第6話 配信って、やっぱり面白いかもしれない
「――というわけで、本日のお供はリオナ・アメシスちゃんでした!」
レオンの軽妙なトークが響くなか、私は何度も頷いていた。
気づけば、もう1時間近くしゃべっていたことになる。
緊張していた最初の数分が、もはや懐かしい。
> 《耳ぴく芸また出たw》
> 《今の表情かわいすぎたんだけど!?》
> 《レオンにツッコめる新人は貴重》
> 《思ったよりしっかりしゃべれてるなこの子》
コメント欄もいい感じに盛り上がっていた。
最初はただのノリや冷やかしだったのが、
徐々に“ちゃんと見てる”雰囲気に変わってきてるのが分かる。
(……こんな感じ、久しぶりかも)
前世でも配信はしてた。
でも、ずっと一人だった。
コメントはあっても、壁越しの会話みたいで。
誰かと一緒に笑ったり、流れでボケたりツッコんだりするのは――
ほんとに、久々だった。
「なあリオナ、スライム実況以外の芸ってある?」
「芸って言うな!」
思わず叫んで、そして自分でも笑った。
その流れに、レオンがニヤリと笑って被せてくる。
「じゃあさ、この配信の締めに“スライム遭遇時の再現実況”とかどう?」
「やめろーー!!」
> 《やってほしいww》
> 《期待》
> 《需要しかない》
> 《やるしかない空気》
(うわぁ……ノリが加速してる……)
「……じゃあ、ちょっとだけだよ?」
「まじでやるんかい!」
「この流れで断ったら、逆に空気読めてない人でしょ!!」
そう言って、立ち上がり、深呼吸。
一応、雰囲気だけでも寄せていく。
「えー、こちらリオナです! 本日は現場からお送りします!
魔物スライムに襲われておりまして、現在私、全力で逃走中です!!
誰か助けてーーー!! このままじゃまたコメント欄にネタにされるぅぅぅ!!」
> 《うまいww》
> 《さすが元V》
> 《リアリティすごいな》
> 《コメント欄も逃走中》
配信ブースが拍手と笑いに包まれた。
そして――
「……よし、今日はここまでだな」
レオンが合図を出す。
それに合わせて、魔導石のUIが淡く光り、コメント欄がゆっくりフェードアウトしていった。
「おつかれ」
「……おつかれさま」
配信が終わった瞬間、緊張が一気に抜けた。
足がちょっとガクッとしたけど、なんとか耐えた。
「どうだった?」
「……楽しかった。びっくりするぐらい」
「そっか」
レオンは、それだけ言って笑った。
それ以上、何も言わないのがありがたかった。
私は魔導石を見つめながら、
その中に残った“視聴履歴”の数字をぼんやりと見つめていた。
そこには確かに、**“誰かが見てくれた”証拠**が残っていた。
(配信って……やっぱり、面白いかもしれない)
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