第60話 はじめまして、ストリーマー
「それじゃ、始めようか。――ストリーマーカップ、初回会議」
レオンの声が、円卓の中心に響いた。
場の空気がすっと引き締まる。
「まずは、簡単に自己紹介してもらえたら。順番は俺からいこうかな」
そう言って、レオンは笑顔で立ち上がる。
「俺はレオン=ヴェルハルト。今回の大会の主催であり、審査員も務めるストリーマーだ」
軽くウィンクをしつつ、冗談めかした口調を続ける。
「普段は戦闘配信をメインにやってるけど、今回は実況よりも運営と審査の裏方だな。みんなが全力を出せる場を作れるよう、できる限り動くからよろしく!」
パチパチパチ……と小さな拍手。
続いて、隣に座っていた人物が立ち上がった。
「カーティス=グラッド。ゼミル連邦……いや、今回は審査員枠での参加だ」
渋めの声で、淡々と語る。
その立ち姿にはどこか凄みがあり、会場内も一瞬静かになった。
「元は冒険者。高難度ダンジョンを回ってる様子を配信してたら、いつの間にか視聴者がついててな。今はその延長みたいなもんだ。戦いを見る目だけは持ってるつもりだ。よろしく頼む」
続いて立ち上がったのは、どこか神秘的な雰囲気をまとう女性。
透き通るような銀髪に、礼儀正しくも品のある立ち振る舞い。
「皆さん、こんにちは。セレスティア=ルナイアと申します。審査員としてご招待いただきました」
その一言だけでも、周囲が息を呑んだような空気になる。
声だけで、人を惹きつける――そんな存在感があった。
「普段は歌やイラスト、それから配信での語りを中心に活動しています。今回の大会、とても楽しみにしていました。どうぞ、よろしくお願いします」
拍手が広がる。
続いて、レオンが席に座ったままリオナの方を向く。
「じゃあ次は、ノルディア代表の――リオナちゃん」
「は、はいっ!」
慌てて立ち上がるリオナ。
周囲の視線が一斉にこちらを向く中、息を整えて名乗った。
「リオナ=アメシスです! まだ駆け出しなんですけど……と、とにかく頑張ります! よろしくお願いします!」
ややテンパり気味ではあったが、それでも懸命な言葉が場の空気を和ませた。
「次、同じくノルディア代表――ザンさん」
「っしゃ、オレか!」
立ち上がったのは、サングラスをかけた黒髪の男性。
細身の身体に軽いリズムを刻むような仕草。動きにどこか“音”を感じさせる。
「ザン=サラウィア! オレの配信は戦いと音楽の融合! リズムと魂で殴る! 音で勝つ! そんな感じ!」
どこか暑苦しくも陽気な声に、思わず何人かが笑みを浮かべる。
「次、リオス王国代表――エスティアさん」
「……エスティア=グランツ。よろしく」
それだけを短く言い、静かに座り直す。
堂々とした立ち振る舞いに、貴族としての気品がにじんでいた。
「ファレノ国からの代表、マールさん」
「はぁ~い、マール=シェリです~。歌ったり魔物と仲良くなったりするのが得意かも?」
ふんわりした笑みで手を振る少女。
ほんわかした口調に、場の空気がさらに和らいだ。
「ゼミル連邦代表――ヴァルトくん」
帽子を深く被った青年が、無言で立ち上がる。
その胸元には、魔導字幕がぽんっと浮かび上がった。
《ヴァルト=イクス。よろしく。》
《話せないけど、字幕で伝える。わりと便利。》
最小限の自己紹介ながら、その誠実さは伝わってきた。
全員が席に戻ったところで、レオンがもう一度立ち上がる。
「ありがと! とりあえず今回は、俺も含めた審査員3人と、各国から代表者1名ずつに集まってもらった」
一拍置いて、少しだけ表情を引き締める。
「今日は、この大会で何をやるのか――どんな内容で進めていくのか、その“顔合わせ”と“説明会”的な意味合いで集まってもらってる」
「だから、まだ全部決まりきったことを言うわけじゃないけど、不安なことがあればどんどん聞いてくれ」
静かに、しかし確かな熱を帯びた視線で、レオンが全員を見渡す。
――大会の幕は、確実に上がり始めていた。
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*追記*
キャラの容姿の設定が固まりきってないので後々訂正するかもしれません。