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第59話 プレ会議

ギルドの訓練場を出た頃には、空はすっかり茜色に染まっていた。


リオナは短杖を両手で抱えながら、足取り軽く帰路についていた。


 


(補助魔法、まだまだだけど……でも、通った。ちゃんと)


 


魔法の感触が、手のひらに残っている。


詠唱のタイミング、魔力の流れ、そのイメージ。


少しずつ、自分にも“できること”が増えていく。


 


そんな気持ちでギルドの通りを歩いていると、端末に通知が届いた。


 


『ギルド本部より:大会準備に関する説明会を明日午前に実施。関係者は指定時刻に第一会議室へ。』


 


「おぉ……ついに」


 


通知を見て、リオナは思わず息を飲む。


とうとう、本格的に動き出すらしい。


大会の詳細は未だに明かされていない部分も多いが、それでも“始まる”という実感が湧いてきた。


 


そして――翌朝。


 


指定された時間より少し早く、ギルドの建物へと入ると、すでに数人の姿が会議室の前で待っていた。


 


「……リオナちゃん。こっちこっち」


 


声をかけてきたのは、レオンだった。


その隣にはリュミもいて、落ち着いた表情で頷いてくれる。


 


「ガルドとの訓練はどうだった?」


 


「まぁ、なんとか補助魔法をちょっとだけ……」


 


「十分だよ。最初から全部できる人なんていないからさ」


 


レオンの言葉に、リオナは少し肩の力を抜いた。


その横で、リュミが軽く手を挙げる。


 


「今日は運営スタッフの一人として来てるの。主催側のサポートね」


 


「えっ、出場者じゃ……ないんですよね?」


 


「今回は出ないわ。その代わり、大会期間中はレオンの“秘書役”として動くことになってるの」


 


「ギルドとの橋渡しもお願いしててね。リュミさんはフィーネさんと信頼関係があるから、お願いしやすかったんだ」


 


「人手が足りないみたいでね。まあ、私も動きやすいから」


 


そんな話をしているうちに、会議室のドアが開いた。


中から出てきた職員が、全員に向けて告げる。


 


「それでは、会場の準備が整いました。関係者の方は中へどうぞ」


 


案内されて入った部屋は、見慣れたギルドの事務室とは違い、天井が高く、円卓のような配置の会議スペース。


席にはすでに数人のストリーマーたちが座っていた。


 


その中には――一人だけ、見覚えのある顔があった。


 


(あれ……あの人って、前に声かけてくれた……カーティスさん?)


 


それ以外は、みんな初対面の人たちばかりだ。


 


高貴なドレス姿に気圧されるような美貌の女性、どこか眠たげな雰囲気をまとった少女、そして眼帯をつけた無口そうな青年。


ちらっと視線が合うたび、緊張感が走る。


 


リオナは、レオンに軽くうながされながら席に着いた。


 


「さて。ここから先は、出場者としての“顔合わせ”も兼ねた会議だよ」


 


「……出場者、全員揃うんですか?」


 


「一部はまだ来てないけどね。まぁ、今回の主役たちの顔合わせってやつだ」


 


席に並んだ名札をちらりと見る。


そこには――


『エスティア=グランツ』『マール=シェリ』『ヴァルト=イクス』など、


見覚えのない、でも何かすごそうな名前がずらりと並んでいた。


 


(カーティスさんと……あとは、誰だろう)


 


自分の名前が記された札を見て、リオナは小さく深呼吸した。


そのとき、別の席の誰かがこちらをちらりと見た――けれど言葉を交わすことはまだなかった。


 


静かな会議室。


ここに集められたのは、今この世界でもっとも注目されているストリーマーたち。


異なる国、異なるスタイル、異なる熱量。


でも、それぞれが――確かに、“誰かに届く配信”をしてきた人たち。


 


そしてその中に、リオナも今、確かにいる。


 


(……よし。やってやろうじゃん)


 


まだこの世界で、自分に何ができるかはわからない。


でも、それでもいい。


このチャンスを、きっと配信でつかんでみせる。


 


リオナはまっすぐ前を見据え、両手をテーブルの上に置いた。


今にも始まりそうなその空気の中で、じっと、会議の開幕を待ち構えていた。

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