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第61話 ルール説明って、聞いてたよりガチすぎるんですけど!?

「――ここからは、大会のルールと進行について説明していこうか」


 


レオンの手のひらが、空中に向かってすっと伸びる。


それと同時に、会議室の中央に設置された魔導スクリーンが起動した。


淡い光を放ちながら、浮かび上がる文字と図解。


そして、その内容に――私は、目を疑った。


 


「まず今回の《ストリーマーカップ》は、全三ラウンド制」


 


スクリーンに表示されたのは、三つに分かれたブロック構成。


それぞれに《Round1》《Round2》《Round3》の文字が浮かんでいる。


 


「出場者全員が、すべてのラウンドに参加してもらいます」


「……全員?」


誰かの素朴な疑問が漏れる。


 


レオンさんはにこっと笑ってうなずいた。


 


「もちろん。どのラウンドでも“配信者としての実力”が試されるからね。

戦える人も、しゃべれる人も、魅せられる人も――みんな等しく勝負してもらうよ」


 


(わ……わたし、どれにも自信ないんだけど!?)


 


「ラウンドごとにテーマや制限が設定されていて、

それぞれ終了後に、そのラウンドの《MVP》を一名、審査員と出場者の投票で選出します」


 


MVP。


各ラウンドで最も輝いた人に送られる称号らしい。


 


「ただし、MVPを取ることが“優勝”条件じゃない。

3ラウンド通しての《総合スコア》が最も高かった者が、最終的な優勝者になります」


 


数人が小さく頷く。


短期決戦じゃなくて、トータルバランス勝負ってことらしい。


 


「スコアは、《視聴者数》《コメントの熱量》《審査員評価》の三軸で構成される」


 


その言葉に、会議室の空気がピリッと変わった。


隣のザンさんが「マジか」と小声でつぶやき、

数人が顔を見合わせてざわめく。


 


「《コメントの熱量》……ってどう評価するんだ?」


「たぶん、内容とかリアクションじゃねーか」


 


言い合う声が飛び交う中、レオンさんは続けた。


 


「この大会では、視聴者も“審査員の一部”です。

ただの応援コメントも、適当な連投も、煽りも――すべて審査対象になります。

本気で伝えたい言葉がある人は、しっかり届けてください」


 


審査員席に座るカーティスさんが、無言で頷いた。


その横でセレスティアさんが微笑む。


 


(……思ってたより、ずっと“ちゃんとした大会”だ)


 


「じゃあ、それぞれのラウンド内容に移ろうか」


 


魔導スクリーンの表示が切り替わる。


最初に映し出されたのは、《Round1:雑談配信》。


 


「一発目は、配信の基本。

《話す力》だけでどれだけ人を惹きつけられるかを見せてもらいます」


 


テーマは――『トークだけで、あなたを魅せてください』。


 


「制限時間は3時間。演出、BGM、小道具、戦闘行為、すべて禁止。

 画面はカメラ1つ、演者はあなただけ。編集もエフェクトもなし。

 “言葉”だけで勝負してもらいます」


 


「……マジか……」


椅子をきしませながら、ザンさんがぼそっとこぼした。


 


「3時間って、けっこう地獄だぞ」


「オレ、編集なしとか初めてなんだけど……」


 


どこかで軽い悲鳴が上がっていた。

わかる、めっちゃわかる。私も内心で同じ悲鳴を上げてる。


 


(テンパったら即事故でしょこれ! 無編集って逃げ場ないじゃん……!)


 


「Round1で評価されるのは“話の構成力”“伝える力”、そして“空気を作る力”。

一人でしゃべるもよし、コメント拾ってやりとりするもよし。やり方は自由だ」


 


「続いて、Round2」


 


スクリーンが切り替わる。


そこに表示されたのは、《実況×戦闘チームバトル》。


 


「ここからは実技配信。とはいえ――今回は《即席チーム戦》でやります」


 


「チーム戦!?」


複数人が同時に反応する。


 


「チーム編成は完全ランダム。国もスタイルも関係なく、

配信者同士でユニットを組んでもらって、バトル実況に挑戦してもらいます」


 


「マジかよ、相性悪かったら詰むじゃん……」


「でも即席ってのが逆に面白そうだな」


 


誰かがそんなことをつぶやいて、何人かがクスッと笑う。


一方で、真剣な表情に切り替わる参加者もいた。


 


「ちなみに、Round2では“事故”が起こるように設計されています。

魔導カメラのノイズ、敵の乱入、作戦ミス――

それをどうカバーして乗り切るかも、評価対象です」


 


(絶対なんか仕掛けてくるじゃんこれ……!)


 


「そして、Round3――最終ラウンド」


 


表示されたのは、ただ一言。


『あなたのすべてを見せてください』


 


「これはフリーパフォーマンス。

何を見せても、どんな演出でも構わない。

あなたというストリーマーの、すべてをぶつけてほしい」


 


「過去の名場面を再構成しても、仲間を呼んでコラボしてもいい。

戦っても、歌っても、語っても――なんでもありです」


 


隣のマールさんが「楽しそ~」と微笑む。


逆に、エスティアさんは静かに腕を組んで何かを考え込んでいる。


 


(わたし……なに見せればいいんだろ……)


派手な演出も、特別な武器も、凄技も持ってない。


あるのは、喋る力と、視聴者とのつながり。


それだけで、戦えるのかな。


 


「――以上が、3ラウンドの概要だ」


 


レオンさんがスクリーンを閉じて、静かに言葉を締める。


 


「で、開催日は《二週間後》を予定しています」


 


会議室内に、再びざわつきが広がった。


 


「……意外と時間ないな」

「準備しないと、ヤバいかも」

「機材チェックもしとかなきゃ……」


 


各国代表たちがそれぞれに反応している。


私も、反射的にスケジュールの確認を始めていた。


 


「明日からは順次、《告知配信》をお願いします。

各自、自分のチャンネルで大会参加を発表し、意気込みを語ってください。

それが、事前の第一ステージになります」


 


ザンさんが「告知ね……しゃーねぇ、ド派手にやってやるか」と呟く。


セレスティアさんは静かに微笑んで、リストを眺めていた。


 


「詳細な日程や、チーム戦に向けた演習日などは、後日まとめて配布します。

それまでの間、自分の武器と強みを改めて磨いてください」


 


レオンさんが一礼し、カーティスさんとセレスティアさんもそれに続く。


 


「それじゃ、会議は以上です。――良い準備を」


 


出場者たちが一斉に立ち上がる。


空気は、さっきよりもずっと熱を帯びていた。


 


私は小さく息を吸って、自分の胸に手を当てる。


 


(やるしかない)


(配信で、ちゃんと爪痕を残さなきゃ)


(二週間後、ここから何かが変わるんだ)


 


静かに、でも確かに――覚悟が、固まっていくのを感じた。

チャンネル登録ブクマと高評価と感想(コメント)で応援よろしくお願いします!次回配信も読みに来てください!

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