をしていたってご存知?」
まさかの“情報屋系暴露芸”。
優雅な口調と背筋が凍る内容のギャップで、視聴者コメントが一気にざわついた。
> 《いや急に裏話ぶっこんでくるなw》
> 《敬語で告発すんの怖すぎ》
> 《毒より静かに刺してくる感じ》
(この人、完全に裏側まで見えてる感じする……)
(逆に“味方”になったら頼りになりそうだけど……敵にはしたくない!)
ファレノ国のパール=オルディナの配信は、まるで小さなドキュメンタリーだった。
言葉は少なく、戦う仲間たちを静かにカメラが追いかける。
「私は……こういう姿が好きなんです」
「真剣な背中とか、誰かを守ってるときの目とか……」
ラストに映し出された“今日の一枚”は、仲間の笑顔と傷跡が同居した、あたたかくてリアルな一瞬。
> 《言葉よりも映像で語ってる……》
> 《こういう配信って成立するんだな》
> 《癒されるけど泣ける》
(戦うだけじゃない、“見つめる強さ”って感じ……)
(私とはまるで逆の方向性だけど……でも、こういう人がいるってなんか安心する)
そして最後に公開されたのは、ゼミル連邦代表のエリザ=グランノア。
「やっほー! どもども、ゼミル連邦から来ました、エリザですっ!」
全力笑顔でぴょこんとお辞儀。背景には赤とオレンジの魔導照明がビカビカと踊り、どこか祭りのような賑やかさ。
勢いあるトークと、全力で戦う現場中継のような場面が次々と展開されていく。
「もうね、楽しんだもん勝ちだと思ってるから! 私もみんなも、目ぇ離さないでねーっ!」
> 《この人すっごい元気w》
> 《めっちゃ喋るけどうるさくないのすごい》
> 《素直で明るいってだけで強キャラ感》
(観てて疲れない明るさって、すごい才能だと思う)
(テンション高いのに嫌味がまったくない……なんか、羨ましいかも)
そして翌日、レオンからの公式配信が公開された。
タイトルは《【公式】ストリーマーカップ全体概要&審査員紹介》。
画面に現れたレオンは、いつもの爽やかな笑顔で手を振る。
「やあやあ、みんな! 主催のレオンだよ!」
「今日は《ストリーマーカップ全体の流れと審査体制》について、ざっくり説明していくぞ!」
背景に浮かぶ魔導字幕が、要点を簡潔に表示する。
【大会構成:全3ラウンド】
【ラウンド1:雑談配信バトル(3時間・トーク勝負)】
【ラウンド2:2人1組の即席タッグ戦】
【ラウンド3:最終決戦・自由形式】
【各ラウンドの得点+総合評価で優勝者を決定】
「審査は配信としての完成度、面白さ、構成力、戦闘能力、それから視聴者の反応まで含めて判断されるぞ!」
「で、その審査員がこちら!」
画面に映ったのは以下の3人。
・カーティス=グラッド(元S級冒険者/ゼミル連邦)
・セレスティア=ルナイア(歌・演出系のカリスマ)
・レオン=クロイツ(主催兼進行)
> 《セレスティア様の目に耐えられる気がしない》
> 《カーティスさん、戦闘力の基準厳しそう……》
> 《主催者が自分で審査もやるの草》
「それと今回は、運営サポートとしてこの人にも入ってもらってるよ!」
カメラが少しズレて、横にいた人物が画面に映る。
「こんにちは。リュミです。今回はレオンさんの補助として、運営にちょっとだけ関わらせてもらってます」
> 《あっ、リュミさん!》
> 《現地配信で観た!》
> 《解説とかもしてくれるのかな?》
レオンが最後ににっこり笑って締める。
「ってことで、大会はいよいよ間もなく本番スタートだ! ラウンド1から、全力で楽しんでいこう!」
(ここから、いよいよ始まるんだ……)
怖い。でも、ちょっとだけワクワクもしてる。
この先、何が起きるのかは分からないけど——
覚悟だけは、しておかないと。
チャンネル登録と高評価と感想で応援よろしくお願いします!次回配信も読みに来てください!