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第58話 コツを掴んだ・・・?

翌日も、ギルド訓練場は変わらず活気に満ちていた。


リオナは短杖を手に、昨日と同じ演習スペースへと向かう。


そこには、すでに待っていたガルドの姿。


 


「今日もよろしくお願いします!」


 


「おう。昨日の感覚は覚えてるか?」


 


「はい、なんとか……!」


 


短杖を握る手に少しだけ力が入る。


まだぎこちないものの、昨日よりも確実に、自分の中に“魔法を扱う感覚”が根付き始めていた。


 


「じゃあ今日は、もう少し動きを入れる。魔法を撃ちながら動けるようになれ」


 


「えっ、それって結構難しくないですか……!?」


 


「だが必要だ。実戦では、立ち止まって構えてる余裕はない」


 


そう言って、ガルドは腰の袋から何かを取り出す。


 


「……これを使う」


 


手にしていたのは、丸めた布の玉だった。


それを手のひらで軽く放り投げながら、彼は淡々と告げる。


 


「俺が投げたこれを、魔法で撃ち落とせ。タイミングを見て詠唱しろ」


 


「む、無茶振り……!」


 


「実況しながらやれ。そっちは得意なんだろう」


 


「そ、それはそうですけどぉ!」


 


不安そうにしつつも、リオナは立ち位置をとり、構えを取った。


ガルドが投げた布玉が、ふわりと空中を舞う。


 


「いける……いける……いけないかも……いや、いきます! 《ライト・フラッシュ》!」


 


――ポスッ。


 


光は放たれたが、布玉はそのままリオナの脇を抜けて落ちた。


 


「くっ……!」


 


「迷いすぎだ。今のは“実況”じゃなくて“雑談”だな」


 


「き、厳しい……!」


 


何度か挑戦し、徐々にタイミングは合ってきたものの、命中率はまだまだ低い。


それでも、魔力の流れや照準の感覚は、回を重ねるごとに明らかに洗練されていった。


 


「ふう……少し、掴めてきた気がします」


 


「なら、次は補助だ」


 


「補助、ですか?」


 


「回復系やバフを試す……と、その前に。まずは自分自身にかけてみろ」


 


「えっ、自分に?」


 


「他人に魔法を通すのは難しい。まずは“自分の体に魔力を流す感覚”を知れ」


 


ガルドは短く詠唱を唱えてみせた。


 


「《フレア・チャージ》。これが基本的な身体強化魔法だ。魔力を流しながら、体を動かしやすくするイメージで」


 


「ふむふむ……」


 


リオナは構えをとり、短杖を握りしめた。


 


「えっと……《フレア・チャージ》!」


 


――ぼっ、と小さな光がリオナの全身を包み込む。


肩や脚が、ほんのり軽くなったような感覚。


 


「おお……!」


 


「ちゃんと通ったな。今のが“自分へのバフ”の感覚だ」


 


リオナは両手を軽く振り、足を踏み込んでみた。


たしかに、身体が軽く感じる。


 


「……これ、なんかすごいかも!」


 


「だが他人にかけるとなると話は別だ。次は俺にやってみろ」


 


「え、急に難易度上がった気が……」


 


「いいから試せ。さっきと同じ魔法で構わん」


 


リオナは緊張しながら、ガルドの前に立つ。


相手の動き、呼吸、体格――それを見て、魔力を通すイメージを固めていく。


 


「《フレア・チャージ》!」


 


杖の先から放たれた光が、ガルドの胸に触れたあと、わずかに反応を見せて消えた。


 


「……おお。通ったは通ったが、効果量はほとんどないな」


 


「そ、そんなぁ……」


 


「ま、これは俺も得意じゃない分野だ。教えるのも限界がある」


 


ガルドは少し肩をすくめながら、言葉を続ける。


 


「素質はありそうだ。誰かに頼んで、練習相手になってもらうといい。何度も繰り返せば、徐々に通るようになるはずだ」


 


「……はい!」


 


リオナは真剣な表情で頷いた。


ガルドは、それを見て小さく笑う。


 


「とりあえず、基礎的なことは一通り教えた。あとは自分で試すだけだ」


 


「ありがとうございました!」


 


「また何かあれば、いつでも頼ってこい」


 


そう言って、ガルドは手をひらりと振って見せた。


 


夕暮れが差し始めた訓練場で、リオナは短杖を大事に抱えながら、深く一礼をした。


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